向日葵畑の2人
水縹❀理緒
向日葵畑の2人
月が眠るある日、2人の子供が産まれました。
淡い水色の瞳の子 ユキと、ワインレッドのような瞳の子ノア。
それはそれは可愛らしい子供達でした。
ですが、彼らは周りと違い
片方は、ある程度の幸せを感じると死んでしまい
もう一方は、ある程度の不幸を感じると死んでしまう
そんな呪いにかけられた体質を持っていました。
そんな2人が出会ったのは、暑い昼下がり。鮮やかに咲き誇る向日葵畑の中でした。
『……キミはだぁれ?』
『…こんにちは。キミもだぁれ?』
ユキとノアは両親に家から中々出してもらえず育った為、家族以外では初めての人間でした。
その夜、お互いに、今日の出来事を両親に話す事はありませんでした。
また、あの向日葵畑で。あの子は来るかな。
枯れる前に、もう一度。
ユキは布団の中で考えていました。
彼女は、牢獄の中で育てられました。
床は冷たく、何も与えられず、口答えをすると鞭で叩かれました。
感情を殺しながら生きてきた為、表情はガチコチ。今のこの気持ちをどう言えば良いかも分からない。
『でも…嫌じゃないや。今日はゆっくり眠れそう』
一方ノアは、沢山欲しいものを与えられながら育ちました。ですが、絵本の中で出てくる『友達』というものだけは与えて貰えず、ずっと退屈な日々を過ごしていました。
『やった…初めての友達が出来た』
2人はゆっくりと夢の中へ落ちていきました。
2人にとって家から出る事が出来る日は
向日葵畑が見頃の時だけ。
だから昼下がりの、とても暑い畑の中。
ひっそりと会う事が2人の約束になりました。
年に数回の約束、それだけでも嬉しかったのです。
ノアは、沢山の絵本や遊び、食べ物を、
ユキは、自分の家の事を話しました。
そしてお互いに、様々な感情を知りました。
会う度に傷が増えるユキを見て、ノアは
思うようになったのです。
『ユキはこのまま消えていってしまうのでは』と。
沢山の絵本の中で、大切な人が亡くなる物語を見たことがあります。
『…大丈夫、ユキは今ここにいる』
会えない日は寂しいですが、会える日を考えると、苦でもありませんでした。
やがて、2人はお互いが大切な存在になり、会える事が『幸せ』なのだと気づきました。
そして…数年後の約束の日。
ユキとノアは、向日葵に守られながら、永遠の眠りにつきました。
ここでの出来事は、今聞いてるあなたと、この2人だけの秘密…
向日葵が鮮やかに咲き誇る頃、2人は手を繋いで笑っている事でしょう。
向日葵畑の2人 水縹❀理緒 @riorayuuuuuru071
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます