ママチャリだけで無双できる少女。できれば普通に恋がしたい

古城ろっく@感想大感謝祭!!

第0話 プロローグ(これまでのあらすじなども有り)

「遅刻! 遅刻でござる!」

 緑色のセーラー服をなびかせて、一人の女子高生が走ってくる。

 朝食を落ち着いて食べる時間も無かったのか、口には食パンを咥えて、ものすごい勢いで走っていく。


 ――一般的に『ママチャリ』と呼ばれる自転車で、

 それも、時速30キロという、信じられないほどの速度で。


「まだ諦めるのは早いか……ここから学校まで、およそ20キロメートル。残された時間はあと40分。まだ間に合うでござる」

 食パンを咥えているにしては、とても流暢な独り言である。

 これほどの速度で自転車を漕いでいるのにもかかわらず、彼女の呼吸は一切乱れていない。肺活量に余裕さえ感じるほどだ。

 交差点に差し掛かった時、ブロック塀の角から人が出てきた。ブレザーを着用しているので、おそらく他校の男子だろう。

 その出会い頭の事故は……


 ビュ――――ン!!


 彼女の圧倒的な速度により回避される。

 ぶつかる暇さえないほどの速度ですっ飛ぶママチャリ少女。入念にメンテナンスされた自転車は、音すら立てずに駆けていく。男子生徒は、目の前を誰かに横切られたことすら気づかない。




 30分後――

「ま、間に合ったでござるな」

 駐輪所にママチャリを止めた彼女は、そのまま昇降口へと走っていく。さすがに咥えていた食パンは食べ終わっていた……か、もしくはどこかへ落としてきたか。

 シューズロッカーが並ぶ昇降口。その角を曲がって、自分の上履きがある扉へ手を伸ばした、その時だった。

「痛っ!?」

 誰かとぶつかった。男子生徒だ。

「ユイ。お前、いきなりぶつかってくるなよ。ビックリするだろ」

「す、すまぬ。九条殿」

「――ふん」

 不機嫌そうに鼻を鳴らした彼は、すたすたと教室へ向けて歩いていく。そのタイミングで、チャイムが鳴り始まった。

「む、いかん。せっかく間に合いそうだったのに!?」

 まだ予鈴のはずだ。始業まではあと5分ある。

 すぐに上履きに履き替えたユイは、さきほどの彼の後を追うように教室へと入っていった。



――――――――――――



 ここまでお読みいただきありがとうございます。作者の古城ろっくです。

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 それでは、ごゆっくりお楽しみください。

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