第49話おっさんの魔石融合と初めての…

 100個目を目前に99個分の融合魔石を右手に、1個分の魔石を左手に持つ。


 相変わらず脳に訴えかける直感は、ゴブリンの魔石を体内に取り込んだ時のような自分自身と繋がる融合であると同時に、前のような危険な感じではなく。前とは違い優しいオーラが右手、左手、そして自分を繋いでいる。


『融合』


 スキルを唱えた瞬間。両手の魔石がひかり、1個の魔石が完成する。

 そして更にその魔石が強く光ると、全身から魔力が魔石へと吸い込まれ、魔石から魔法陣が浮き出た。


 パキパキ


 一つとなり、少し大きくなった魔石が卵のように割れ始め、強く発光する。


「なっ……」


 そして光の収まったその手の上にいたのは。


 デフォルメされた小さなスライムだった。

 可愛い。一言でいうと可愛い。


 桃色のツルンとした柔らかくも、張りのある滑らかボディにつぶらな瞳。

 手のひらサイズのその体は、地面に置くとピョンピョンと飛び跳ね。自分をアピールしていた。


 声は出ないらしい。


「おいで」


 もう一度手のひらを差し出すと、ピョンと乗ってきた。拳大ほどの小さな体のスライムを受け止めると


 直感


 ビリっ頭に響く感覚。


「こっちが『融合』の正解か!」


 ゴブリンの魔石と自分自身を融合した最初の魔物(魔石)融合。

 たった数分で全魔力を奪われ、体に多大な負荷を与えた融合。その危険な融合とは違い。


 直感はこの小さなスライムと、安全に融合できる事を告げていた。


「私と融合してくれますか?」


 手のひらの小さなスライムに問いかけると、小さく二度ジャンプした。


 どうやら同意してくれたようです。こちらの言葉を理解しているようですね。


 それでは…


『融合』


 結果的には約3分 融合が可能でした。


 その間の意思疎通で、だいぶ色々な事を知ることが出来た。


「名前を付けるんですね。」


 まだ生まれたばかりで、非常に弱い存在であるらしく。名前をつけてこの世界に定着しなければいけないらしい。


 優しく撫でると、ユラユラと揺れる。


「そうですね。リィスではどうでしょう。少し呼びやすくしましたがフランス語のLisse。滑らかなという意味から頂きました。」


 名前を付けると、体の表面を一度光が覆った。これは魔物使いが魔物をテイムするときも起こる現象と同じです。


 嬉しいらしく、肩へ飛び乗り頬へと近付き、その非常に手触りの良い体を擦り付けてきます。


「おぉ喜んでくれたみたいですね。これからよろしくリィス」


 先程の融合でわかったのは、まず生まれたばかりのリィスはまだまだ弱く何の戦う力も持っていない事。


 ただし、融合する事で、物理耐性、衝撃耐性、それと擦り傷程度ならすぐに再生できる。再生(極小)を得られるようです。


 そして、肌がツヤッツヤになります。湯上り卵肌以上の美肌です。17歳になって随分肌艶が良くなりましたが、比較にすらならないですね。


 どうやら融合する事で、その魔物の特徴を得る事ができるようです。多少は魔物の身体的特徴も出るようですが。あの時ほどの変化は無さそうですね。


 リィスとしばらく戯れていると、だんだん分かってきた事がある。


 リィスは私の魔力と魔石の融合で出来た魔物で、完全オリジナルのスライムのようで、アシッドスライムから作ったからといって、アシッドスライムではないらしい。


 その証拠に


『召喚』

  リィス


 早速下水道の部屋を別にして、リィスの召喚を唱えると、足元が一瞬ひかり、その場に違う部屋にいたリィスが現れた。


 どうやら、私の魔力で構成されているため、どこにいようが手元に召喚できるようです。

 これは魔物使いというよりも召喚術師に近い。テイム状態にはなっているが、自分の魔力の分、繋がりは強いようですね。


 そして現状、名付けた事により私の眷属という位置付けになっているようで、意識すればリィスのステータスを確認する事が出来た。


 種族:オリジナルスライム Lv1

 名前:リィス

 スキル

 同族吸収

 物理衝撃耐性

 再生(極小)


 これが現状のリィスのステータス。どうやら魔物にはスキルLvはないが自分自身にはLvがあるようでリィスはLv1となっている。


 戦う手段は持っていないが、自分より弱いスライムを吸収して強くなるらしく、吸収するスライムはスライムであればどんな種類でも良いという事で、アシッドスライムを利用しリィス強化計画を実施する事となった。


 再び下水の入り口付近から最初の角を曲がると、アシッドスライムがゆっくりと遠ざかるように進んでいた。


「ちょっと待っててくださいね。」


 肩にいるリィスに声を掛け、背負っていた剛棒を構える。


「ハッ!」


 ビチャッ


 核となる部分を避け、アシッドスライムを剛棒で一突きにするが、攻撃力が強すぎるらしく、体が爆散してしまう。


「ん〜。魔石は残りますが、殺したら意味ないですからね。剛棒はオーバーキルですね」


 それならば。


『ストーンボール』(極小)


 流石に弱らせるだけという事で、パチンコ玉くらいの小さなストーンボールを発現させる。

 魔法操作のレベルが上がった事で、イメージが魔法に伝わりやすくなった。おかげで土魔法もある程度威力の強弱をつけれるようになっている。


「おっ上手いこと弱りましたね。流石、属性魔法が弱点な事だけはありますね。」


 ストーンボールで体を突き破られたアシッドスライムの動きが明らかに悪くなる。

 石の玉による純粋な体への物理的ダメージは殆どないだろう。


 スライムにただの石を貫通する威力で投げつけてもダメージはない。


 その証拠に……。


 ビシっ!


 親指で弾かれた小石がアシッドスライムの体を貫通し、貫通した部分が元に戻る。


 カンっという下水の石床に当たり、後方へと弾かれたが、貫通する程の威力を持ってしても足元のアシッドスライムにダメージは感じられなかった。


 この技は師範から教えてもらった例の指弾です。

 足元に石が飛んでくる度に指元を見ていたらやり方を教えてくれました。


 本来は闘気と言うものを指に纏って撃ち出す技ですが、私の場合は指に、魔力を纏って弾く力を上げてます。


 実はゴブリン程度なら結構なダメージを与えられます。

 それすら使わなかったなんて、余程テンパっていたんでしょうね。


 スキルを得た事で、戦闘考察力が大幅に上がった…いや元に戻った気がします。

 元々戦略的に闘うゲームが好きでしたからね。


 そんな事を考えている間に、リィスが弱ったアシッドスライムに近付き網のように自分の体を広げると、アシッドスライムを覆った。


「おぉ。結構一瞬なんですね。」


 アシッドスライムを覆ったと思えば、その直後に元のリィスの姿に戻っている。これで吸収はできたのでしょうか?


 その疑問に答えるようにリィスは嬉しそうに一度プルンと力強く震えた。


 これが初めて、仲間と共に異世界で討伐を行った瞬間だった。


 そしてその仲間の頭に手を置き、もう一度語りかけた。


「これからよろしくね。リィス」



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