第6話 奉納

「あ、花南さんって茅葺き屋根に住んでるの?」と聞きたくなったので俺は聞いてしまった。

しかも、唐突に。

「いや、茅葺き屋根に住んでたのは私のひいおばあちゃんだし相当昔…40年くらい前の話だよ」と花南さんは笑って答えてくれた。

「そっか、母親が鬼婆みたいな人が茅葺き屋根に住んでたとか言ってたからさぁ…」と応対した。

「少し前…つまり、私の親の時代は蔵屋敷に住んでたみたいだけど、そこが旧鎌崎邸。今の紅蔵庵べにぐらあんのとこなんだけど…あ、ちなみに、そこのクックモートってとこでバイトしてるんだよ。しかも、大正ロマン溢れるメイド姿で!」と話してくれた。

多分、某「あは〜↑」のケルベロスみたいな格好だろう。

「へぇ…後で見に行こうかなぁ…」と俺とニナが合わせて言う。

「今住んでるとこは、映えスポットがめちゃある心洗庵しんせんあんと呼ばれる鎌崎邸なんだけど、ほんと庭園ていえんが凄すぎて毎日楽しいんだよねぇ…」と笑顔で語る。

「めちゃリッチじゃん!金借りてぇ…!」と萌里が言う。

「いや、お前ん家もリッチじゃんか!」とみんなが声を合わせて全力でツッコミを入れる。

「おぉ…楽しいそうだねぇ…」と誰かが言いながら、カメラのシャッターを切る。

「名乗る前に話しかけて悪かったね。僕は富岡。富岡イチロー。伝統的なことを取材してるフリーのカメラマン兼記者さ。」と得意げに語っている。

その隣の女が「どうも、妹がお世話になっているわ。」という。

確か、紗希さんのお姉さんで…忘れてしまった。

「私は、神宮寺 紗夜さよ。花江診療所でインターンみたいなことをさせてもらってるわ。」と語る。

「冨岡さんと紗夜さんは付き合っているんですか?」とニナが聞いた。

流石は、恋愛脳。流石。

「そうねぇ…まぁ、付き合いは高校の時からあるわね。」と紗夜さんは言う。

「ぼ、ぼ、ぼ、僕は紗夜さんに憧れてるだけだから!!!」と富岡さんは何故か焦っている。

多分、紗夜さんのことが好きなのだろう。

そんな富岡さんの様子を見て紗夜さんはなんとも言えない表情をしている。

「鬼柏神社での奉納についてですが…」と公良先生が静寂せいじゃくを待ち、切り出した。

「おんそれ送りの日。つまり、11月の第2日曜日である、11月15日の祭りが始まる少し前に奉納します。リハーサルは当日の14時くらいから始める予定です。あまり、緊張せずにやっていきましょう。」

「はい!」と学生、地域の方々全員がしっかりと返事をした。

そして、当日…

-続く-

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