第6話 渾身の一撃
俺の一日のスタートであるゲームのログインをした。もはやこれが自分の
大金を手に入れた俺はバイトを当分の間はせずに済んだが、狩人検定までの日が刻々と近づいていたので、遊んでいる余裕はなかった。
俺は部屋の床がめり込むくらい重い弓を持っていつもの練習場所へ向かった。すると、いつもの女がそこに居た。そして、俺と目があってしまった。
「あら、奇遇ね。アンタも練習しに来たの?」
俺はこいつがヒロインとは認めたくもなく、昨日の件もあり無愛想な態度で無視をした。そして、女は反応しない俺をみてムスっとしているようだった。
「アンタの今の状態じゃ狩人5級の資格なんて取れる訳が無いわ!無理よ!」
「だから今から練習するんだろうが、俺に話かける余裕があったら練習したらどうだ?」
俺が女にかなり強く言い返すと、女は頬を大きく膨らまして黙り込んだ。
俺は女と話している余裕が無かったので、早速的に目掛けて弓を構えた。そして、昨日石眼に集中力を注いだやり方で、この弓にも集中力を注ごうとした。それにしても重い。
弓が重すぎて集中をと保つことができなかった。
俺は弓を地面に置き深呼吸をしてから再度挑戦した。フゥゥ、スゥゥッ。
息を止めて弦を引く。
段々と自分の魔力がこの弓に吸い取られていくのを感じた。そして、自分の今できる限界まで集中をこの弓に注いだ。
最大限まで集中を弓に溜めて矢を放った。すると、周りの雑音が消されて、音を立てることなく矢は物凄い速さで的を貫き、町の壁までも貫通した。
そして、音は遅れて聞こえた。俺の矢は音を置きざりにしたのだ。
矢を放ったあとの疲労が凄く、視界がぼやけていきその場に倒れてしまった。
「アンタ大丈夫!?」
女は俺のそばへすぐに駆けつけてくれたが、もう声が聞こえなくなり、暗闇へと意識は落ちていった。
ここは何処だ?、、、俺は物凄いフカフカのベッドに横たわっていた。
よく見ると横にさっきの女が居た。
「良かった。無事みたいね。それにしてもさっきのアンタが矢を放った時は凄かったわ。かなり見直したわ。あの威力ならかなり上級狩人が放つ威力だわ。」
俺をベタ褒めしてくれることは嬉しかったが、何よりも血の繋がりのない他人である俺のことを心配してくれていたことが何よりも嬉しかった。
「女。ありがとな。俺今までお前のこと大嫌いだったけど、今日で好きになった。」
女は軽く微笑んだ。
「私もアンタのこと大嫌いだったけど、不真面目なアンタが今まで練習を必死に頑張る姿が格好良かったわ。てか、女って何?私はパンモロ=ティール自己紹介が遅くなったけど、ここではかなり有名よ。」
「パンモロ、パンモロ。もしかして、パンモロ家の人間か!?」
パンモロ家とはこの村で一番有名な貴族であった。
「えぇ、そうだけどアンタの名前が知りたいわ。」
「俺は西木富成。」
「へぇー。変わった名前ね。じゃあ富成って今度から呼ぶようにするわね。私のことはティールって下の名前で呼ぶことを特別に許可するわ!」
パンティーは誇らげに自分の名前を語っていたが、かなり彼女も変わった名前で、名前だけでいじられるのではないかと心配になってしまった。
パンモロティールは必然的にパンティーと呼ばれるのは致し方ない。
俺はそんな彼女の名前でクスクスしていると、彼女はかなり怒っていた。
「何がおかしいの?? 私はあのパンモロ家の次期頭首なのよ。もう回復したらすぐにここから出ていきなさい!!」
パンティーは頬を今まで以上に膨らませて怒った表情のまま部屋から出ていった。
恐らくパンモロ家の頭首として、パンモロ家を侮辱されたと思い怒ったのだろう。
俺はそんなつもりは一切なかったのだがと思いつつ、高い天井を見て今後のことを考えるのであった。
魔王様。初めの村へ来るのはやめて下さい。 kuroodin @kuroodin
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