第47話・父親からのプレゼント
「陛下、そろそろ中へ入られては如何ですか?」
そのまま放っておけば二人の世界に突入しかねない二人だ。さすがにオウロが見かねたようで言ってくれた。
そうだなとプレシオーザが反応しわたしへと手を差し出して来た。
「さあ、マーリー」
エスコート? それにしては手の向きが違うと思っていたら反対側からも母が手を差し出してきた。ふたりと手を繋ぐ形となる。
「こうして親子三人、手を繋いでみたかったのだ」
父のプレシオーザが笑みを浮かべて言う。十六歳にもなって両親と手を繋ぐだなんて何だか照れくさかった。でも悪い気はしなかった。
こんなこと望んでも幼い頃は叶えられなかったものだ。無い物ねだりで継母が妹らと手を繋いでいるのを見て羨ましく思ったものだった。
それが今こうして叶った。
「マーリーが帰ってきたら色々と出来なかったことを一つずつ叶えていこうと、リーリオと話していたのだよ。これはその中のまず一つだ」
そう言って微笑む父は優しかった。
大理石で出来た宮殿の壁や廊下に鮮やかな彩色の光が差し込んでいた。色ガラスで装飾された窓に陽光が差していた。
「ステンドグラス?」
「そうだ。我が国は幾つか鉱山を持っていることで知られているがガラス細工でも有名だからな。様々な分野で職人達が活躍している」
「置物やコップにお皿、時計とかですよね?」
「良く知っているな?」
「お世話になったアンバー家で見かけたものですから」
「アンバー家というと、おまえがいたアマテルマルス国の五宝家の一つだったか?」
「はい。そこのご当主さまにはよくして頂きました」
「いずれアンバー家の当主にはお礼を言わないとな」
サフィーラ帝国産のステンドグラス製品は精密な装飾が有名で、アマテルマルス国では城一つ購入出来るほどの高値がつくものだった。高位貴族でないと購入は難しいと講師の先生方から聞いたことがある。
アマテルマルス国で所有しているのは王家と五宝家くらいなものだとも。
そのステンドグラスの窓を通して差し込まれる光は明るく柔らかかった。
「綺麗……」
「気に入ったか?」
「はい」
「それは良かった。プレゼントがある」
そう言って連れてこられたのは城の奥にあった一室で大きな図書室だった。びっしりと埋め尽くされた本棚の数々。何千、何万とあるかしれない書庫の数。何よりも驚かせられたのは窓で、廊下とは比べものにならないほどの大きなステンドグラスの天窓が付いていた。
父からここを贈ると言われて驚いた。
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