5

 次の日の早朝、俺たちは魔法姉妹の採集クエストの手伝いとして、共に例の草原に来ていた。

 辺り一面には無数のGの姿が。

 アリスは3匹で群を形成しているGに狙いを定める。

 その反対方向から、違う群のGが接近している姿が見える。


「アタシがあの3匹に魔法をぶち込むから、エクレシア達は近づいて来てる奴らの足止めをお願い!」

「了解っす!ってなわけでツクルさん、いっちょどーんっとやっちゃってください」

「いやさり気なく俺一人だけにやらせようとしないでくれる!? 一応あのG共初期の初心者には苦戦するようなモンスターなんだからさ」

「え? でもツクルさんなら楽勝っすよね? なんだってアタイがただ働きしている間にスーツなんてとっくに完成してるんっすよね?」

「二ヶ月ちょっとっで出来るわけねーだろーが!! とにかく3匹ほどこっちに来てるからエクレシアとイリスで1匹ずつ、俺らは二人で1匹倒すぞ!」

「それは嫌!! 巨大Gだけは絶対に嫌!! 近づいたらまた蹴られ踏まれての集団リンチにあって今度こそアタイは……、嫌……、嫌……」


 余裕の表情でに俺に任せようとしたチリだったが、いざ自分が戦う状況と知った途端座り込みブルブル震えている。

 ……あのG共はチリにトラウマを植え付けたみたいだ。


「ねぇ、チリってビッグGに何かされたの?」


 突然質問してきたアリスに俺の体がビクッと反応する。

 忘れてた、この現状になった全ての原因はこの馬鹿宇宙人のせいだったってことを。


「実を言うと、サンタロールの道中でチリったらビッグGの卵をめちゃくちゃにして、それを見たG達が怒って追いかけ回して」

「ストップストップエクレシア!! 余計なこと言わないでくれ!!」

「は? 卵って何?」


 エクレシアの説明にアリスが食いつく。

 流石は上位魔法使い職だけあるよ、早速何かを察しやがった。


「いや、なんて言うかチョー昔に卵をめちゃくちゃにした際一斉に飛びかかって袋叩きにされたことがあって、その結果トラウマになったっていうか……」


 動揺している俺に、怪しい目で見ているアリスの視線が痛いです。

 ますますヤベーイ、絶対疑ってるよこれ!?


「とにかく、魔法の準備がいつ終わるかわからないけど急いで!! 別方向から別の群のGが近づいてきている!!」


 そんな俺達に喝入れるような感じで言ったエクレシアは、先に近づいて来る群に単騎で突っ込む。

 G達はエクレシアを捕食しようと口を開き襲い掛かる。


 「勇者の力、舐めないでよね!!」


 飛びかかってきた1匹を華麗に回避し、顔が地に埋まった瞬時に腰元の剣を引き抜く。


 ……俺の目には、その一瞬何があったか理解できなかった。


 彼女は間違いなく今さっき剣を抜いたばかりだ。

 だけど埋まっているGは既に、剣の斬撃による一撃で胴体が真っ二つに斬り裂かれてる。

 G達は少したじろい、エクレシアはその隙も見過ごすことなく、1匹1匹と次々に斬りつづけてる。


「お姉様見てくださいまし!!エクレシアさんはお姉様の力を信じて自らG達の足止めを!!」

「あのしなやかな動き、相手の一瞬の隙も見過ごさない洞察力にあの剣術、まるで勇者みたいだわ!!」


 いえ、本物の勇者ですよ、彼女。


「アタシも負けてられないわ。今から下準備にとりかかるわよ!!」


 アリスが構え、詠唱を唱え始めるも、エクレシアが言っていたG達がこっちに近づいていた。


「あとアイツをどうにかしないとな、エクレシアは無理だしチリはこんなんだし……、っておい!」


二人の状況を目視している間に、イリスはスティックを手に近づいてくるGに駆け足で近づく。


「エクレシアさんは自ら足止めに行きましたわ。姉様の魔法使いの素質を信じて。ここまで人に親切にされたのはオッドアイ村以降ですわ。だったらワタクシも当然足止めするのが当然!! 喰らいなさい汚らわしきGよ!! イーシズ教信者の渾身の一撃、冥界から放たれし魔弾を! 『アンダーショット』!」


 スティックの魔法石から眩い光が放たれ、その光が黒い光弾となって放たれる。

 ちょ、見た目からしてこれ凄い技なんじゃないか!?


「冥界の力そのものが詰まりしアンダーショットに生者が触れれば、魂を黄泉の世界に触れさせるのと同類!! 簡単に言えば、その者の魂だけは、冥界へとワープする!!」


 いい終わるのと同時に、アンダーショットを喰らった群のうちの1匹のG。

 そのGは何事もなくゆっくりとイリスに近寄る。


 あれ?一撃必殺じゃないの?


「……そういえば、あの時もコイツにアンダーショット放ってましたっけ?」


 いや試して効かなかった奴に同じ技使う!?

 ……って思った瞬間そのままパクリ。微かに見える足元をビクンビクンさせてる。


 ……なるほど、ああいう足止めもあるのか。


 見ながらそう思っていた時、アリスの詠唱が終えた。


「見せてあげる!! ソフィ様の子孫であり、未来で魔王討伐を果たしたと語られる偉大なウィザードキャスターこと、アリス様の冒険者人生最初の魔法を!! 『ランスレイン・ブリザード!!』」


 彼女の右人差し指から、閃光が走った。

 指先から放たれた小さな光の粒が、快晴の空真上へと浮かび上がる。

 するとG達の上空から、大剣二本分サイズの巨大な氷柱が雨の如く降り注ぐ。

 無数の氷柱のうち十数本は全てのGに刺さり瀕死にさせ、振り終えた後、その辺り一面氷柱の森と化した。


 「これが……、魔法……」


 3匹のGをまとめて倒し、草原から氷の森にしたアリスの魔法に感動している俺。

 その感動に水を差すかのごとく、イリスが足止めしている1匹を除く、残りのG達がこちらに迫ってくる。


「アリス!! 余ったG供がこっちに来る!! さっきの魔法でそいつらも……、ん?」


 アリスに顔を向け魔法を撃てといいかけた時、彼女は怯えている子犬のように震えながら、匍匐前進で逃げようとしている。


「……何してんの?」

「ごめん……、威力増強の才能能力ってデメリットもあって、通常より大量の魔力を消耗しちゃうのよね……。だからお願い、おぶって逃げぶぎゃ!!」

「ふぎゅえ!!」

「嫌ぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」


 エクレシアがイリスを助けたのと同時に、俺とアリスは大量のG供の波に飲まれ踏まれまくり、またチリとG共の追いかけっこが始まった。


 

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