第54話おっさんの初パーティ活動とDランクの強さ

「皆さんお強いですね。」

 2つランクが違うという事は、それだけ経験値が違うと言う事になる。


 特にDランクに上がるには、魔物の討伐依頼もそれなりに受けなくてはならず、FからEに薬草採取だけで上がれるのとは違い、それなりに魔物を倒せる力が求められる。


 このパーティ 《緑峰の護人》は、剣士のニックスを中心に、シーフのマリー、魔法使いのカヤ、調合師のクルという同じ村出身の幼馴染4人のパーティで、索敵 攻撃 回復とバランスの良いパーティとして冒険者ギルドでも期待されている美男美女の4人組パーティだった。


 今回の調査はそのバランスの良さを評価され、C級へのランクアップ試験の一つとしての依頼で、間違っても失敗するわけにはいかない。


 それ故に、薬草採取しか取り柄がないと思われている私はへのあたりも強かった。


 倒し方に品がありますね。私なんてもっと殺伐としてますよ。

 シーフのマリーが事前に敵の種類や位置を把握。場合によっては調合師のクルがバフ・デバフを掛け、遠距離からカヤの魔法で数を減らし、トドメをニックスさんがさす。理想の討伐方法ですね。私の頭部に殴打一撃とは違います。


「当たり前よ!薬草採取だけしている新人と同じにしないで!」

 振り返りざまにこちらを指差すカヤ。そのキツめの顔に似合わない双丘がローブの下で、反動でブルんと揺れる。


「ねえねえ。ニックスー。タクトだっけ?なんでこんな新人くん連れてくのー。この新人くん弱いんでしょ?」


 すみません。弱いの否定しないです。


 そんなマリーの心を抉る発言に、男の性と言うべき、視線が自動追尾してしまうのをなんとか抑えていた私の視線が、シーフのマリーさんへと向く。


 例の意地の悪い受付嬢。キャシーとの騒動のせいで、私がゴブリンから逃げ出したのは周囲に広がってしまいましたからね。


 それでも森に入り、品質の良い薬草を取ってくることから薬を調合するもの。ではなく、薬の材料を集める者。と言う事で冒険者ではなく、“薬者やくしゃ”と……。まあ馬鹿にされているだけですけどね。


 ツンケンしている巨乳少女が魔法使いのカヤ、そしておっとり喋るのがシーフのマリーだ。


 この2人……いや正確には3人共どう見てもニックスに恋心を抱いています。

 恋愛ごとに疎くなった元中年の私でさえ彼女らの気持ちを察する事くらいはできますよ。


 気付いてないのは、本人だけ? ……いるんですねぇ鈍感系主人公って。


「そう言うなってマリー。タクトはゴブリンの多く出るこの辺で薬草を採っているんだ。この辺のゴブリンに詳しいからな。それにタクトが弱くっても俺たちが戦うんだから問題ないだろ?」


「そうだけどー」


 マリーが頬を膨らませこちらを睨む。


「そうですよ。マリー。それにあまり彼を悪く言わないで下さい。」


 おっ!クルさんがフォローしてくれるなんて


「えー。クルちゃん。もしかしてー?」


「違います。彼の採ってくる薬草の質は今まで買っていた薬草よりも非常に高いんです。彼がこの街からいなくなれば、また質の悪いポーションを使うことになりますよ。」


 あぁそう言う事ですか。

 そうですよね。調合師にとって私の採ってくる薬草は非常に人気が高いらしく、買取価格も上がっていますからね。

 お陰で宿代以上は楽に稼げてます。ありがとうございます。


「ふんっどうでもいいわよそんな事。それより早く先進むわよ。」


「はーい。カヤちゃん」


 昔からの幼馴染故の雰囲気だろうか。微塵もニックスさんを取り合っている感じを出さない……。

 もしや既に3人と!!!!


 鈍感系主人公じゃなく、これは余裕?いやいや。いや?あり得る?ここは異世界ですからね。一夫多妻も認められていますし……イケメンはどの世界でもイケメンですね。


 ところで

「あの……ゴブリンの調査というのだけで、調査の内容を詳しく知らないんですが…」


 そうです。

 ニックスさんからは、不審なゴブリンの死体があった付近のゴブリン達の行動についてと、場所を案内してほしいと言われて来ましたが、実は詳しく知らないんですよね。


「あぁ悪い悪い。そういえばタクトには詳細説明してなかったな。俺たち 《緑峰の護人》に依頼されたのは2つ。大量のゴブリンの不審死の調査と《炎牛の盾》によって倒されたはぐれ雌ゴブリンのつがいがいる可能性があるからその調査だな。まあその2つが関連がないか。というのもあるから3つか?」


 ん?ん?

 これはやってしまいましたか?はい。何度も言いますが両方とも犯人は私ですね。


 フリナがハグレじゃなくて、番がいる可能性ですか?いませんね。私の生み出した融合魔物フュージョンモンスターですから……。

 ハグレではなくユニークって感じですかね。


「そうですか。ではゴブリンがよく来るポイントに行く必要がありますね……。それに大量のゴブリンの死体からは魔石が取られてたと聞きましたが、不審な点でも?」


「あぁさすがよく知ってるな。そうなんだよ。たしかに魔石が取られてたんだけどな。持ち込んだ奴がいないんだ。だからギルドはゴブリンを殺して魔石を取り込んだ雌ゴブリンが強くなったんじゃないかと見てる。なんせゴブリン10個分の魔石だったみたいだからな。」


「……そうなんですね。」魔石…100個分なんですけどね。


 とりあえず問題なしです。この針のむしろな状態を耐えるんです。報酬は勿論ありがたく頂きましょう。


 結局当然ながら数日の調査でも何もでず、魔石をゴブリンに与えようとしても興味を示さないことから、この件は別個のことであると結論づけられた。


 そして別の冒険者によって、ある異変がギルドへと報告され調査は終了となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る