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戦いが終わり、電源が0になったことでスーツを動かせず、エクレシアやアリスの肩を借り馬車へと移動する俺たち。
「しっかし本当に驚いたわね。まさかその鎧を着ただけであそこまで強くなるだなんて。あんた本当は着なくても強いんじゃない? って言いたくなるほどよ」
「いや俺は逆に、いつの間に復活してたお前らが気になるんですけど。ネコマタが悟り開いちゃったのと同時にお前も力尽きてぶっ倒れてたよな?」
「おい、あの変態使い魔と如何わしい関係っぽそうな言い方、やめてもらおうか?」
「儂とてこないなまな板嬢ちゃんなんかより、エクレシアはんほどの美乳と巨乳の中間ラインほどの女子の方が……イタタタタタ!! 強く握らんといてアリスはん!? 脳が潰れる!!」
ネコマタの頭を強く鷲掴みにしているアリスを見て、頬を引きつる感じに苦笑いする俺にエクレシアが。
「私はイリスのおかげで、二人はチリのおかげなの」
チリ? アイツが?
まあエクレシアは納得できるが、チリがアリスとイリスをってのがどうも信じられないっていうかなんというかと思ってたら。
「実はアタイ、ちょうどイタズラ目的で精製した精力剤がありましてね。飲ませた結果二人とも復活したんっすよ」
……イタズラ目的ってのが引っかかる。
「……一つ聞くが、それ飲んだ後副作用ってもんはあるのか? それ絶対お前が適当に作って偶然出来た奴だよね?」
「うーん、あとちょっとしたら腹下り引き起こして三日間トイレに籠りっぱなしになっちゃうってことくらいっすね」
「本当にそれだけ?」
「はい、それだけっす」
意外と地味だが、そんなもん一体誰に飲ませるつもりだったんだ?
そう思いながら馬車の荷台まで移動でき腰を下ろした時、俺たちが通って来た一本道先から無数の人影が。
その人影の先頭に立つリーダーっぽい奴を見た途端、俺は目を疑ったよ。
だってすっごく見覚えがある奴だもん。もし呪がまだ健在なら、今も病院に寝てるはずのアイツが。
「エクレシア! みんな! 待たせたね。この僕、転生の勇者、剣崎恭介が助けに来たぞ! 聞いた話ではあのヴァンパイアは、ってあれぇぇぇぇぇぇ!? なんで占拠された古城が木っ端微塵に!?」
恭介はおろか、彼と共にここにやって来た冒険者達も目を大きく見広げ驚愕してた。
そりゃそうだ。この中にもみんなが驚くような攻略法を思いつく冒険者がいると思うけど、ダンジョンごとぶっ壊して攻略するなんざ聞いたことないもんな。当然の反応だよ。
まあ、それはこっちも同じだけど。
今さっきヴァンパイアを倒したから丁度呪いが解けてこっちに向かうってならわかるけど、なんで今俺たちの目の前にいるんだこのナルシスト勇者は?
「ちょっと恭介!? 貴方体の方はもう大丈夫なの!?」
「エクレシア……、ああ! ここにいるみんなが看病してくれてた時に、天界からこのお方が舞い降りて来たんだ!」
「天界からって……あ!? おまいさんは!?」
エクレシアの心配かける問いかけに驚愕した顔から一変し、隣のドヤ顔してる女性を紹介し始める恭介。
崇める感じに言う恭介の隣にいる美人な女性を見たネコマタは驚愕した。
え? 知り合い?
その女性は、綺麗と言ってもいい印象を与える透き通った紫色のロングヘアをしていて、年は二十歳後半って言ったところか。
金色のローブに身を包んでいたその女性を見たネコマタは、なんだか『ぎょっ!?』とした顔になる。
まるで、会いたくない奴に会ってしまったような……、そんな感じの顔を。
……確か恭介って、アルミスって言う『アクホーン教』って言う、イリスら『イーシズ教』の天敵宗教のメンバーだったはず。
いっつもイーシズ教の連中と現実版スマッシュブ◯ザーズやってるこいつが崇めている御神体のことや、ネコマタの苦手な奴来たっぽい反応から見て。
……おい、もしかしたらこの人。
「皆のもの! 勇者恭介の呪いを解いた妾の名をよく聞くがいい!」
やっぱりそうか。だとしたらヴァンパイアの力が強力すぎない場合、今恭介がここにこれたことも納得できる。
その女性は自信たっぷりに大声を上げ。
「妾の名はアルミス! そう、いずれこの国の国教となり、世界に崇められ市存在であるアルミ『アンダーショットォ!!』」
華麗に舞い踊りながら自己紹介……してる最中にイリスのアンダーショットが顔面に命中してぶっ倒れた。
やっぱり御神体である女神って奴だったか。
「アルミス様!!」
「このイーシズ教風情が!! アルミス様に向かってなんてことしやがる!?」
「いいですわよ、邪神もろともその信者も皆殺しにしてあげますからかかってくるがよろしいですわ!」
冒険者の中に紛れていた数人のアクホーン教信者達と勧誘戦争をおっぱじめたイリス。
神様に手を出したらバチ当たるとか言ってた奴はどこいった? ってツッコミたい。
「ネコマタ! アタシらもいく……ヴ!?」
「アホウ!! 儂こう見えて天界でアイツに散々な目に遭わされて来たんやで!? あの様子じゃアルミスのアホウは儂の事覚えていないがそれは逆に都合がええからもう関わりたくは……ヴ!?」
アリスとネコマタが言い争ってる最中、両名ともに腹辺りが下る音が鳴り響いたのと同時に顔が青ざめる。
……ネコマタに後で聞きたいことが山ほどできたが、どうやら例の副作用がこんな場所で起きたらしい。
「と……トイレトイレぇぇぇ!!!」
「ちょっ、待ちなさいよネコマタ!!レディファーストって言葉知ってる!?」
二人は尻を抑えながら大慌てに近くにある公衆トイレに駆け込んで……。
ってかここ何もない平原とかした以前に中世時代だよね!? なんで公衆トイレがあるの!?
「漏れる前に早く出さないと……ってあれ!?鍵が掛かって開かな」
「あ、すんませーん。アタイが今入ってるっす」
「「早よしろやァァァァァァ!!!」」
ちゃっかり入ってたチリに対し涙目で早く出ろと促すアリスとネコマタを死んだ魚のような目で見つめていたら。
「武藤ツクルぅぅぅ!! どう言うことだ!? なんで女神アルミス様から頂いた雷神の剣があんな変なことになっているんだ!?」
「ちょ、ちょっと恭介落ち着いて!!」
「はっ!? いや、んなもんチリに言ってくれよ!!元はと言えばアイツが」
涙目の恭介がチリが制作した瞬間充電器に指差して、胸ぐら掴み大声で問い出して来やがったよ。
そういや、あの充電器って雷神の剣を素材にしやがったんだっけ?
ガチキレ状態の恭介を、他の冒険者が引き離してくれた際辺りを再び見渡して思ったよ。
こいつらなんで大人しく出来ないんだろうって。
信者プリーストは、勝手に入信させたり他宗教の人と喧嘩する。
火力以外ポンコツの魔法使いは、勝手に魔法使ってぶっ倒れたり、キレたら魔法を使って相手を倒そうとする。
そのポンコツ魔法使いの使い魔である神様は、勝手にセクハラや違法植物栽培したりするしさ。
そして俺をここに道連れにした例の宇宙人は、勝手に人の体改造したり問題を起こしたりと迷惑かけてばっかり。
ヴァンパイアとの激戦で俺は疲れてるってのに、なんでアイツらはこんなに元気なわけ?
そんな連中に深くため息を吐いた途端、隣にいたエクレシアがクスクス笑いながらこっちを見て。
「どう? 私達のパーティーメンバーは」
楽しそうなエクレシアの顔を見た俺は、自然と顔を緩めニヤけたよ。
……きっとこの先もこいつらに振り回され苦労する事だろう。
そして俺も今回の戦いのように助けられる事も度々あるはずだ。
どこか抜けてたり、常識がなかったり、めちゃくちゃな事したり、頭の悩ますような連中ばかりだが……。
「……まぁ、こんなパーティーも俺としては、嫌いじゃないかな」
退屈しない毎日って点だけが、良いところって言っても良いかな。
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