第58話おっさんのスケルトン討伐と勇者様降臨

ビッグバットの皮膜を取り出しアンナさんへと差し出す。勿論状態は非常に良い無傷の皮膜だ。


「これは!凄いですね。タクトさん。無傷……高品質の皮膜ですか…。驚きました。が方法は言わなくて結構です。秘匿した方がタクトさんがこれからも稼げますからね。では50組分100枚の納入を確認いたしました。カードをお出しください。」


 アンナさんは、驚きながらも、最高評価での納入の手続きを淡々と進める。さすがはプロである。


 カードを出し、納入した分の報酬が振り込まれる。その額25万トール。1枚2,500トール、ビッグバットの皮膜は大きいといっても大盤振る舞いだ。


「無傷の皮膜は用途が格段に広がるだけでなく、継ぎ目が少なくなる分綺麗に仕上がりますからね。貴族や大商人達に特に高く取引されてるんです。」


 なるほどそう考えれば納得ですね。それなら60枚使っている私の外套は素材費だけで15万トールの超高級品って事ですね。しかも継ぎ目なんて無いですし……。スキル持ちですし……。うん。ここに着てくるのはやめておきましょう。


 いつものように石にカードをつけ報酬を受け取った。


 その時だった。


 ガンガンガンガン


 同時に響く、警鐘の音。

 先程、日が落ちたことの鐘の音が響いたばかりだ。

 嫌な予感が胸を締め付ける。


「大変だ!大量のスケルトンが墓地から街へなだれ込んできやがった!すでに騎士団が来て墓地に押し込んでるが、頭数がたんねえ依頼を受けた奴はすぐに来てくれ!」


 警鐘の音ともに、1人の冒険者によってもたらされた街の状況。

 下水のスケルトンを冒険者たちが討伐していたころ、墓地に接する街区に墓地から一気にスケルトンが入ってきたらしい。


 慌てて近くにいた兵と冒険者が応戦。その後待機していた騎士団が合流。

 城の騎士団と冒険者ギルドへの伝達係が派遣された。数々の情報と共に。


 そして……


「押し込めーーーーーーーーーーー」


『おおおおおおおーーーーーーー』


 警鐘からすぐにギルドを飛び出し、墓地方面へと駆ける。

 徐々に戦闘音が大きくなり、辿り着くと報告通り既に騎士団が戦闘を始めていた。


 第二騎士団長 ヴォルクスの掛け声と共に、盾を前に構えた重厚な装備を身に付けた騎士団が、一糸乱れぬ突撃でスケルトンたちを薙ぎ倒し粉砕し墓地へと押し戻す。


 盾での突撃と、金属で出来た槌による重撃を得意とする騎士団。それがヴォルクス騎士団長率いる。第二騎士団だった。


 機動力は無いものの、重量級の団員で構成されたの攻撃力、防御力はホーエン率いる近衛騎士達の所属する第一騎士団と肩を並べると評される騎士団の攻撃を受け、あっと言う間に街へと雪崩れ込んだスケルトン達は排除された。


 そのまま第二騎士団と共に冒険者達が墓地へと入り、各々スケルトンの討伐を開始する。

 騎士団と冒険者達の数倍、いや数十倍はいるスケルトン達を剣を打撃武器に持ち替えた冒険者や魔法使いの冒険者が文字通り粉砕していった。


「はっ!」


 剛棒を振るうと、密集して襲ってくるスケルトンが数体砕け落ちる。

 毎日欠かさずに演武と共に振るってきた剛棒を、止める事なく流れるように振るう。一見ゆったりとした動きに見えるが、剛棒に触れると面白いようにスケルトン達が砕けていく。


 煌々とたかれた松明の光に、城から派遣された魔道士達のライトの魔法で、辺りはお驚く程明るい。


 せっかくの『夜目』が全く必要ない程に……


 しかし。

「減った気がしないですね」


 剛棒を振るい続け1時間は経った。自分の体力的には問題は無いが、冒険者の中にも徐々に疲労の色が見え始め、同時に負傷者が出始める。


 ガシャン!

 ガシャン!

 ガシャン!


 急に鳴り響く剣と盾を打ち鳴らす音。

 その音と共に状況は一変する。


 光が墓地を一直線に迸ると。光の周囲にいたスケルトンまでもが消失していく。


 “勇者降臨”


 その遅すぎる降臨に作為的な物を感じるが、そのあとは圧巻だった。


 勇者であるセイドウくんが聖剣を振るうと、光が迸る。それだけでスケルトンが上位種も含め消えていくのだ。


「セイドウくん。」


 大量のスケルトンがみるみるうちに居なくなっていく。

 そしてスケルトンの大集団が消え、騎士団、冒険者の一団が奥へと突撃したタイミングだった。


「リッチだーーー‼︎‼︎」


 奥にいたフードをかぶったスケルトンが手をかざすと、爆風と共に、騎士と冒険者数十人が吹き飛ぶ。


 墓地奥に響く音の先には、首元に装飾品をつけたローブで着飾った大柄なスケルトン。


 リッチが姿を現した。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る