第63話おっさんの融合ポーションと師匠からの報酬
次の日
前日のうちに王国騎士団、冒険者ギルドによってスケルトンが討伐されたと市民たちに広がり、同時に大量のスケルトンを率いたリッチを討ち取り、最も活躍したものを讃える式典を城内にて行うと市民に通達されていた。
そして、城の前の広場に集まった市民達が歓声をあげるなか、2階部分に出てきた勇者 ヒジリ・セイドウが、スキルによって創り出した聖剣を掲げる。
神々しい光を放つ聖剣に皆息を飲む中、今回は一市民として王城へと入る事が許され、その姿を見ていた。
リッチの危険性を散々煽ったのちに、今回の功績を大袈裟に讃える大臣の一人。
初めの謁見の間で見た顔だが自己紹介したわけではないので、名前はわからない。
そして王が壇上に上がると、歓声は最高潮となる。
「勇者ヒジリに騎士の称号を授けるものとする。同時に貴族となった勇者ヒジリは我が娘、サラ・アルグレントの夫なるべくここに婚約を宣言する!」
さすがは、王ですね。
あの不健康そうな見た目に騙されていました。雄々しく発せられる声は広場の隅々まで届き、王が話し始めると同時に誰一人話さなくなった広場の一人一人の耳にはっきりと届く。
王たる威厳が胸を締め付け、王の宣言と共に広場に集まった市民達が、一斉に膝を折り頭を下げ始めた。
順調に取り込まれていますね。
壇上のセイドウくんの隣には、腕を絡ませる王女サラ・アルグレントが寄り添う。
そして2階部分の壇上から市民に手を振る姿は、自分が上だということに酔いしれていた。
この後騎士団長ホーエンからの発表により、今後勇者ヒジリとして仲間を募り魔王討伐の旅へ出ることが発表された。
まずは各地の魔物被害の大きな場所へと赴き、その問題を解決しながら強い魔物の魔素を吸収させ、レベルを上げるようですね。
さすがにネズミやウサギでは限界がありますし、彼はこの辺の魔物ではもの足りないのでしょう。昨日のリッチも不完全とはいえ一撃で倒していましたからね。
まぁこれで彼に会う事も少なくなるでしょう。
「師匠!」
広場では未だ興奮が止まず盛り上がりを見せている。
その中でこっそりと師匠の家へと移動する。
「おや。昨日のスケルトン騒ぎは大変だったみたいだねぇ。全くこの国もロクなことしないよ全く。それにしても、勇者ヒジリがいなくなるからと言って、ホイホイきてよいわけでないぞ。こちらは……まあ良いがな。ここに入るための試験じゃ。いつものをやってみせい。」
家に入る前に、全身に魔力を循環させる。
この家を出てから、毎日欠かさずに循環させ操作し変化させ枯渇させてきた。
お陰で絶対量も増え、質もかなりよくなりました。
「ふむ。ヌシはしっかりと基礎を磨いているようじゃの。よい魔力の流れじゃ。入ってよいじゃろ。」
少し含みのあるお許しが出たところで、家に入る。
そして席に着きお茶に口を付けたところで、師匠が口を開いた。
「ところでの。1日に何個ポーションを作れる?」
ポーション作りも毎日の日課となっている。作りすぎは良くないので1日3本とほかの調合薬にしているが、純粋にポーションのみであれば
「1日40個〜50個くらいですね。」
修行の分を考えれば余剰魔力ではこれくらいは作れる。2〜3個だった頃に比べれば進歩しましたね。
「ふむ 。ならば高品質の治癒ポーションを卸してみんか?このところポーションの消費が早すぎての。この街のポーションの供給が安定していないのでな、それとマジックポーションを……卸値はこの位でどうじゃ?」
そこに書いてあったのは、高品質の治癒ポーション1本5,000トール。そして後から付け加えられたように書いてあるマジックポーション要相談の文字。
「そんなにですかっ!やります。ってマジックポーションの要相談って…書く必要あったのですか?師匠」
高品質の薬草を卸しても、少し値があがった今ですら5本で700トール。2本で1本のポーションが出来ることを考えれば約20倍になる計算です。
「最近分かった事じゃがの。融合で作った緑のポーションは使用期限が非常に長いのじゃよ。調合と違って混ぜているのではなく、結合しているからじゃろうな。だから多く作って貰って構わん。とりあえず治癒ポーションは100個納入して貰えんかの。300個納入毎に契約を更新させてもらおう。ちなみにマジックポーションは10個で良い……。」
「300個ですか。随分多いですね……。」
これは少し安請け合いしすぎましたかね。この量はなかなか大変そうですね。
「むぅ。それと。そうじゃな。これが相談なんじゃが、この街のポーション供給の安定に寄与と、同時にマジックポーションの供給の礼として、1属性のスキルスクロールでどうじゃ?」
「スキルスクロール⁈」
これはまた驚きの報酬ですね。
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