第6話 建国の父達の時代 その3

4代、5代はジェファーソンの弟子


【第4代 ジェームズ・マディソン】 民主共和党(1809-1817)2期


 バージニア州。大農園主の長男として生まれる。プリンストン大学卒。バージニア邦議会議員を務め、ジェファーソンの弟子として知られるようになった。

 憲法制定会議では、ハミルトン、ジョン・ジェイらと共にフェデラリストとして憲法草案の大半を起草した。当初ハミルトンの連邦派に属したが、財務長官のハミルトンの政策と袂を分かち、ジェファーソンの民主共和党創設に参加した。この党は連邦党の主要政策、特に合衆国銀行とジェイ条約に反対した。ジェファーソンのもとでは国務長官を勤め、ルイジアナ購入など2期8年を支えた。そしてジェファーソンに後継として推薦される。


 大統領時代の危機は1812年の米英戦争*であった。首都ワシントンが英軍に攻め込まれ、ホワイトハウスを焼かれバージニア州に逃れるという事態が発生した程である。この戦争をきっかけにマディソンは国を守るために強い中央政府の必要性を認識するようになり、合衆国銀行、より強い海軍、および常備軍の必要に舵を切った。


*資料 米英戦争(1812~4)

イギリスと植民地であるカナダ及びイギリスと同盟を結んだインディアン諸部族と、アメリカ合衆国との間でおこなわれた戦争である。インディアン戦争、第2次独立戦争とも言われている。激しく抵抗するインディアンたちの背後でイギリスが扇動していると考え、根本的解決のためにはイギリスとの戦争やむなしと考えた。


 ナポレオン戦争に掛かりきりになっていたイギリスの間隙を突く形でアメリカからの攻撃で始まった。長引くことを恐れた両国は年末にはガン条約を結んでアメリカに有利な内容で講和した。この戦争の結果として、戦争中にイギリス商品の輸入がストップしたため、アメリカの経済的な自立が促され、アメリカ北部を中心に産業、工業が発展した。このため米英戦争は、政治的な独立を果たした「独立戦争」に対して、経済的な独立を果たしたという意味で「第二次独立戦争」とも呼ばれている。


この戦争で名前を上げたのが後に第7代大統領になるアンドリュー・ジャクソンである。


【第5代 ジェームズ・モンロー】民主共和党(1817-1825)2期


 バージニア州。父親は中程度の農園主だった。ウィリアム・アンド・メアリー大学に入学するも、独立戦争では大学を辞めて従軍した。その後学位を得るために大学に戻ることはなく、ジェファーソンについて法律を勉強した。ジェファーソンの民主共和党に属し、州上院議員、州知事と経験を積み、ジェファーソン大統領の下では、フランスにおける外交官として、ルイジアナ買収交渉に貢献して国民的な名声を得た。


米英戦争では、マディソン大統領の下で国務長官および陸軍長官として重要な役割を演じた。米英戦争に反対した連邦党は退潮し、党派対立はなく「好感情」の時代の大統領とされる。この間にスペインよりフロリダを割譲(1819年)、ミズーリ協定*(1820年)を成立させた。



 何よりモンローを有名にしているのが、後のアメリカの外交政策の基本になったとされる『モンロー宣言』(1823年)である。アメリカはヨーロッパ大陸のことには干渉しない代わりに、アメリカ大陸おけるヨーロッパの干渉を容認しないとしたもので、孤立主義と訳されているが、これははっきりとアメリカ大陸における合衆国の縄張り宣言であった。アメリカの自信をヨーロッパに突き付けた宣言であった。モンローは建国の父として最後の世代の大統領であった。



*資料 ミズーリ協定

米国でミズーリを州にする際,そこに奴隷制を認めるか否かをめぐり,連邦議会で北部と南部の議員が対立し,その収拾策として成立した協定。 ミズーリを奴隷州として認める代りに,北緯36°30′以北のルイジアナ購入地では奴隷制を禁止することにした。


 建国の父の時代の大統領像はバージニア出身の農園主か法律家ということになる。バージニア植民地(南部州)は1番古い植民地で、当時人口も1番多い実力州であった。建国の父たちは連邦権力の強弱には対立することはあっても連邦制を否定するものではなかった。自ら勝ち取った独立と共和政に誇りを持ち、しっかりしたアメリカの基礎を作ったのである。


 共和政体はギリシャやベネチアの都市国家を別にすれば、共和政時代のローマ帝国を除けばなかったのである。近代になっての共和政はアメリカが初めてであった。アメリカに続いたフランスはフランス革命で共和政を打ち立てたが、国内の王党派の力は根強く、またヨーロッパ諸国は全て王国(皇帝)であり干渉を受けた。それが王政の復古になり、ナポレオンの登場になり混乱した。アメリカはその点、大西洋で隔たっていた地の利が挙げられる。


アメリカの強さの一番は封建遺制に縛られず、共和政というところからスタートしたことだと私は考える。


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