第46話・こうして会えるとは思いもしなかった
「マーリー」
「お母さま?」
皇帝に抱きしめられている背後から懐かしい声がした。声をした方を見ればわたしに良く似た女性と目が合った。忘れられるはずもない母だった。
「ごめんなさい。マーリー。あなたを置いて出て行ってしまって……」
「お母さま。お会いしたかった……」
母が出ていった時の真相をオウロから教えてもらっていたこともあり、母に対する批判的な気持ちは消え失せていた。
母はあれから9年も経っているのに、思い出の中の姿と遜色なかった。ラベンダー色の髪に苺色の瞳。相変わらず美しく若々しい。
その母が近づいてくると長いこと母を慕っていた幼い頃の気持ちが蘇ったように恋しい気持ちが蘇ってきた。
「お母さま」
母へと手を伸ばすと、皇帝がわたしと母を囲い込むように抱きしめなおした。三人での抱擁。たったそれだけの事なのにわたしはこの二人と家族なのだと信じる事が出来た。胸の内が温かなもので満たされて涙が出そうになる。
「マーリー。良く来た。無事で良かった」
「こうして会えるなんて思いもしなかったです。お父さま。お母さま」
「マーリー」
わたし達親子が三人で抱き合っている姿をオウロ始め、皆が黙って見ていた。使用人のうち何人かはもらい泣きしていたようだ。
「マーリーの顔立ちはリーリオによく似ている。母親に似て美人だ」
「マーリーの瞳はあなたに似ているわ。父親のあなたに似て聡明な目をしている」
「マーリーは優しい子に育ったと聞いているぞ。そこはリーリオに似たんだな」
「この子は幼い頃から賢かったわ。そこはあなたに似たのね。プレオ」
皇帝の名はプレシオーザとここに来るまでの間にオウロからは聞いていた。プレオと言うのは愛称らしい。両親がお互いにわたしの良い所をあげて、そこはきみに似たんだよと言い合っているのを聞き、二人の仲の良さが知れた。まるで恋人同士のようだ。端で見ているとわたしのような十六になる娘がいるとは思えない若々しい二人でもある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます