最終章 『月下の死闘』
第1話 暗殺者ふたたび
上空からの爆撃が作戦本部を襲う中、東将姫アナリンの部下である不死暗殺者ザッカリーが再び僕の前に姿を現した。
この爆撃によって巻き起こった
作戦本部内の兵士たちにはあらかじめザッカリーの煙化スキルのことは伝えてあるから発見次第、
うまいことやられた。
僕らはザッカリーの顔をまともに見ないように、目線を下に
そんな僕らの耳にザッカリーの不気味な声が響いた。
「また会ったな。神。そして兵士の女」
「こちらとしては二度と会いたくはなかったんだがな。不死暗殺者殿」
そう言って即座に顔を
だけどブレイディーは外に出ようとして足を止めた。
「こ、これは……」
「くっ……」
神様とブレイディーはそう言ったきり動けなくなってしまった。
見ると天幕の外側にいつの間にか一枚の
そこに映るザッカリーの姿がチラリと見えて、僕は
ザッカリーの目に宿る光を見た者は一切の身動きを封じられてしまう。
ザッカリーのスキルだ。
ザッカリーの目の光をこちらの目で受けてしまった時点で効果が出てしまう。
とにかく目線をずらさなきゃ!
僕はザッカリーの足元に目線を
するとザッカリーの足元に何枚もの
ゲッ!
やばい!
僕は
でもこれは危険だ。
身動きを封じられるのも困るけど、こうして目を閉じたままじゃ戦えない。
この状態でザッカリーのスキル・
僕は
金と銀の
ザッカリーの猛毒攻撃から僕を守ってくれ。
金と銀の
ザッカリーの暗殺スキルである
ザッカリーも前回
だけど、この場にいる3人の中でザッカリーが生かしたまま捕らえようとしているのは神様だけだ。
僕とブレイディーは殺しても構わない。
目を閉じた状態で、いつ体のどこかにチクリとした痛みを受けるのか分からないという恐怖心が、僕の
そうした状況にたまらず、僕は弾かれたように声を張り上げた。
「誰かー! 誰か来てくれー! 作戦本部に侵入者だー!」
これで
そう思った僕の耳にザッカリーの冷ややかな声が響く。
「ムダだ。誰もここには来ない。俺が事前に処理しておいたからな」
「しょ、処理? いったい何をしたんだ!」
思わずカッとなる僕を面白がるようにザッカリーは不愉快な笑い声を
「カカカ。何をしただと?
「そ、そんな……」
「もうこの作戦本部で生きているのは貴様ら3人だけだ。助けは来ない」
作戦本部には護衛役の兵士や、負傷兵が少なくとも50人はいたはずだ。
それが全員殺されてしまったなんて。
確かにザッカリーの手腕と爆撃により混乱した状況を利用する
僕は目を閉じたまま
さっきから姿が見えないアビーのことも気になる。
まさかアビーまで……くっ!
僕は
あいつを……倒してくれ!
僕の念に応じて
すぐに鋭い金属音が立て続けに響き渡った。
ザッカリーが刃物で
「そんな目を閉じている状態で戦えるほどの腕はないようだな。アルフレッドの武器をレプリカしても貴様には使いこなす力量がない。護衛としてはあまりにも貧弱だ」
つまらなさそうにそう言うザッカリーの声が徐々に近付いてくる。
くっ!
動けないブレイディーや目を閉じている神様を背中に守っている以上、僕はここから一歩も引くわけにはいかない。
僕は目を閉じたまま金の
そして押しのけられる
「はあっ!」
相手に体ごとぶつかっていくような勢いで振り下ろした剣は、むなしく空を切る。
そして次の瞬間、逆にザッカリーから体当たり浴びせられて後方にのけ
それからすぐに冷たい感触の手が僕の首を
「くはっ!」
し、しまった。
ザッカリーに一気に距離を詰められてしまったんだ。
血の通わない
「貴様を殺すのは一瞬で出来る。だが……」
そう言うとザッカリーは指で僕の目を無理やりこじ開けた。
「う、うぐぐ……」
必然的に僕の目にザッカリーの目の光が飛び込んでくる。
くっ!
や、やられた。
動けなくなった僕はザッカリーの姿をあらためてマジマジと見せられることになった。
ザッカリーは最初に会った時と違い、頭に
二度目だから対策をしてきたってことなんだ。
「こんなものをゴテゴテと身に着けるのは主義ではない。全ては貴様らへの
そう言うとザッカリーは僕の首を
い、痛い。
「こざかしい貴様らのことだ。
そう言うと
ひっ……。
恐怖に飲み込まれそうな僕は背後で動けなくなっている神様とブレイディーのことを思い、必死に自分の心を
神様たちを守ってほしいとジェネットに頼まれたんだ。
僕がここであきらめてしまうわけにはいかない。
僕だってこうなることを想定していなかったわけじゃない。
前回の対決から対策は練ってきた。
僕は痛みと恐怖を
すると床に転がっていた
神聖属性の粒子は
万が一僕が動けなくなっても
その粒子に体を包み込まれたザッカリーは……えっ?
「
ザッカリーがそう言うと、身に付けている
頭にかぶっている
くっ!
完全防備だ。
完璧な密封状態で、これだと粒子の入り込む
この装備だと普通の人間なら酸素が吸えなくなって
対策をしてきたのは僕だけじゃなかったんだ。
「ムダな悪あがきの
そう言うとザッカリーは拳で僕の顔面を打った。
くはっ!
そんなことさせないぞ!
傷つけられた
だけどその
そしてザッカリーは
だけどその時、天幕の外から聞き覚えのある声がしたんだ。
「ちょっと待つのです~!」
そう言って天幕に飛び込んできたのは、この場にいなかったアビーだった。
よ、良かった。
彼女は無事だったんだ。
でも戦えないアビーがこのタイミングで飛び込んでくるなんて……。
それは茶色い毛を持つネズミのような小動物だった。
「邪魔だ」
ザッカリーは自分の顔に向かってくるその小動物を手で払い除けようとしたけれど、小動物は空中で大きく姿を変えていきなり人間に変わったんだ。
「なにっ?」
「ていっ!」
小動物から変身したその人物に顔を蹴りつけられ、ザッカリーは天幕の外まで勢いよく吹っ飛ばされた。
視界からザッカリーの姿が消えたために僕の体はようやく自由を取り戻す。
「プハッ!」
そんな僕の前に立ったのは、今しがたザッカリーを蹴っ飛ばした1人の少女だった。
僕はその少女を見つめ、胸に
「ア……アリアナ!」
そう。
そこに立っていたのは、北の森でミランダと同じく
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