第73話おっさんの処世術と奴隷契約


 押しの強い商人に、なし崩し的に選ばされ契約を結ぶ。

 契約自体はあっさりとしたものだった。

 背中の魔法陣に血を一滴垂らすだけ。絶対服従と秘密厳守、この国での解放不可はデフォルトだそうで、そのままの契約となった。


 奴隷の子と同時に商品から服と20万トールを貰い。ノッツ商会の木札を貰う。


 彼は結構手広くやっているらしく。彼の店の系列店でこれを見せれば安く買えるそうだ。日用品も扱ってるらしい。

 これだけでもよかったんですが……。


 これだけもらっても、積荷を失っていた事を考えれば安いそうです。契約前の彼らには戦闘禁止の命令がされているらしく、戦力にならないらしい。


 なるほどそれで彼らを戦力に出来なかったんですね。


「ではこれで契約は終了です。彼女の名はルファ。天狐族のルファです。」


 契約が終わったルファと呼ばれた少女の背中をノッツが押し、私の前に立たせる。


 薄汚れたフードを被り、下を向く彼女の顔はあまり見えませんが、先ほど見た限り可愛らしい顔の少女だ。


「よろしくお願いしますね。ルファさん」


「よっよろしくおねがいします。ご主人様。」


「さささ。挨拶も済んだところで、タクト殿。これからのご予定は?もしよければこの後も一緒にアルグレントの街に行きませんか?タクト殿とゼクトさん達がいれば鬼人に金棒です。」


 なるほど。この20万トールは、この後の護衛料も込みでしたか。やはりノッツさんは商人ですね。


 いいでしょう。もう用事は済んでますからね。

 リィスやペルの遊ぶ時間は減ってしまいましたが、ルファもいますし、今日はもう帰りましょうか。


「はい。ではご一緒させて頂きます。」


「おおー。よかった。それでは行きましょう!」


 道中たいして危険な魔物が出るわけでもなく、街に着くと、いつもの冒険者のラインではなく、より早い一部の大商人が使うラインで街へと入る。

 やはりノッツさんはかなり大物のようだ。


「それでは、有難う御座いました。これからも是非ご贔屓に」


「じゃあなタクト!またどっかでな!」


 ノッツさんとゼクトさん一同と別れると。


「じゃあ行こうか。」


 あまり言葉を発しない、影のある表情のままのルファを連れ、宿へと帰る。


 そこで案の定、ルファの事でニイナさんとネルに質問責めにあい、深いため息とともに憐れみの目で見られたのは必然だったんでしょう……。


 宿はそのままでよかったのは幸いでした。


「タクトも男の子だねぇ」


 そんな呆れ果てた視線をニイナさんから受けながら、ジョイニ草を取りに行った事、ノッツさんという商人を助けたところを含めルファと契約した経緯を一から説明した。


 その間ずっとネルさんがブーブーすけべー へんたーいと言っていたが、それは気にしない。


 そしてここぞとばかりに、作った。最高品質のジョイントポーションをニイナさんに渡す。


 何かこちらからお願いするときは手土産を。

 よく営業さんたちが経費精算してましたね。


 ピンクのポーションは出しません。間違いなく困った事になりますからね。



 お陰で問題なくルファを泊められます。まぁ渡さなくても結果は同じだったと思いますが……。気持ちの問題です。はい。


 汚れた状態のルファを外に連れ出すわけにもいかず、部屋で待ってて貰うよう指示して買い出しに向かう。


 ギルドでゴブリンの討伐報告と頼まれていた薬草を納品し、ノッツさんの店へと向かった。


 奴隷も扱っているノッツさんの店は、普通の雑貨屋よりも奴隷用の品が多く、ここならルファの日用品が揃う。事前にノッツさんに地図を貰ってますからね。


 ノッツさんの店は、大通りに面した最も人通りの多いエリアにあった。

 3階建の店には食料品から日用雑貨まで取り揃えたスーパーマーケットの様な品揃えで、多くの客で賑わっていた。


 ルファが獣人である事、尻尾の長い種族である事を伝えると、すぐに店員が一式を揃え持ってきてくれた。どうやらノッツさんが事前に買いに来るかもと伝えてくれていたようですね。


 お陰でスムーズにルファの買い物を済ませることが出来た。


 店員は分かっていたようですが、一応木札を見せると5割引きでOKとの事で、15,000トールを支払う。


 そしてお礼を言って宿へと戻ると、部屋には出て行ったままの状態で立っているルファがいた。


 あぁ奴隷ってこういう事なんですか。配慮がたりませんでした。


「ごめんね。ルファ。今後は私のいないところでは、トイレも姿勢も自由でいいですよ。」


 そんな事もって思ってはいけないんでしょうね。彼女たち奴隷は、商人によって徹底的に奴隷としての教育をされますからね。


 まったく厄介です。普通に接っするにはどうしたらいいんでしょうか……。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る