第60話おっさんの新たな予感と煌めく地の星
「ふー。疲れましたね。」
静かになった墓地の地面に一人座り込み、ひと息つく。
騎士団も冒険者も“勇者様!”“勇者様!”と叫びながら墓地から街へ行進をしながら出て行った。
スケルトン相手に1時間以上剛棒を振っていた自分に比べ、スケルトンのボスであるリッチをあっという間に倒した勇者ヒジリ。
確かに実力の差は、天と地ほどありますが……。
「ん〜。城にいた時とあまり変わってなくないですか?彼の成長速度はあの2週間でも驚くほどでしたが……」
私が城を出た後は、あまり戦闘訓練はしなかったんでしょうか?
まぁ考えても仕方ないですね。聖剣を使った攻撃は相変わらず凄まじいものがありましたし。
誰もいなくなった墓地。
先程まで埋め尽くしていたスケルトンの代わりに、周囲に散乱する大量の魔石が怪しく月の光をうっすらと反射している。
特に彼の聖剣の光の通り道には、大量の魔石の道が天の川のように一筋の道を作っていた。
今回の討伐依頼は、スケルトンの討伐数。それだけだ。
元々魔石自体に含まれる魔素が非常に少なく価値が低い、クズ石とも呼ばれるスケルトンの魔石。
それが特に回収されることもなく、そのまま放置されていた。
「ふむ。これを使わない手は……ないですね」
軽く自分の周りにある魔石を拾いきっただけでも、1000個はあるだろう。
明日になれば、低級であるF級冒険者や更に生活苦を抱える冒険者達やスラムの住人達が拾いにくる。
価値が少なくとも、これだけ数が多ければ生活費の足しにはなるため、魔石拾いに精をだすのだ。
拾っては融合を繰り返し、150を超え200個目の魔石に触れた。
その
直感
その魔石で新たな
「やりますか」
今回はリィスもペルも呼ばない。
というか呼べない……。
召喚出来るのは、今は1日1回。既にビックバットの討伐にリィスを呼んでしまった。
ここでペルだけ呼ぶのも可愛そうですからね。互いの紹介は後日にしましょうか。
それでは……
『融合』
ゴブリンと同じくらいの魔法陣が、強い光とともに、魔石を中心に描かれる。
そして、ズシリと重くなった魔石を地面に置くと、いつも通り卵のように割れ、魔石の強い光が徐々に消えていった。
スケルトン
光が消え、そこにいたのは紛れも無いスケルトンだった。
カタカタと震えるスケルトンに意識を集中させる。
種族:スケルトンノーマル Lv1
名前:
スキル
骨結合
夜目
「スケルトンノーマルですか。」
それは何の変哲も無い“普通”のスケルトンだった。
しかし、スキルを見た瞬間。『融合』の時とは違う直感のようなものを感じた。
「骨結合……あぁ。ちょっと待っててくださいね」
同族吸収に成長。下位の魔物達に見られる特殊な成長補正。
『骨結合』
恐らく同族吸収に似た性質を持っているのだろう。
そしてその勘は間違いないと、直感が告げている。
それならば……。
カタカタと揺れるスケルトンをその場に待たせ、骨を拾う。
バラバラに吹き飛んだリッチの骨だ。最も近くに飛んできたこの骨だけは、落ちた場所がわかっていた。
その骨は周囲に散乱するスケルトンの骨とはまったく違い、古い金属のような鈍い灰色をし、スケルトンよりも一回り大きな、未だ魔力を多く含む骨だった。
その骨を待機させているスケルトンノーマルへと与える。
スケルトンの胸骨部分にリッチの骨をつけると、胸骨にリッチの骨が沈むように吸収されていく。
どうやら正解だったようですね。
スケルトンは、一度バラバラになり、ゆっくりと再構築される。
そして、再び姿を現したスケルトンはその手に杖を握っていた。
種族:スケルトンメイジユニーク Lv1
名前:
スキル
骨結合
夜目
炎属性魔法
スケルトンメイジになりましたか。それにノーマルでなくユニーク……特殊進化っぽいですね。
いきなりリッチの骨を与えた影響でしょうか?
これは幸運ですね。
それに、なんだか小さくなりました?というよりも凝縮したというイメージでしょうか。
より骨の密度が、密になっているような感じがします。
しかし、心なしか杖を持つ姿も仕草も、女の子っぽいですね……。
「カッカカ」
スケルトンメイジが杖を抱きかかえるようにして、よろしくお願いしますと意志を伝える。
スケルトンメイジ。その印象は完全に女の子のものだった。
「はい。よろしくお願いしますね。やはり女の子のようですね。」
「カカッ」
「あぁそうですね。名前を付けましょう。どうせならフランス語で統一しましょうか………。」
リィスもペルもフランス語。
ここは統一する方が仲間っぽい感じになるんじゃないでしょうか。フリナの時は安直すぎましたからね。
頭の中で、様々な単語を日本語に変換していく。
私がどうしてフランス語をって?
私、小学生の時から高校2年生まで親の仕事の関係で、フランスで育ちましたからね。
それまで親との会話しか日本語を使ってこなかった影響で、逆に外用の日本語の方が不得手で、よく営業の人に不快な思いをさせてましたから。この話し方が定着したんですよ。
久野木課長…クノちゃんにも、よくからかわれてました
。普段のプライベートと違って、馬鹿丁寧過ぎるって。営業と違って舐められても仕事に支障が出ないですからね。丁寧過ぎるくらいでちょうど良いと、よく反論してました。
そんな言い訳を、誰もいない墓地でしながら目の前のスケルトンメイジをじっくりと観察する。
んっ照れてる?
この子はなかなか照れ屋さんのようですね。
そうだ。キミの名は……
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