第4話 おっさんの能力と豹変する後輩

 チリッ


 ん?光りましたか今?いやこの周りの反応は、間違いなく光ってたみたいですが……。


 はい。予想通りです。


「おっおめでとうございます。これでヒジリ様、タクト様はこの世界に登録されました。ステータスカードと唱え、ステータスをご確認ください」


 周囲の期待の入り混じった空気が一気に冷める。

 ホーエンもだいぶ動揺しているようですね。


 はぁー。どうやらこれは確定的のようです。


 取り敢えず。


「「ステータスカード」」


 2人揃ってステータスカードと唱えると、目の前に宙に浮くクレジットカード大のカードが現れる。


 名前 ヒジリ・セイドウ

 年齢 17

 スキル 聖剣 ステータスカード

 輝度 421


 名前 タクト・マミヤ

 年齢 17

 スキル 融合 ステータスカード

 輝度 43


 手に取ったお互いのカードを見比べる。

 若返ったとは分かっていましたが、まさかの17歳ですか。


 若返るとこう、若さ故の高揚感があるもんだと思いましたが、心は中年のままなんですね。


 心は中年。体は青年。ってアニメありましたね。あぁ少し違いますか。


 まぁ誠道くんは、心までしっかり若返っているように見えます。判断力や思考、精神年齢なんかも完全に高校生って感じです。


「ステータスカードを見せて頂いて、宜しいですかな」


 ホーエンに従い、ステータスカードを渡すと、それを一目見たホーエンの表情が大きく二度変わった。


 その表情は喜びであり、畏敬の表情である。

 その表情は怒りであり、侮蔑の表情である。


「ヒジリ様。輝度421!」


「「「「おぉーーーーー!!」」」」


 周囲が、一斉に沸き立つ。


 ザワつく周囲の興奮があたりを支配するなか、ホーエンは満面の笑みを誠道くんに向けた。


「ヒジリ様。これは凄いですぞ。輝度というのはすなわち強さ。現行能力と戦闘潜在能力の高さを表しております。更に鍛えればまだまだ強くなりますぞ!ちなみに前勇者様の初期値は約300。つまりはヒジリ様は前勇者様より強くなるという事なのです。更には、スキル『聖剣』。これは勇者固有のスキル。紛れもなくヒジリ様は勇者様です」


 それは沸き立つはずです。強さを表すという輝度が421。まさかの前勇者越えですか。


 誠道くんも心なしか、背筋が伸びて表情が明るいですね。


 この国は、一体どれだけの勇者とやらを召喚しているんでしょう。


 使い捨て感が凄いですよほんと。


 それにしても……。


 まずいですね。この流れは。


「タクト様……。」


 そしてフッと消える周囲の声のなか低く響く重い現実。


「輝度43…です」


 おい!騎士団長。

 あからさまながっかり感はやめて欲しい。なんか面倒くさくなってませんか?


 再びおこる周囲のざわつきも、ハズレか。酷いな。など、期待外れ感が占めていた。


「まあ戦闘潜在能力は、所謂素質ですからな。低くても現行能力は成長するが……ちなみに一般兵士でも輝度70以上。43というのは一般兵士以下。まぁ戦いの才能はないですな……。」


 は〜。

 完全な巻き込まれ確定です。しかも中途半端に弱い……。


 これがエラー表示や、0に近いくらい弱ければ成り上がりの始まりだったんですが。


 戦いの才能がない。


 それはそうでしょう。こちらは生まれてこの方、喧嘩とは縁遠い青春時代を過ごし、人数合わせの空手部に在籍してた以外は、出世に何もひっかる事なく過ごしてきた。完全インドア派中年事務員ですからね。新進気鋭の彼とは大違いです。


 あーでもこれは本当に不味いですね。

 明らかに、王様の表情が変わっています。ハッキリ言って、こいついらねぇ。と言った感じでしょうか。


 道端のゴミを見るようなそんな眼が向けられる。


 処分される前に、出て行く方向で考えないとですね。


「ちょっとちょっと。マミさん。これやばくない?俺が勇者でそっちが普通以下って……。あれ?俺へ・・の勇者召喚に巻き込んじゃいました?そう言えば、あの時の光も俺中心だったような……」


 余程嬉しいのでしょう。

 自分への反応と私への反応を確認し、勝ち誇った表情を誠道くんが向けてきます。


「まぁ大丈夫ですよ。俺が元の世界に戻すんで」


 そして、そう言った瞬間。

 彼の表情が変わりました。それは何の敬意も感じられない。完全なる格下を見るような目付き


「だからさ。邪魔。しないでくれねえか?それともまた・・俺の補佐役します?間宮。くん」


 はぁ。

 事務員は営業の補佐ですか。そうですか。


 随分と言ってくれます。


 その辺は、久野木くんの指導は受けなかった。

 いや受けてはいたんでしょうが、受け入れなかったみたいですね。


 彼は全く逆。事務員が裏方に徹してくれているから、全力で営業に力を注げる。そういう考えの持ち主でしたから。


「補佐役って。久野木課長は、そういう言い方は嫌っていたはずですが?」


「はっ?何言ってんの?事務なんて使ってなんぼでしょ。金稼いでるの俺らでしょ。あんたらの給料は俺らが稼いでんだから。使えるものを上手く使うから優秀なんっすよ。仲良くするのも気持ちよく俺の補佐やってもらうためでしょ。」


「なんと言う事を……」


「まぁこれで分かったでしょ。俺が勇者であんたが雑魚。これがこの世界のシステムが下した答えって事でしょ。この世界でも上下関係は変わらないって事だな」


 まったく。

 ここまでの男でしたか。久野木くんが主任以上に推薦しないはずです。


 彼は知らないでしょうけど、課長候補に彼は上がっていませんでした。


 流石は久野木くんです。彼のこの性質を理解していたんでしょう。


 おや。部屋にローブの男が3人駆け込んできました。


 これは何かありそうですね。

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