第5話 俺の魔力

 俺は今日も朝早くから練習をしていた。

 女から貰ったこの石眼を両手で強く握りしめて今までに経験したことがないくらいに集中していた。

 

 集中力を高めるにつれ汗の滴りが多くなってきた。そして、俺は何も反応しないこの石眼に段々と不安感を抱くようになり、もうこいつを売ってやろうかとも考えてしまっていた。


 いやダメだ俺。耐えろ。耐えろ。

 

 より集中力を高めるために、座禅を組み直し、無心にこの石眼に集中力を注いだ。すると、段々とこの眼から温かさを感じた。よし、あともう少し!


 「ねぇ、ねぇ。アンッ」


 「邪魔じゃァァッゴラーッ!!」


 「グハーッ!」


 俺は話かけてきた奴目掛けて思いっきり石眼をぶん投げた。すると、地面に顔面から倒れた奴よく見ると昨日の女であった。

 俺はあともう少しの所で女に邪魔されて全てが無駄になり、拳を強く握りしめて憤慨していた。この野郎オォ。

   

 女はとても素早い動きで飛び起きた。


 「アンタいきなりなにすんのよ!!」

  

 「オメェが邪魔したんだろうが!」


 「それは、悪かったわね。けど、いきなりレディーに石をぶつけなくてもいいじゃない!!」


 女は頬を大きく膨らませて帰って行った。もう来んじゃねぇよと思いつつ、再び石眼に俺の全ての集中を注いだ。段々温かくなる石眼、そして、次第に薄く青い光を帯びていく石眼。赤に変われ。赤に変われ。色の変化を期待はしたが何も変わらなかった。


 俺はスッと立ち上がり石眼を強く握りしめて、道具屋へ向かった。


 「いらっしゃいませ!」


 店のカウンターには金装飾のいかにも儲けてますよ。と言わんばかりのおっさんが居た。そして、俺は握り締めていた石眼をカウンターの上にドンと置いた。


 「おっさんこれいくらで売れる?」


 そのおっさんは石眼を見た瞬間、目を大きく開いたが咳払いをして動揺を抑えた。


 「お客さんコイツァかなり安いでっせ。だいたい75Gくらいかな、、、。」


 おっさんは俺の表情をずっと確認していた。俺は呆れたような顔をした。すると、おっさんは俺の表情を見て動揺した。


 「お、お客さん。なら200Gでどうでしょう。」


 「もういいよおっさん。他の店の方がもっと高く買ってくれるから。」


 俺は後ろを向き店の入り口に足を進める。


 「待て!いや待って下さい旦那!2500Gでどうでしょうか」


 まだ俺はいけると思い、そのまま足を進める。


 「じゃ、じゃあ。5700G!」


 いきなり跳ね上がった価格に俺は動揺したが、そこで俺はまだまだ足を止める気は無かった。すると、店のおっさんはこっちに向かって走ってきて、俺の足を掴んだ。


 「旦那!頼む!そいつぁ中々手に入れることができない!10.000G!」


俺は首を横に振る。


 「、、、15.000!」


まだまだ俺は抵抗する。


 「100.000G!!」


 俺はいきなり跳ね上がった金額に動揺して、そこで取引の交渉をした。おっさんの顔を見ると鼻水を垂らして泣いていた。

 ちょっと悪いことをしたかなとおっさんに罪悪感を抱きつつも、大量のお金が入った袋を家に持ち帰った。


 「富成お帰りなさい。エェッ!!」


 母さんは大金を抱えた俺を見て腰を抜かしてしまった。俺は無言で階段を上がり自分の部屋へ向かった。

 俺は抱えていた大金を置き、壁に掛けてあったカレンダーを見て残り3ヶ月まで迫った試験に不安を抱くのであった。



 

 


 

 


 

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