第10話・噴水公園デート
サンドラにドレッサーの前に連れて行かれ化粧を施された後に髪を結われ、下着姿になった所に他の使用人さん達も加わってコルセットを締められたと思ったら、あっという間にドレスを着せられて気がつけば姿見の前に立たされていた。
「さあ。出来ましたよ。如何ですか? お嬢様」
他の使用人達もいるので、サンドラの口調は侍女仕様に変わっていた。姿見を見て驚く。そこには水色のドレスに身を包んだ美しい女性がいた。
「これがわたし……? 別人みたい。凄いわ。まるで魔法をかけてもらったみたい」
「よくお似合いですよ」
「お綺麗ですよ。お嬢様」
今までじっくり鏡で自分の姿を見たこともなかったし、化粧して身なりを整えることなどしたこともなかったから別人のようで驚いた。使用人達からも賛美の声が上がった。
サンドラがにっこり微笑んでいた。
「きっとサーファリアスさまも驚かれますわ」
ドアのノック音に使用人達が期待した目を向けた。
「支度は出来たか?」
「あら。待ちきれないようですわね」
サンドラが言った側からと言いながらドアを開けると、群青色の襟付きのジャケットに淡い紫色のベストを合わせ、ジャケットと同じ色のキュロッドを履いたサーファリアスが立っていた。
「サーファリアスさま」
「……」
言葉もなく押し黙るサーファリアスを見てわたしも息を飲んだ。あまりにも素敵すぎて隣に立つのが気恥ずかしい気がする。サンドラがクスクス笑う。
「サーファリアスさまったら、あまりにもマーリーさまがお美しいので見惚れてしまったようですよ」
サンドラの言葉にサーファリアスが「悪いか」と応え、それを聞いてますます恥ずかしくなった。
「綺麗だ。マーリー嬢。まるで泉の妖精のようだ。これは気を引き締めないといけないな。心まで持って行かれそうだ」
「ありがとうございます。でもそのように見つめられると恥ずかしいです」
サーファリアスにエスコートされて馬車に乗り込む。目的地に着くまでサーファリアスとはたわいも無い話を交わしていたが、内心ドキドキして落ち着かなかった。
噴水公園は王都の外れにある。今では一般公開されているので身分問わず誰でも立ち入るようには出来ているが、平民には乗り物がないと簡単に行ける場所でもないせいか来客もまばらだった。
わたしは初めて来たので何もかもが物珍しかった。九年間、外出したことすらなかったのでこうして着飾って出かけられることが嬉しかった。
「ご覧。薔薇が満開だよ」
サーファリアスと一緒に薔薇園に向かうと、薔薇のアーチに出迎えられる。
「まあ、綺麗。入り口からして薔薇がいっぱい……」
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