第48話・ルイ陛下の死
「マーリーは勉強家だと聞いたが、読書は好きか?」
「大好きです。以前、アンバー家の書庫に夢中になって読みあさっていたら、サーファリアスさまが心配して呼びにきたくらいです」
「そうか。ここはおまえのものだ。好きに使うがいい」
「ありがとうございます。お父さま」
「何が好きか分からないから片っ端から取り揃えた。ここに無いもので何か読みたい本があるなら言いなさい。すぐに用意させる」
自分の為にどんな本でも用意させるという父が頼もしく、またそのようなことで頼ってはいけない気もした。取りあえずお礼を言うと、今度は自分の部屋へと案内された。
オウロからはアマテルマルス国の情勢について伝え聞いていた。サフィーラ帝国からは救援を送ってくれているらしく、宮殿には早馬で情報が寄せられてくる。
こちらの国に着いて早々、王都をシーグリーン侯爵らが取り囲んだと知らされていたこともありサーファリアスの安否が気になって仕方なかった。
「お兄さま。ルイ陛下やサーファリアスさまは大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ」
そんなやり取りが何回か続いたある日、ルイ陛下の訃報が知らされた。
「ルイが死んだだと?」
「……!」
アマテルマルス国からの使者の知らせにオウロと二人で呆然とするしかなかった。使者の話ではすでにルイ陛下の葬儀はひっそりと行われ、新しく王位に就いたジェーンが教皇との話し合いに応じることになったのだと聞かされた。
あの溌剌とした陛下が教皇との戦いの最中で命を落とした? 公爵令嬢のジェーンが女王陛下となった?
アマテルマルス国の情勢は目まぐるしい。ジェーンはルイ陛下とは従姉弟同士で母親が王妹だ。彼が亡くなった場合、王位に就く可能性はあった。でもあの淑女の鏡とされていた彼女が王になるなど想像もしていなかった。
──サーファリアスの側にいるのはジェーンだよ。ふたり仲良くやっているんじゃないかな?
不意に仲良くしようと言い寄って来たギルバードの言葉を思い出した。彼はこうなる事を予想していたのでは無いだろうか?
二人連れそう姿を想像して胸が疼いた。女王陛下と宰相閣下。サーファリアスは王位に就いて間もないジェーンを補佐しているに違いない。
「妬けるか? 大丈夫だ。あれはおまえがいるのに他の女性にちょっかいを出すような男じゃ無い」
「でも惹かれるのは仕方ないですよね?」
「自信がないのか? 求婚されたんだろう?」
「それはそうですけど……」
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