第55話おっさんの緊急依頼と新たな大量討伐候補

「墓地から大量のスケルトンが下水へ溢れていることが判明しました。調査の結果。墓地にリッチが生まれた可能性があります。」


 朝一のギルドホールに、受付嬢のリーダーでもあるアンナさんの声が響く。

 食事をしていた冒険者も、依頼が貼り出されるのを待っていた冒険者も一斉に立ち上がり、受付カウンターへと視線を向けた。


 リッチの出現。

 戦場など負の魔素が溜まる場所に稀に生まれるアンデットの上位種であり、多彩な魔法、大量のスケルトンの使役と、戦場に出現した際は軍が派遣されるレベルの危険な魔物。


 しかし、今回出現したのは街の墓地。

 その環境から下水に溢れるほどのスケルトンが既に生まれており、軍、そして冒険者が連携し討伐にあたることとなった。


 “緊急討伐依頼”

 スケルトン討伐


 下水及び墓地にてリッチの生み出した大量のスケルトンを確認しました。

 今回王城騎士団と連携しスケルトンの討伐をお願いします。


 スケルトン 2,000T

 スケルトン上位種 10,000T


 特殊討伐依頼

 リッチ 10,000,000T


 依頼を受ければ、ステータスカードにその魔物の討伐数を表示する事が出来る。

 今回は、その討伐数を元に1体幾らという形で報酬が支払われる。

 スケルトン上位種は、メイジ、ナイト、アーチャーといった進化種で、スケルトン含め通常の倍以上の報酬が支払われるようだ。


 そして、リッチにかけられた懸賞金は1,000万トール。

 破格の報奨金ですね。

 まぁこういうのは大体騎士団……というより確実に彼が出て来る。という事は間違えなく彼が持っていくんでしょう。なんと言っても勇者様。主人公様ですからね……。


 さて、私は私で準備をしましょう。

 今のままでは、ハッキリ言って墓地では戦えませんしね。


 スケルトン討伐は、夜が本番ですし。


 一気にヒートアップした冒険者達が、依頼を受けるためカウンターに殺到する。


「アンナさん。アンナさん。」


「あら。タクトさん。どうされたんですか?そんなコソコソと……」


「いや。アンナさんと話してる時、結構皆さんの目が怖いんですからね。ご自身の人気を考えてください。」


「あらあら。嬉しいですね。そうですね。では小声で…どうしました?」


 でも否定はしないんですね。分かります。受付嬢のトップですもんね。顔を近づけられるとドキッとするんですけど……。


「あっ…あの。夜目が使えるような魔物いません?出来るだけ弱いので、大量にいるのでお願いします……」


「ん〜。大量にいて弱いと言ったらビッグバットですかね。どうするんですか?」


「えっあ〜。錬金術で……」


「あぁ。夜目が使える魔物の素材が必要なんですね。タクトさんもスケルトン討伐に?夜ですもんね。気をつけて下さいね。無理しちゃダメですよ。」


 うん。錬金術といえば勝手に想像してくれますね。


 耳元でアンナさんから心配の言葉をかけられ、顔が真っ赤になる。


 ホント。誰も見られてない事が幸いだった。


 ビッグバットの出現する場所を地図に書いてもらう。

 ビッグバットは皮膜がコートに使えるため依頼が出る事があるが人気がないらしい。


 皮膜の人気に反比例してる理由としては、一気に大量のビッグバットを相手にしないといけないため、一々考えて倒す事が困難で、綺麗な皮膜が取れないため効率が悪いらしい。


 まぁその辺はどうにか出来そうですね。


 アンナさんに礼を言い、場所を確認する。

 ビッグバット達は夕方になると一斉に洞窟外へと飛び立ってしまうらしい。


 その前に森へと入り、ビッグバットの生息する洞窟へと向かう。


 いつもとは違い、川ではなく、切り立った崖のある方角へと向かう。


「こっちに来た事はなかったですね」


 ゴブリンの多く暮らしている川の方角とは違い、こちらはビッグボアやフォレストウルフなど行動範囲が広い動物型の魔物が多く生存している。また蛇や蜘蛛などの魔物も報告されているため、時間はないが警戒しながら進まざるを得なかった。


 2時間程歩き、やっと洞窟を確認できた。

 崖を向こうまで貫通しているのではないかと思うほど、暗く先の見えない洞窟の中へと入る。


「おおぉ。これは」


 200mほど中へ進んだだろうか、外の明かりは全く届いていないそんな闇の中、200匹以上のビッグバットが洞窟の天井からひと塊りになってぶら下がって寝ている。奥にはもっといるのだろう。

 夕方になると一斉に起きて洞窟外へと出る。その数は数万とも言われていますからね。


 幸運な事に、小さな群のようですね。


 ビッグバットを確認し、バッグの中から導火線のついた球状の道具を取り出す。


 ー煙玉(猛毒)ー

 最高品質の毒咲草(花は咲かないが、葉の表面に花のように猛毒の粉が付く)の粉末とリンガの樹液を『融合』したものと

 誘毒液(虫や果物を好む生物を誘引し、口にしたものを猛毒にする)を『融合』、煙玉にしたものがこれだ。


「1体1体相手するのは面倒ですからね。毒で一掃してしまいましょう。」


 毒関係の調合方法は、師匠から借りた本に書いてありましたしね。お陰で融合が活用できます。


 師匠が城の中央図書から持ってきた本の中でも、かなりヤバめの本だと思います。

 こんなもの一般人が見ていいのでしょうか?と何度も思いましたが……。好奇心に負けましたね。


 4つの煙玉の導火線に火をつけ洞窟外へ、この煙を吸えば間違いなく息絶えてしまうでしょう。

 長めの導火線の為、余裕を持って外へと出て、待機する事1時間。煙玉(中和剤)を投げ込み、中へと入った。


「そうだ。念のためリィスを召喚しましょう」


『召喚』

 リィス


 その瞬間。真っ暗な洞窟の入り口が魔法陣の光で明るく照らされた。


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