第4話 ママのお迎え

年長組になった。


五月におばあちゃんが目の病気になった。

ぼく、よくわからなかったけど、一週間くらい病院に泊まるってママが言ってた。

でも、元気になって帰って来るから心配いらない、って言ってたから少し安心した。


おばあちゃんが病院に行ってる間、ママがお迎えに来てくれた。

ママはお仕事が忙しいからお迎えの時間がすごく遅かった。


いつもぼくとビクトルだけが、最後までお迎えを待った。

でもぼくは、ビクトルと長く遊べたから嬉しかった。


ビクトルはママがいない。

ぼくと逆。

だからビクトルのお迎えはパパだった。

ビクトルはパパがお迎えに来ると、急におとなしくなる。

それで何も言わずに大急ぎでパパの車に乗る。

グズグズしてるとパパがすごく怒る。

すごく怖そうなパパだった。


ビクトルはお迎えを待ってる時、先生にいたずらばかりしていつも怒られてた。

みんながいなくなると急に甘えん坊みたくなる。


園長先生のオッパイに触ったり、ユイカ先生に抱きついたり……


先生たちは嫌ーな顔してるけど、大丈夫かな ? … って心配してたら…

園長先生がビクトルのほっぺをパシッって叩いた。


・・・えっどうして ?


その日はビクトルのパパより、ぼくのママの方がお迎えが早かった。


帰る時、先生たちがぼくに向かってバイバイってしたけど、ぼくはそのまま何も言わずに帰ることにした。


そしたら園長先生につかまえられた。

そして“ トシくんまたあしたね ” て言って、ぎゅっとされた。


息が苦しくて嫌だった。

それをビクトルがじっと見てた。

ビクトルがぼくを見てた。


・・・


ビクトル、泣きそうな顔だった。


なんだか……すごく悲しかった。


その日からビクトルは、ぼくと遊ばなくなった。


先生たちはみんな、すごく優しいけど…


ぼく…


一人ぼっちになった。



ぼく…


ぎゅっとか…


ニコっとか…


おはようとか…


バイバイとか…



もう絶対にしないように気をつけた。


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