第4話 白銀の翼
「ねぇ、また白銀の翼が出たらしいわよ」
「一度、生で会ってみたいわ」
「いや、なかなかないでしょ」
駅のホーム、女子高生のたわいもない話や電車の雑音が入り乱れて、煩い中、天月夜空は悠然立っていた。
「おーい、天月」
そう若干大きな声で話しかけてきたのは、昨日知り合った服部だった。
「おはよう、服部」
「おはよう、天月」
「今日は電車なのか?」
「ああ、門の渋滞が嫌でな」
「あれか、確かに長かったな」
「それよりも、昨日、白銀の翼が出たの、知っているか」
「知っているが興味はないな」
まるで知りたくもないことを知ってしまったかの様な口調で天月は言った。
「そんなこと言うなよ。あの戦争を止めた英雄かもしれないんだぞ」
興奮した様子で服部は話し始めた。
「もう、20年前の話だろ。その白銀の翼がニュースになったのはここ2、3年の話だ。時期がずれ過ぎている」
「戦争で怪我をして、最近治ったかもしれないだろ」
「それは、言えなくもないが、それなら普通名乗り出るんじゃないか」
「なんか、事情があるんだよ」
何気ない会話をしている内に電車がやって来た。
「取りあえず、この話は置いといて電車に乗ろう。学校に遅れる」
「そうだな」
2人は取りあえず電車に乗り、学校へ向かった。天月は話を切り上げたつもりだったが電車の中では永遠と服部の熱心な説得が行われていた。
学校の近くに駅に着くと天月はさすがに話を止めさせて、学校の話を始めた。
「それからな、それからな」
「わかったから。それよりも服部、魔法の授業大丈夫なのか」
「まぁ、大丈夫だろう」
「どこからその自信はくるのやら」
「できない奴が5人もいるんだ。最初から教えてくれるだろう」
「できる奴はその何倍もいるんだが」
「大丈夫、大丈夫」
「俺の方が心配になってきたよ」
そんなことを言っている間にも2人の目の先には第一国連科学魔法学校の正門が見えてきた。
正門に着くと生徒達が生徒手帳を取り出していた。数人の先生らしき人がいる所を見ると新入生に学校への入り方を教えているようだ。
「新入生の皆さん~生徒手帳を地肌に触れて正門を通過してください~」
聞こえる声からするに生徒手帳を手に持っていないと正門は通過できないようだ。
「だそうだ。服部」
「大丈夫、今日は忘れてない」
「それならよかった」
2人は先生が言った様に生徒手帳を手に持って、正門を通過した。
そしたら、昨日の様に認証の文字が1人1人の目の前に現れた。
「こんなんででいいのか」
「そうみたいだな」
「もし、コレをしなかったらどうなるんだろうな」
「さぁ、ここはいつ戦争過激派に狙われてもおかしくないからな。最悪、死ぬようなトラップがあるんじゃないか」
服部はビビって足が止まるがそんなこと知った事じゃないように天月は普通と歩いている。
「どうした?」
天月は首を後ろに回して足の止まった、服部に視線を向けた。
「お前よく、平気でいられるな」
「そんなこと気にしてもしょうがないだろ」
「普通、ビビるだろう」
「間違えなければいいだけの話だ」
「生徒手帳忘れただけで死ぬって、笑えねぇよ」
「それは違うだろう。無理に学校に入ろうとしなければ大丈夫だ」
「いや、普通の遅刻したくないから高校なら入ろうとするだろ」
「まぁ、ここは普通じゃないってことだ」
今更、気にしてもしょうがないという風に天月は首を振った。
2人はそんな調子で話しながら校舎に入ろうと歩いていたが、反対側の門付近に人だかりが出来ていた。
「なんか、さわがしいな」
人だかりの中を見ようと服部はつま先立ちをしていた。
「有名人でもいるんじゃないのか」
(俺もまぁまぁ有名人だけどな)
「行ってみようぜ、天月」
「人だかりが苦手なんだ。ここで待っているから、1人で行ってきていいぞ」
「そうか、ちょっくら、行ってくるわ」
服部はそう言うと人込みに入って行った。
「全く、鬱陶しいな」
「仕方ないでしょ。私たちは主席と次席、なんですから」
「そうは言っても、これじゃ前に進めませんよ。クロード姫」
「我慢しなくてはいけないわ、エスカルゴ」
人だかりが出来ている中、2人は普通に会話をしているが内輪だけ聞こえるように魔法をかけていた。
ゆっくり進んでいるが人だかりがなくなる様子はない。
「全く、邪魔だな」
エスカルゴは腕を前に向けた。エスカルゴの指に着けている指輪が僅かに光った。
「止めなさい、エスカルゴ」
アリアの静止の声も聞かず、エスカルゴは前方に向けて魔法を放った。
その時、丁度人込みをかけ分けて来た服部がエスカルゴの放った魔法前方に出てきた。
その魔法がたまたま、風系の魔法だったのがいけなかった。人込みの誰かが蹴った石が魔法で軌道を変えられて、服部の顔をめがけて飛んで行った。
「いけない」
アリアはその軌道に気付いたが、タイミングが遅すぎて声を出すのがやっとだ。
石はそのまま、服部の顔に目掛けて飛んで行って、誰にもそれを止められて内容に見えた。服部自身も急に飛んできた石に顔を直前で気づいて、無理だとぎゅっと目を閉じた。
1、2秒立って石がいつまでたっても当たらないことを不思議に思い、服部は目を開けると、そこには天月が立っていた。
「目的は達したか、服部」
「ああ」
服部の前には人込みに囲まれていた、アリア姫とエスカルゴが見えていた。
「なら、行くぞ」
「そ、そうだな」
服部は石をどうにかしたのが絶対と思っているのだが天月なのだが目を閉じていた為、何が起こったかわからなかった。
そのまま天月に言われるがまま、丁度、魔法で場所が開けている後ろの校舎に足を向けた。
「待って、貴方、一体何をしたの」
「それより、そこの人に無暗に魔法を使わないように言って下さい」
「そうね、ごめんなさい」
当人のエスカルゴはプライドを傷つけられた怒りで顔が真っ赤になっていた。服部と天月の後ろ姿を積年の恨みがあるように睨みつけていた。
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