第2話  校舎探索

「悪かったな、お前ら」


教室に帰ってくるなり、4組の生徒全員からの視線を受けた才波先生は謝った。


「いやー、体育館全体の魔法を消すのを1人でやる羽目になるとは思わなくてな。あの校長も人使いが荒い」


4組の生徒たちは納得言った顔や何のことを言っているのかわかない顔にそれぞれ分かれた。


「今からこの学生証を渡す。これがないとこの学校に入ることができないから無くすことがないように、頼むな。もし、無くした場合でも再発行できるが1日入れないと思え」


本郷先生は手帳サイズの携帯端末を生徒一人ずつに配った。


「その端末に自分の魔力を流せ」


皆、才波先生の指示通り、魔力を流した。いや、何人かは何を言っているのかわからないと言う顔をしていた。


「今、よくわからない奴は後でやり方を教えるので取り敢えず、そこで止まってくれ」


才波先生の言われた通りにした生徒の携帯端末に認証の文字が表示された。


「認証の文字が出たものは、それで終わりだ。その携帯端末がこの世界の狭間に入る為の通行証になる。さっき言ったそれを無くすと一日入れないのはそれの再発行には時間が掛かるからだ。だからくれぐれも無くすなよ。また、その端末にはその他にも機能があるがそれは後日、教えるから勝手にいじって壊すなよ。今日はこれで終わりだ。昼間でなら学校に入れるがそれ以降は門が閉じるから速やかに帰るように。以上だ」


それだけ言うと才波先生は教室を出て行こうとしたが急に立ち止まった。


「さっきの端末操作が、わからない奴は端末を持っていろ。そしたら、認証の文字が出る。そんで終わりだ」


さっきは、後でやり方を教えると言ったが結構、適当な感じに答えられてわからない生徒は全員、えーといった顔をした。


結局、才波先生はそのまま教室を出ていってしまい、何もわからない生徒たちが出来てしまった。


「よ、すごい長髪だな」


話し掛けてきたのは、先ほど門の横で面倒臭そうな書類を書いていた男子だった。


「今時、珍しくもないだろ」


髪の毛は体の一部として気軽にマナを溜められる媒体して男子でも伸ばす人も最近では珍しくない。


「そうなのか?それよりも急で悪いんだけどさ、さっきの先生が言っていたことを教えてくれないか」

「その端末のことか?」

「そうだ、先生のあれはどういうことなのか、教えてくれよ」


天月は若干、大きな声を出して他の理解していない人にも聞こえる様に説明しだした。


「おそらく、この端末には魔力いわゆるマナを自動的に吸収する機能があるんだろ。だから、まだ先生は持ってろって言ったんだ。それで他の人と同じように認証されるんだろ」


丁度、マナが溜まったのか、一斉に魔力を流してなかった人たちの端末から認証の文字が表示され始めた。


「ほんとだぜ、俺は服部宗司よろしく」

「こちらこそ、天月夜空だ。さっき門で面倒な事をしていた奴か?」

「やっぱり、見られていたか」

「しかたないんじゃないか、忘れたんだろ」

「いや、あんなに面倒とは思わなかったぜ」

「いい教訓だな」

「今度からは忘れないよう気を付けるわ」

「そうしろ」

「今日、暇なら学校内を見て回ろうぜ」

「特に用事もないし、大丈夫だ」

「おっし、ならさっそく、移動しようぜ、時間もないし」

「そうだな」


2人は話が決まると席を立ち、教室を出た。廊下には、帰宅する生徒たちで溢れかえっていた。天月たちは取りあえず、その人込みを抜けながら、人が少ない場所を目指した。


「さて、どう回る?」

「とりあえず、校舎の中でも見て回ろうぜ」

「そうだな」


2人は取り敢えず、校舎を回ることにした。


校舎は両世界の最新技術が盛り込まれて建てられていた。その一つが天月と服部の校内探索を遅らせていた。


「魔力で認証して開く扉とか、いちいち面倒くさいな」

「セキュリティー上仕方ないだろ。だから、先生は先に学生証の端末に生徒の魔力を認証させたんだろう」


歩きながら、何回も扉に邪魔されては魔力流す魔力流す行為を繰り返し行った所為か、服部は面倒くさそうにしていた。


「それにしても、学生証の端末程、反応が遅くなくてよかったわ」

「それは意味合いが違うと思うぞ」

「うん、何がだ?」

「さっきの学生証の端末は、おそらく、魔力のデータを取ってそれを学校のデータバンク的な場所に送信していたから認証が遅くなったんだろう」

「それだと、俺だけ遅くなった理由にならなくね?」

「服部は単に魔力が足りなくてデータが足りなかっただけだろ」

「そゆことね」


服部は興味が出たのか学生証を出して、注目して観察し始めた。


「それにしても、これ端末としては大きくね」


服部が言うのは、天月や普通の生徒が腕に着けている小型端末のことだ。最新技術により電子機器的なあらゆるものが小型化され、大体の物が手のひらサイズに収まっているからだ。この学生証は一般の端末より大きく、手を広げてやっと普通に持てるぐらいの大きさになっている。


「そうだな。先生の言葉、覚えているか」

「何のことだ」

「覚えとけよ。他に機能があるって言っていたろ」

「他の機能って?」

「なんで、わざわざ魔力で動く端末にしていると思う?今時、普通の端末は1日中、使っても一週間は充電が持つ、寧ろそっちにした方が早いと思わないか」

「そう言われればそうだな」

「まぁ、この学校に入るときの魔力認証に学生証を使うと思うがそれは置いといて、多分、MEDだ」

「ん、MEDってなんだ?」


天月は信じられないと言った顔で服部を見た。


「お前、よくこの学校に入れたな」

「まぁ、魔法のことよく知らないからな」

「それって、あれか、政府からよくわからない、封筒が来ていたって奴か」

「そうそう、それだよ」


戦争が終わったが、こちら側、つまり地球には魔法がなかったので今、政府は躍起になって適正者を探している。なので、魔法適正が高いものは政府からこの学校に来ないか、書類が送られてくるのだ。それでも不安がって来るものは少ないのだが。


「はぁ、事情は分かった。説明するとMEDは、Material Expansion Ðeviceの略だ」

「ん、物質拡大装置?」

「まぁ、直訳するとそうだな」

「何、それ?」

「うーん、まだ時間があるから説明するなら、さっき、見て回った図書室がいいだろう。そこでしよう」

「分かった。それじゃ行くか」


2人は話が決まると道を思い出しながら、図書室に向かった。またも服部が扉に行く手を邪魔されたのは言うまでもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る