第31話おっさんのステータスカードと心優しき門兵
「グッ」
ブルーのタグを首から掛けた4人組の冒険者。
そのうちの先頭にいる腕に大きな傷のある男に、肩を掴まれ強引に振り返らせられると、突然襟元を持たれ力一杯横へと振られる。
それなりの防具を身につけた彼らは、一瞬目に入ったそのタグの色からDランクの冒険者なのだろう。
冒険者のランクは色が決められている。
上から
ギルドランク
S ブラック
A ゴールド
B シルバー
C レッド
D ブルー
E イエロー
F ブラウン
と続くその色を見れば冒険者のランクはわかるようになっている。
なので彼らはDランクで間違いないでしょう。
突然振られた体はバランスを崩し、床へと倒される。
「何を……!」
上半身を持ち上げたところで、左頬に男の拳がめり込んだ。
「がっ」
「はっはは弱え弱えなやっぱり。弱者は魔物でもねぇ野兎でも狩って満足してな!」
4人の冒険者に周りを囲まれ、別の男に蹴られ転がると周囲の男達にリーダーと思われる傷の男の前へと戻される。
他の冒険者は……
ただの冒険者の喧嘩だと、介入する気はなさそうですね。
なんとか体全体に力を入れ、次の暴力に耐えようとすると2階から大きな声が響いた。
「何やってんだ貴様ら!」
浅黒い大柄な女性が一喝する。
その声を聞いた男達は、その瞬間その人物が誰なのかを察知し顔を一瞬歪め、掴んでいた手を離し、依頼書を乱暴に掴み取り外へと出て行った。
居た堪れなくなり転がった荷物を掴むと、何者かは知らない女性に、助けてもらった礼にと会釈をし、自分も外へと出た。
「いたたたた。」
まだ頬がヒリヒリしますね。
ギルドの裏の公園の噴水の淵に座り、噴水の水をつけた布で頬を冷やす。
そして冷静になると先程までの自分がいかに何も考えていなかったかいやでも理解する。
「あー。全く。馬鹿ですね。」
とっさに身体強化するべきでした。いつつつつ……。
急な事というのはありますが、魔力循環を忘れる程とは……。
どうやら相当舞い上がってたみたいですね。反省です。
結局、冒険者ギルドの詳細なルールも何も聞けませんでしたね。
まぁタグも貰えましたし、身分証の表示も冒険者になってますから大丈夫でしょう。
初めての身分証。
『ステータスカード』を確認する。
名前 タクト・マミヤ
年齢 17
スキル (融合) 採取Lv1 魔法操作Lv1 棒術Lv1 ステータスカード
輝度 43
残高 220,000T
その他
冒険者 F
無事その他の欄に冒険者と表示されている。
そしてカードからも【仮】の文字が取れていた。
「まずはクーゲルさんに会いに行く事ですかね」
ギルドのある広場を抜け、外へと繋がる大城門の前に差し掛かる。
「おい!大丈夫か、にいちゃん」
街側の門に立っていた門兵に声を掛けられ止められる。
その視線と、指された指の先を見ると、服の胸の辺りに血が飛び散っていた。
あぁ。血が服についてたんですね。
「あっ大丈夫です。有難うございます」
「おう。大丈夫ならいいんだ。って頬も腫れてんじゃねえか。そっちから来たって事は、同じ冒険者にやられたな。ひでぇ事しやがる。にいちゃん見ねぇ顔だから新人だろ?ちょっと待ってな。」
そう言い一度詰所に入り、出てくると片手に見覚えのある瓶に入っている青い薬品を差し出した。
「あっ」
ポーションか そういえば持ってたな
液体が何かはわからないが、ポーションは持っていた。
腰につけていたポーションバッグの中からポーションを出すと顔へと振りかけた。
「なんだにいちゃん。持ってんじゃねえか。まあ冒険者なら当然か。早く着替えるんだぜ」
「はい。ありがとうございます。」
「それにしても……。にいちゃん錬金術師かい?」
おや?どうしてそうなるのでしょう?
「どうして私が錬金術師だと?」
「あぁ?そんなもんポーションの色の違い以外に何があるんだ?調合だとそんな薄緑色には、ならんだろう。調合の色はこんなかんじだからな」
そう言うと、手に持っていた薄い青色の液体をチャプチャプと横に振った。
そういえば師匠の作ったのも青色でしたね。勝手に『融合』だからと思っていましたが、『錬金術』に近い物でしたか。
「なるほど勉強になりました。有難うございます」
「おっおう。良いって事よ。気をつけるんだぞ」
優しい門兵に背を向け、貴族街側の門へと足を向ける。この国の全てが腐っているわけではなく少し安心した。
「すみません」
貴族街の城下町側の門兵へと声をかける。
「ん。お前は……。ちょっと待ってろ」
体格の良い門兵は口数少なくこちらを確認すると、門を開き声をあげた。
「クーゲル様!“仮”が来ました!」
「ヤフル!そんなに大声出さないでもいつも聞こえると言っているだろう!」
向こう側からクーゲルさんの声が響く。
しばらくするとクーゲルさんが姿を現した。
「相変わらずでかい声だ。待たせたな。身分証は作ってきたか?」
門の向こう側から顔を出したクーゲルが右手を差し出す。それにしても呼び方が“仮”っ……。まぁいいですけど。
「はい。おかげさまで。」
「ふん。その血。もうやられたのか。相変わらず冒険者というのは野蛮だな。まぁいい身分証は確認した。さっさと行くんだ」
一瞬だけ冒険者用の身分証を確認し。職業が冒険者であることを確認すると、クーゲルさんは再び貴族街側の門へと戻って行った。
その顔は少しホッとしたような顔をしていた。
(ありがとうございます。クーゲルさん)
心の中で礼を言い、門を後にした。
さてもう一度ギルドに行きますか。
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