第6話 おっさんの倉庫と3食メイド付き

 さて、どうやってこの城から出て行くか。

 その考えだけが思考を支配する。


 異様な盛り上がりを見せる関係者達は、なんだか狂気さえ感じる。


「あの。少しよろしでしょうか?」


 盛り上がりを見せていた部屋から、一切の音がなくなる。

 私が手を挙げ、発言を求めた事で全ての注目が一点に集まっていた。


 丁度いいですね。

 壁が崩れ、細かな石が落ちる音だけになった謁見の間に、声が響く。


「正直言って、私はこれから魔王なんて相手に出来るとは思いません。なんせ一般人以下なのでここで養ってもらう資格は無いでしょう。なので、召喚者だとこちらからは口外しないので、一介の冒険者として生活させて貰えないでしょうか。」


 かなり苦しいですが、裸一貫で出て行くくらいじゃないと厳しいでしょう。


 まったく勝手に召喚しておいて、ホント迷惑な話です。


 まっすぐ王を見ながら発した言葉に、すぐさま反応した。


「ふむ。たしかにそれが良いのだろうな。」


 覇気の無い声で、呟くように答える王。

 しかし、それはどこか思惑通りという表情にも見える。


 そして、その怪しい瞳のままゼンに視線を送る。そして視線を向けられた王に近付き、耳元でなにかを囁かれると、ゼンは一度大きく王に頷いた。


「勇者ヒジリと共に来たタクトよ。そなたをこれより2週間の準備期間の後、一切の関わりを断ち平民としてこの城から出て行って頂こう」


 よしっ!

 最高の条件じゃないですか。あちらからの干渉は一切なし。更に普通に働けば賃金も稼げる。

 ん〜。逆にここまで素直だと怪しすぎますね。


「ふん。疑っておるな。こちらとしてもタクトに手は出せぬのだよ。」


「どういう事でしょう?」


 そう聞かれ、ゼンが口を開いた。


「それは、過去に勇者を暗殺した国が、滅びた事から呼び出した勇者をどの様な形であれこちらの意志で殺すことなど禁忌とされたのよ。さらに巻き込まれての召喚など前例がない。逆に手が出せぬよ」


 なるほど、昔の教訓という奴でしたか。

 ここまで律儀に守ろうとするとは、勇者の暗殺は未遂も含め何度かあって、その度に痛い目に遭っているようですね。

 

どうやら、あちらからの刺客で命を落とす事はなさそうです。それは僥倖。


 まぁ向こうさんからしてみれば、輝度43のなんの後ろ盾も教養もない男が、生き残れる程甘くないのでしょう。

勝手に死んでくれれば御の字と言ったところでしょうか。


「分かりました。それならば2週間の準備の後、この城から出て行くとしましょう」


「まぁ精々俺が魔王を討伐するまでは、生き残るんだな。なんもしなくてもあっちの世界には返してやるよ。1人分でも俺は帰る気がないからな。お前にやるさ。」


「それは楽しみですね。誠道くん。頑張ってくださいね」


「はぁ⁈誠道くんじゃねえだろ。もう歳も変わらねえし立場は俺の方が上だ。セイドウさん。いやヒジリさんだなこの世界なら。今後俺のことはヒジリさんだ。わかったなタクト」


 結局その後謁見は終わり、騎士に案内されるまま部屋へと案内された。


「こちらでございます」


 扉を開くとそこは、ホテルのスイートルームのような広さと豪華さの一室だった。

 キングサイズのベッドに高級なソファー。そして傍には…


「ヒジリ様付きのメイドを勤めさせていただきます。メリヤです。よろしくお願い致します勇者様」


 そう、若く美しいメイドが控えていた。

 ここからこの豪華な部屋で、3食メイドうふふ付きの生活を送るのだ。


 そして、誠道くんと別れ先程と同じように騎士についていく。


 客室を離れ、階段を降りる。そして厨房を通り過ぎ、裏に続くドアから外へ。


 無言のまま騎士の後について行くが、部屋の前にどこかに行くんでしょうかね。


 そして、裏に広がる森のような裏庭の手前で騎士が止まった。

 

そこには、木造の平屋の倉庫がポツンと建っていた。そう倉庫だ。いや物置と表現すべきだろう。

 木が腐り落ち、隙間が所々にあいている。


 はい。何となくわかっていましたけどね。

 私が養わなくてよいといったのですから。


 あの後この国と結んだ契約は6点


 ・自ら召喚者と、召喚者と知らない第3者(国の関係者以外)に口外しない。

 ・国からの資金援助は1回目以降放棄する。

 ・国は国の意志でタクト・マミヤの生命を脅かさないものとする。

 ・2週間の準備期間の後、平民として追放される。

 ・2週間の間は居住場所は国が無償で貸与する。

 ・2週間の間は生命維持に関わる最低限の物資の供給をする。

 ・2週間の期間内であれば、戦闘訓練への参加を許可する。ただし指導はこちらで紹介する者との1対1とする。

 ・以上の条件を互いに承諾したものとし、魔法契約を実施するものとする。なおこの契約は常にタクト・マミヤと国との契約であるものとする。


 そう。居住場所の程度については決めていないのだ。

 つまりは、こんな倉庫でも雨風がしのげ、寝れれば居住可能。ということなのだろう。魔法契約は絶対遵守これが違反なら今頃王か、この倉庫を居住場所とした者に裁きが下っている頃だろう。


 王と直接契約を結ぶと、王の暗殺もやりようによっては可能ですからね。あくまで契約者は国であり、裁きを受けるのはそれを計画したものと承認したもの、そして実行した者となります。よく考えていますね。


 さぁこれから2週間。しっかり準備をしましょう。


 まずは……。えっ?食料はこの堅い保存食のパンだけですか?他の食料は自分で調達ですか。そうですか。


 これは生命を脅かす云々にはならないんでしょうか?


 まずは自給自足ですか。前途多難です。

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