第68話おっさんの油断と成長する仲間達
目の前に向こう岸が見えない程大きな湖が広がる。
それは波がなく空の雲をはっきりと反射させる美しい湖だった。
そしてよく見ると、何か湖の辺りに浮いている物がちらほらと見えた。
おっあれはブルースライムですか。
それは水属性を持つスライム。ブルースライムが湖の淵の湖面に浮き、漂っている姿だった。
「これはリィスにもよい場所ですね。アシッドスライム以外にもそろそろ吸収するバリエーションが必要ですからね。」
よくよく思い出しみてもリィスの同族吸収のスキルはアシッドスライムにしか活用されていない。
という事は、今のリィスはただのアシッドスライムの上位互換のような存在って事ですね。
「キッキ」
ペルが羽根を広げてリィス達と一緒に来たいという意思を込めて鳴き声をあげる。
「そうですね。今度一緒に来ましょうか」
「!ッキキ!」
湖面を眺め、その美しさに見惚れているとペルが反応し、反応の遅れた私の胸を押すように飛び込んでくる。
「ぐぁっ!」
しかしそれでも間に合わず、強い衝撃と共に肩に激痛が走った。
すぐに肩をに視線を送ると一目でその正体が判明した。
嘴が異様に長い鳥。ストローバードだ。
完全に油断してましたね。
「上空から急降下してきましたか。それならばペルが気付かないのも無理ないですね。」
死角からの羽根を閉じた状態の落下を利用した強襲。ペルが気付かないのも無理は無いでしょう。
ただそれでも湖に感動し油断してました。
落ち込むペルを慰め、すぐにポーションバッグからポーションを取り出し、肩へとかける。
「キキィ」
それでも落ち込んだ声のペルが、心配そうに服の穴の空いた部分を見つめる。
「大丈夫ですよ。落ち込まないでください。ペルが狙われなくてよかった。といってもペルだけなら避けれたでしょうけどね。」
ペルはギリギリでも私より早く強襲に気付いていましたからね。お世辞でもなくペルだけならかわしていたでしょう。
上空を旋回しチャンスを伺うストローバードを見上げる。
あの魔物は、上空の高い部分で旋回し長細い嘴を刺すように攻撃してくる。そして同時に魔力も吸っていくのだ。
あまり上空を警戒しない低ランクの冒険者にとって、非常に厄介な魔物です。その低ランク冒険者とは私もなんですけどね。もう少し気配察知を鍛えた方が良さそうです。
グルグルと旋回を続けるストローバード
あのスピードでは範囲攻撃がいいんでしょうけど、警戒して降りてこないでしょうね。
さらに厄介なのは、魔法を使おうと魔力を操作すれば敏感に察知し落下途中でも逃げ距離を取り、近寄ってこないのだ。
もちろん飛べると言ってもペルだけで勝てる相手ではない。
それならば
魔力を込め地面に手をかざす。
そして唱える。
『召喚』
リィス
魔法陣とともに下水でレベルを上げていたリィスが召喚される。
(マスター来たよー)
そして召喚をアピールしようと目線を上げた瞬間。
その視線は肩へと移る。
(マスターその肩!)
「あぁちょっと油断しました」
(むー!許さないよ!)
怒りに震え、やる気を漲らせるリィスの頭を撫でステータスを確認する。
種族:オリジナルスライム Lv21
名前:リィス
スキル
同族吸収
物理衝撃耐性
再生(極小)
念話
溶解液
保護色
★粘液操作
しっかりレベルも上がり、新しいスキルも得てますね。さすがはリィスです。
「うん。リィス手伝ってね。」
そう伝えたリィスがピョンピョン飛び跳ね怒りを露わにする。
スライムであるリィスを召喚したところで、それを隙と見たのか、獲物が増えたと思ったのか、いつのまにか増えたストローバードが一斉に急降下をはじめた。
Lv21ですか。強くなりましたね。新しいスキルは粘液操作。さっそく使ってみましょう。
ではいきますよ。
そんなリィスを一撫でしスキルを発動した。
『融合』
からの
スパイダーネット !
魔法と違いスキルは魔力の動きがない。
つまりは発動しても警戒されない。
粘液を蜘蛛の巣のように網目状にイメージし、放射状に上空のストローバードに向かい放出する。
「「「「「ゲー ゲー ゲー」」」」」
そして投網のようなスパイダーネットは、見事に5羽のストローバードを一網打尽にしていた。
「よし。ペル!トドメを!」
暴れた事で、さらに粘液が羽に絡み動けなくなった5羽をペルがトドメをさしていく。
「キ!」
そしてペルが喜色の声をあげた。
おっとペルがLv10になったみたいですね。今回の経験値は美味しかったみたいです。
種族:大蝙蝠 Lv10
名前:ペル
スキル
夜目
索敵
★毒牙
「おお。はじめての攻撃系スキルですね。ペルやりましたね。」
(やったねー)
「キー!」
ウリウリと頭を撫でるとやはり気持ちがよさそうに、目を細め。ペルは指に体を押し付けてきた。
うちの子はやっぱり可愛いですね。
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