第3話  歴史

何度も扉に阻まれながら、2人は図書室に着いた。図書室内には資料を調べる端末が小部屋ごとに置いてあって学生証を端末に認証させ、調べ物ができる仕様になっていた。


「さて、そこの端末で少し、調べながら説明しよう」

「おう」


2人は近くの空いている小部屋に入った。


「さて、この資料でいいだろ」


そう言って、天月がキーボードを操作してディスプレイに出したのは2つの世界の歴史だった。


「なんで、これ出したんだ。魔法の事は知らないがこの歴史ぐらい知っているぞ」

「まぁ、少し話をきてくれ、服部。今、説明する。MEDが生まれたのはこの戦争がきっかけなのさ」


次にディスプレイに映し出されたのは戦場の風景だった。天月はアトランジュ側の兵士の映像をアップで写した。


「この戦争で魔法を使っていた世界、アトランジュが武器として使っていたものがMEDになったのさ」

「説明してもらっているとこ、悪いんだけどよ。まず、MEDってなに?」

「そこからだったな」


天月は悩むように手を頭にやって、説明しだした。


「そうだな。MEDとは簡単に言うと持ち運べるアーマーだな」

「持ち運べるアーマー?」

「マナは物体に触れるとその物の面積を変化させる性質があったんだ。さっきの続きになるがアトランジュの世界ではその性質を使って、小型のものを大きくして武器として使っていたのさ」

「それがMEDになったってことか」

「そうゆうことだ。アトランジュの世界では武器に使うだけで特に他に使っていなかった所をこっちの地球側の人が新しい可能性に気付いたのさ」

「へぇ」


服部は天月の説明を聞いて感心した様に頷いた。


「今では、この技術が両方の世界でなくてはならないものになっているさ」

「確かに警察とかが、そんな風なゴツイ服を着ていたとこ見たことあるが、他だと見たことないぜ」

「まだ、一般には出回ってなく、軍事技術の転用への割合が高いんだ。魔法を使える奴があまりいないことも原因の一つだな」

「それじゃ、こっちの地球側から、ここの学校に来ている、奴らって少ないのか?」

「そんなことはないさ。ここの学校は両方の世界の交流場でもあり、同数の生徒数が入学してるはずだ」

「それなら、教室でポカンとしている奴らが5人なのはおかしくないか?」


服部は若干、ニヤッとした笑みを天月に向けてきた。ポカンとしていた人間の人数を服部は言い切った。一瞬だったに関わらずだ。恐らく、推薦でこの学校に入れた理由にも関係しているだろう。


「それは、こっちの地球側にも魔法を初めから知っていた人たちがいたらさ」

「なにそれ?」

「まぁ、日本だと陰陽師とかそこらが起源と言われている」

「その子孫が魔法を知っていたわけか」

「そうゆうことだな。今では日本以外の国でも魔法使いの子孫は見つかっている」

「それが地球側の残りの奴ってことか」

「そうだな」


突然、機械音声の放送がかかった。


「校内に残っている生徒は速やかに下校してください」


2人が時間を確認してみるともう。11時半を過ぎていた。先生に言われた昼までもう30分もなかった。


「やべ、早く帰ろうぜ」

「そうだな」


そう言うと2人は荷物を持って、図書室の小部屋を後にした。


「それじゃ、また明日な、天月」

「また明日」


服部は駅なので門で2人は別れた。


地球側の正門を通ると自動操縦の車両が1台、天月が帰るのが分かっていたかの様に近づいて来た。


その車両は天月の前に止まると自動で扉が勝手に空いた。いつものことなのでためらいもなく天月は車両に乗り込んだ。


「伯父さん家に」

「了解しました」


機械音の音声が流れるとそのまま車両は発信した。


天月が到着したのは、家というよりもどこかのバッティングセンターといった所に着いた。実際に中からもカッキ―ンという音が響いている。


車から降りると特にバッティングマシーンにも、目もくれず、天月はカウンターに行った。


「伯父さん、いつもの所、使わせてもらいます」

「おう、ほらよ」


カウンターに座っていた。天月の伯父こと、天月蓮司は夜空に見向きもしないで壁にかけてあった鍵を放り投げた。空中に舞った鍵をサラリと取ると天月はカウンター裏の階段を下って行った。


6時間後


地下の階段を上がってきた天月は蓮司の言葉に足を止めた。


「学校はどうだった?」

「俺の名前を知らない面白い奴がいました」

「そいつは間違いなく、馬鹿な奴だな~」

「そうですね。多分、一回でも教科書などを見れば俺の名前にピンとくるはずですから」

「でも、いいじゃねぇか。偏見がねぇ友達を見つけられて」

「自分としては学校なんてどうでもいいんですが・・」

「まぁ、そう言うな。夜空、青春は楽しむもんだぞ」


天月の肩を叩きながら、蓮司は、がはっはと笑った。


「はぁ、頑張ってみます。それでは帰りますね。伯父さん」

「ああ、気を付けて帰れよ」

「俺には必要ない言葉ですよ」

「それはそうだが一応な。人生何があるか、わからんからな」

「はい。それでは失礼します」


天月は来たときと同じように自動操縦の車両に乗って自分の家に帰って行った。


「ただいま」


自分の家に着き、中に入るが特に返事はない。いつもの光景なので気にした様子もなく天月はスタスタと歩いていく。


天月は特に風呂や食事をすることなく、服装を学生服から黒ずくめの服に着替えた。


腰に白い細長い棒が付いたベルトを着け、天月は家を出た。


朝まで天月夜空が自宅に帰って来ることなかった。

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