第67話おっさんの正体と大森林デート?
SIDEネル
彼が来てからもうすぐ20日経つ。
最初に彼の修練を見たときに、私の心は奪われた。そう。ズキュンと撃ち抜かれたの。
細身でひ弱そうに見えるあの体。ちょーっとだけ気になって偶然水浴びを覗く感じになったあの瞬間の衝撃。ギュウギュウに詰まった張り裂けんばかりの筋肉の躍動。
彼は何?彼は誰?珍しい黒髪あの優しげな吸い込まれるような真っ黒な瞳。
そう言って危険でミステリアスな恋がしたい。
でもミステリアスにはならない。
何故って?私は知っている。彼が異世界人である事もこの国の屑共せいで酷い扱いを受けていた事も。だって私が自分で調べたんですもの。
私は潜む者。気配なく闇に紛れ影に潜む。だからこそあの真っ黒な瞳に吸い込まれていく。
だから私は思ったの
あの筋肉……ジュル。
いえ、彼を(見)守ろうと。
でもそれでも私が別件で働いている間に、彼は瀕死の状態で運ばれてきた。
なにやらかなり無茶なことをしたみたい。
だからその原因を作った女には、しっかりと私たち親子が制裁を与えた。
それはもうしっかりと……。
そんな彼の修練にちょっっとだけ手助け。
…というよりちょっかい?
初めて彼に出会った時に、もちょっと長くはだ……訓練を見てたくて、私の影魔法で影を縛って彼への荷重を1.1倍に……。
それくらいなら気づかないでしょ?
って思ったらもう1.8倍。大丈夫かしら彼。あれ?やりすぎちゃった?でも気付いてないし大丈夫ね。
才能の問題って片付けてるし。うんうん大丈夫。大丈夫。私良い仕事してるよね。
演武を始めると発動して、あの重い棒をしまうと同時に解除するようになってるから、わからないわよね。
あっ今日も水浴びしないの?いいよ。ちゃんと水浴びして。
でもタオルで拭く姿も……ぐぅふふ。
今度こそ私が貴方を護るから。
じゃあまた(見)守りにくるからね。
おやすみなさい。
SIDE タクト
窓からの日差しで目を覚ます。
今日は融合の素材を求め、森の奥へ行く予定です。
剛棒を背負い大森林に入る準備を整え、ワイリナ大森林へと向かう。
「おっ今日も大森林かい。無理はしないようにな」
今日もアグリさんは元気に優しい笑みを浮かべる。
「おはようございます。アグリさん。行ってきます!」
そう言って街を出るだけで、やる気が2段階くらい変わるのが不思議ですね。
人から優しく背中を押される。前の職場じゃ考えられなかった事ですからね。
ワイリナ大森林へ着くともう一つの目的の為、道を外れて森へと入る。
『召喚』
ペル
森に少し入ったところで、召喚を実行すると足元に出来た魔法陣から大蝙蝠のペルが召喚された。
「キッキー♪」
ははは喜んでますね。
召喚と送還は今は1日に1体につき1度きり。
緊急の時のために使わないようにしてたので、会えるのは下水に行った時くらいだったから寂しかったんですね。
擦り寄せてくるふかふかなシルクのような極上の毛並の頭を撫でると、ペルも気持ちよさそうに目を細める。
そしてそのまま。
融合してからリィスのもと、下水でLv上げをしていたペルのステータスを確認する。
種族:大蝙蝠 Lv9
名前:ペル
スキル
夜目
索敵
「おっもうすぐLv10ですか。直接アシッドスライムを吸収しているリィスよりはLvの上がりが遅いですが、頑張りましたねペル」
そう言って柔らかなペルの胸の毛を撫でる。
ペルには直接的な攻撃スキルがないですからね。
そのためにアシッドスライムは倒せませんが、大ネズミはなんとかリィスの力を借りて倒している。リィスは面倒見が良いですから安心して任せられます。
「さあ行きましょうか。今日はお願いしますね」
「キキー」
私に頬擦りしながら喜ぶペルが、気合を入れる。
羽を大きく広げ、任せてと言っているようだ。
ええ任せましょう!やる気のある子には仕事をどんどんふる。久野木課長仕込みの部下の育成術です。
「ではペル。索敵お願いします。」
今日の目的の1つは、あまりこれまで構ってあげられなかったペルと一緒に、ペルの索敵スキルで森を探索することです。
ギルドでゴブリン討伐の依頼も受けましたからね。索敵でゴブリンが引っかかれば、討伐しながら進みましょう。
森に入り、ペルと共に川へと向かう。
今回の目的地はこの川の上流にある湖。どうやらこの湖の周辺にはジョイニ草という関節によく効く調合薬の材料があるらしいので、同時に錬金術の素材でもあるこの薬草なら『融合』の素材になると踏んでいます。
最近ニイナさんが偶に膝を押さえていますからね。その材料さがしです。
しばらく地図に従い川の上流へと沢を登っていく。
「キキッ」
鳴き声とともにペルが道を変える。
途中、毒はないが2m程もあるリダスネークという魔物、お馴染みのホーンラビットと刺激しなければ敵対しない魔物はペルの索敵で避け、ゴブリンは絶滅させる勢いで狩ります。
そして2時間ほど歩いた頃。
「キキー」
「おー着きましたか。」
目の前には、向こう岸が見えない程大きな湖が広がっていた。
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