第37話おっさんの街探索と女将のサイン
昨日の事もあって、あまりギルドへは行きたくない……。という事で今日はニイナさんの地図を片手に、生活用品を揃える事にしましょう。
ついでに街を探索しようと思います。
最初の目的地の武器屋に着くと、所狭しとならぶ武器を手に冒険者達が真剣に武器を選んでいた。
どうやら勝手に手に取ってみても大丈夫なようだ。私も目的の物を探す為、早速店を見渡す。
「剛棒は売ってないですね…… 」
「剛棒?にいちゃん剛棒っつったか?」
食堂の一件といい、相変わらず私のひとり言は、大きいみたいですね。
カウンターにいた髭をはやした熊のような方が、大きな声でこちらを見て笑っています。まったく初対面の人に笑われるなんて心外ですね。
「………」
「おぉすまんすまん。そう怒るな。悪かったって。別ににいちゃんを馬鹿にしたわけじゃねえんだ」
無言でカウンターに近づくと、慌てて弁解を始める。
「剛棒の何がそんなに可笑しいんです?剛棒ってないんですか?」
剛棒は師範との大事な絆ですからね。
「はは〜ん。もしかして、シュリンク様に憧れてんのか!いいねいいね。若いってやつは。でもよ。無茶はいけねぇ打撃武器なら、ここは槌系にしておきな。剣は持ったことがないんだろ。そういう体格じゃないしな。突かば槍払えば薙刀打たば太刀下ろさば槌と剛はかくにも外れざりけりってな。万能で強力だが取り扱いが難しいのよ。使い手もシュリンク様の弟子の数十名ってな。その弟子ですら一部を除いて極めてねぇって噂だ。需要がねぇんだ。だから売ってねぇよどこにもな。」
シュリンク様とは、随分すごい方なんですね。そういえば師範もれっきとした使い手。
やはりシュリンクさんのお弟子さんなんですかね。
こんどこそ。何師範なのかちゃんと聞いておきましょう。またはぐらかされるでしょうけど。
「ところで、剛棒というのは素材はなんなんです?」
「んー。実は俺も知らんのよ。鍛冶屋で作られるようなものじゃないな。要は仕入れをするかどうかだが。確か初めて剛棒が出てきたのは200年前くらいの遺跡って言われててな。今、出回っているのはその頃大量に作られたものらしいぞ。今や製法すら伝わってないっつう話だ。そういやダンジョンからも出た事があるな。そういうのは大抵特殊な能力が付与されてっから高値で売れるな」
「そうなんですか……」
なるほど。200年前に失われた製法ですか。
同じような素材でLvに応じた重さ。
尋常じゃない丈夫さ。しかもLvが変化することもある。やはり剛棒は不思議ですね。
それにしても遺跡にダンジョンですか……。
ふむ。不安しかない。
結局、解体用にと倉庫から拝借したナイフの研ぎ直しを、500トールでお願いし店を後にする。
「さて次は道具屋ですね。」
地図には武器屋から3軒隣に印がつけられていた。
そのまま店の前に行き、ポーション瓶と木樽の描かれた看板のドアを開き、中へと入る。
「いらっしゃいませー」
中へ入ると、狐の獣人が頭を下げ、目を細める。
「あっどうも。」
こちらもつい、つられて頭を下げる。
「冒険者さんですね。今日はどのような御用で?」
「あぁ。昨日から冒険者になったので、泊まっている宿の女将さんからココを勧めて貰いまして」
「おや。こちらは【青亭】の。そうですか、あちらにお泊まりでしたらこちらも勉強させていただかないとですね。私は見ての通り狐の獣人のフィスと申します。以後お見知り置きを」
おススメの書いて貰った地図を見せると、そこに書いてあるサインを見て青亭と気付いたようで、またにこりと微笑むフィス。
「タクトです。今後よろしくお願いしますね。取り敢えず生活用品で足りなさそうな物と、依頼をこなす為の大きめのバッグと、野宿のセットが見たいんですが?」
「おぉ。そうですか。それなら良いものがありますよ。この前ベテランの冒険者が売ってくれた物なので、機能性もバッチリです。それと生活の道具でございます。左からタオル、歯ブラシ、コップ、ナイフセット、下着類一式。足りないものはございますか?そして野外活動での道具として、野宿でしたらこちらのセットをおススメですね。灯火の魔道具、外套、水袋、魔石入れ、小テント、解体ナイフ、携帯食料でございます。外套は、特に野営時の寝袋として昼間の日差しよけ、もちろん防寒具としても必ず1着はおもちください」
そう言われ並べられた物を見ると、足りない物としては流石に倉庫にあるお古は遠慮した歯ブラシに下着、野外活動用の腰に付けれる魔石入れと、外套、携帯食料などがあった。
さすがは冒険者を多く扱うニイナさんお薦めの商人だ。品揃えが素晴らしい。
「ではこちらを。」
「有難うございます。全部で10,000トールではございますが、ニイナ様のご紹介という事で6,000で如何でしょうか」
驚きの4割引き……。
「助かります」
ニイナさんは何者なのでしょうか。
実は先ほどの武器屋でも保存状態の悪いナイフを、500トールで握りの調整も込みで研ぎ直してくれると提案してくれましたし、此処でも……。
少し疑問を持ちながら、カードを石にタッチする。
「おやおや。タクト様はもしや知らないで、このサインを?」
どうやらまた顔に出ていたようです。
「サインですか?」
「これは驚きですね。という事はニイナ様がこの街でどういう方なのかも?」
どうやら師範に紹介してもらった宿は、ただの宿では無いようです……。
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