第4話:新生活スタート

明莉の春休みも終わり、今日から学校が始まる。しかし、彼女は相変わらず学校に行きたがらない。彼女をなんとか説得して、入学式用のワンピースを着せて玄関の前で写真を撮った。両親はこれが最後の小学校の入学写真になるとは思わなかった。そして、小学校まで歩いて行き、学校の校門の前にある立て看板とアーチの前で再び写真を撮った。


 そして、受付を済ませて教室に入ると彼女は緊張しているからなのか分からないが両親の元を離れようとしなかった。


 彼女は昔から初めて行く場所ではなかなか両親の元から離れることが出来なかった。理由は分からないが、おそらく知らない人が多くて戸惑っているのだろうと両親は毎回自身に言い聞かせている。


 そして、担任の先生が入ってくると明莉はニコニコして自分の席に座った。実はこの時担任になった先生は若くてイケメンだった。この頃、彼女は男性アイドルの事が好きでいつも楽しそうに話していた。そして、彼女の部屋にも好きなメンバーのポスターが貼られていて、毎日のように会話していたこともあった。それくらいイケメンには目がないのだ。昨日も「明莉の先生イケメンだったら良いな!」と胸を高鳴らせていた。


 先生との対面も終わり、いよいよ入学式の会場である体育館の前に整列した。彼女は幼稚園の入園式など小規模な式典は参加したことあるが、ここまで大きい式典には初めて参加することになる。そのため、始まる前からかなり緊張していたようだった。そして、中から「新入生入場」とアナウンスされて扉が開くと見たことのない世界が広がっていた。


 彼女は出席番号が女子の6番目なので、前には5人の女の子がいるのだが、女子はかなり身長が大きい子もいるため、彼女と並ぶとでこぼこしてしまう。しかも、前に並んでいる子は彼女よりも大きいため前が見えないのだ。


 彼女は式が進んでいく度に緊張こそ取れてきたが、新入生が一斉に立って在校生に声かけをするのが伝統なのだが、彼女はうつむいてしまって言葉が出なくなり、少し目立ってしまったのだ。


 そして、式が終わって教室に戻ると今度はクラスメイトに向かって自己紹介することになり、彼女は何を話して良いのか分からず困惑していた。


 そして、彼女の順番が来ると教壇まで歩いていったが前を向けず、声も出にくくなっていた。すると、近くの男子から「早く話せよ!」と言われてしまった。実は彼女は知らない人の前では寡黙症のような症状が出てしまい、うまく話せないのだ。そして、沈黙が数秒続いてから自己紹介を始めた。色々話していたが、勧めていくうちにだんだんと不安になってきたのだ。


 そして、全員の自己紹介が終わり、交流プログラムが始まったが、彼女は1人人取り残されてしまった。


実は彼女のクラスには同じ保育園・幼稚園の卒園生がいない。そのため、誰にも声を掛ける事が出来ず立ちすくんでしまうのだ。その後、先生の号令と共に同じ保育園・幼稚園の子たちで固まってしまうのだ。先生も「明莉ちゃん誰か入れてあげて」と声は掛けてくれたが、「明莉ちゃんとやってもつまらないからいやだ。」と拒否されてしまう。別のグループも「楽しくないから嫌だ。」と拒否されてしまった。


 明莉は仕方なく先生が相手をしてくれて何とか乗り切ったものの、これからどうなってしまうのか不安で仕方なかった。

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