第57話・サーフェリアスの告白


「サーファリアスさま!」


 二年ぶりに会う彼はやや、やつれたように見えた。一層凜々しさが増していた。皇帝夫婦である両親達の手前なのに思わず駆け寄っていた。サーファリアスは目を見張り、それを見て両親達が苦笑を浮かべていた。


「来たか。マーリー。こちらへ」


 陛下に呼ばれてサーファリアスから離れ、両親の隣に回る。彼の元にいたときは保護された伯爵令嬢だったのに、今は皇帝の娘であることがもどかしい。

そんな態度が透けて見えたのか、サーファリアスが抗争状態にあったアマテルマルス国への救援のお礼を言い終わった後、父から二人で積もる話もあるだろうとその場に二人だけ残された。


「マーリー」

「サーファリアスさま」


 人目がなくなったことで、サーファリアスはツカツカと歩み寄ってくると抱擁してきた。


「その指輪。してくれているのだな?」

「あなたに求婚された日から肌身離さず持っていました」

「ありがとう」


 彼がわたしの手に触れて指輪の存在に気がついた。彼が求婚の折にくれたものだ。手放すなんてことはあり得ないと言ったわたしに彼が微笑む。


「あなたは私の手の届かない存在になってしまった。他の男達に求婚されて心が揺らいでないかと不安になった」

「わたしも不安でした。あなたがジェーン女王の側にいると聞いてわたしのことを忘れてしまったらどうしようかと」

「私の気持ちは揺るがないよ。あなただけだ。でも、あなたに話しておかなければならないことがある」

「何でしょう?」

「子供が出来た。あなたと婚姻するとあなたは子持ちになる。それでも構わないだろうか?」


 彼は真剣な顔で言った。わたしは耳を疑った。


「え? 子供?? どなたの?」

「私の子だ」


 彼の告白に愕然とした。サーファリアスがわたしと離れている間に子を成していた? 相手は誰?


「母親は?」

「母親は当然、あなたとなる」


 ハッキリ言い切るサーファリアスに迷いはなかった。相手の女性とは体だけの関係だったと言いたいのだろうか? 彼がそんな人とは思いたくも無かった。


「サーファリアスさま。見損ないました」

「マーリー?」

「酷い。酷いですわ」


 離れていた二年間。サーファリアスのことを信じていた。疑いもしなかった。それなのにわたしに隠れて浮気していたことになる。子供が出来たってどうして平気な顔して言えるの?

 相手の女性とはどうなっているか分からないけど、その相手の子供をわたしに育てさせるなんて非道だ。こんなにも女心の分からない人だったとは──。

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