第71話おっさんの冒険者ランクとCランクパーティー


「「「いやいやいやいや。」」」


 とっさにでた一言に全員が合わせて首を振る。

 おや?そんなに間違った事を言ったつもりは無いんですが…


「ん?」


 軽く首を傾げるとローブ姿の少女が目を釣り上げる。


「ないから!トロールよ!あいつら結構耐久力あるのよ!」


 魔法少女がきついですね。


「おい!リーン。助けてもらったのに失礼だろ!すまんな。助けてもらったのに。俺はこのパーティのリーダーのゼクトだ。本当に助かった。」


「ああホントに。さすがにもう一回アレを食らうのは勘弁ですからね。私はシュルド。見ての通り盾役です。」


「ねぇねぇそれ魔具でしょ?ダンジョン産?衝撃波?凄いよねー。頭グシャってなってたね!あっ私はシーフのククリ。よろしくね!」


「助かりました。神は私達を見捨てなかったようです。本当に有難う御座います。神官のフィリーです。」


「ふん。リーンよ。魔具ならおかしくないわ。そうならそうと言いなさいよ!」


「おいっ失礼だぞ。冒険者が自分の力を言わないのはわかっているだろ!」


 立ち上がり順々にお礼と挨拶をする5人。男性3人女性2人のパーティだ。

 パチリとウィンクをするククリさんは、女の子っぽいがれっきとした男らしいです。所謂男の娘ってやつですね。


 それにしても剛棒を魔具と言っていましたね。

 んー衝撃波は出ないですがLvは変化するので、魔法具…魔具なんでしょうか…。まぁ破壊力はトップクラスの武器ですからね。

 これを振れる…という意味ではそれなりの力が必要ですから、それは自分自身の力何ですけど…言っても納得しないでしょうね。


「いえ。たまたまそこの湖にいたものですから。私はタクト。冒険者ですよ。かなりランクは下ですけどね。」


 そう言って首元に隠れていたタグを出す。胸元に下された茶色タグが鈍く光る。


「はぁーーーFランクーー」失礼な魔道士リーンが声をあげる。この女子高生みたいな反応は中年のおじさんにはなかなか厳しいのですが。


 見れば皆鮮やかに光るスカーレットレッドと呼ばれる色のタグを付けている。

 どうやらCランクパーティのようです。


「はい。先日登録したばかりです。」


「ほー。それならお主ほど強くてもFランクなのは納得だな。最初は低いものだ。だからそんなに騒ぐなリーンよ」


 シュルドさんに諌められたリーンが、いじけたように横を向く


「ふん。どうせその魔具のおかげでしょ。」


 この子にはデレはないのでしょうね。まぁ先程の風魔法を見ても優秀なのはわかります。


 横を見れば5人が倒したトロールが横たわっている。そしてそのお腹は風の刃で大きく裂かれていた。


 それに馬鹿にしているのかもしれませんが、そうですよ剛棒のおかげです。なんて正直に言ったら。火に油注ぐんでしょうね。分かりますよ。クレーム対応もしてましたからね。こういう時は無言で受け止めるのが一番です。相手は言いたいだけですから。


「あの〜」


 5人との挨拶が終わったのを見越してか、馬車の裏から隠れていた商人が顔を出した。

 小柄なその男は、しきりに頭を下げる。Fランクの冒険者にも礼を尽くせる良い商人のようだ。


「助けて頂き有難うございます。アルグレント王国にて幅広く商売をさせて頂いております。ノッツと申します。いやいや急な大物取引でいつもの護衛もほとんどつけず私自ら交渉にいったのはいいいですが、まさか森の中層にいるトロールに襲われるとは。流石の彼らでもトロール2体から馬車を無傷で守るのは厳しかったはずです。あなたは私の恩人です。そう。恩人です。そうだ!Fランクのあなたが。強いといってもソロで行動しているところを見るに、まだパーティはお組みではないのでしょう。」


 ね?

 っと一気に話し尽くした商人。ノッツが急に喋りを止めた。


「あっはい。パーティは組んでません。ソロで活動してます。」


「そうですか!そうですか!」


 やはりこちらかの返事を待っていたみたいですね。営業ってこんなに押すもんなんでしょうか……。

 久野木課長は、営業中は非常に寡黙な人でしたが……。


「では。是非お話しを!いやその前にお礼ですね?これは失礼を。どうか商品から1つ好きなものをお選び下さい!」


 言葉を止めると同時に、バンッと馬車のボタンを押すと馬車のサイドが開き、その内部が姿を見せた。

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