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「ふぅ……必要なモーターはこんなところか」


 あれからどれくらい経ったのだろう?

 俺は魔王軍に要請した大量の資材を元に、対魔王駆逐機動スーツ『ロード・スレイヤー』の内蔵パーツを全て作り終えた。

 後は全部組み立てた後、装甲を取り付ければ完成だ。

 武装はある程度しっかりしているが、急ごしらえや素材の都合上でホバー移動などの機能は殆ど備わっていない欠陥品だが、そこはなんとかなるだろう。

 ちなみに起動するためには俺から分離したドライバーが必要みたいだ。

 実のところそのドライバーが稼働エネルギーのリアクターの役割になるらしい。


「……ねぇ、本当にその絵に書かれている鎧作っただけでなんとかなるものなの?」

「鎧じゃねえ、パワードスーツだ」


 心配そうな顔で俺を疑うエクレシア。

 まあ確かに、エクレシア達のようなこの世界の人視点での見た感じではただの鎧だ。

 不安になるのも無理はない。

 だけどあらゆる地形でも一定速度で移動できるホバー移動に、宇宙ロケット並みの飛行速度。

 そして何より俺のいた世界の兵器などが備わっている。

 硬度に関してはなんとも言えないけど、勇者魔王世界って言ったら大体は中世時代で、武器も剣や弓矢程度に違いない。

 ロボットにそんな中世武器で傷なんかつくわけがないからなんとかなるでしょ。


 「それにしても、この0.7ミリバルカンや35ミリ主砲など、日本って言う国は不思議な魔道具ばかり作るのね」


 内蔵させる武器を手に取り呟くエクレシア。

 その呟きを聞いた途端、ここ日本じゃなくて良かったと思ったよ。

 だって事情が事情ってのもあるけど、普通の一般人がこんなの作ったら銃刀法違反に引っかかる可能性があるからねこれ。

 間違いなく警察のお世話になっちゃうよ。

 

 「とりあえずこれから組み立てだな。最短だと二週間くらいで済むかしら?」


 意気揚々と組み立て作業に入ろうとした途端、出入り口から渾身の力で金属類を地に叩く音が響く。

 驚き振り返った時、泣き顔で変な瓶を抱えたあのロリ宇宙人が入ってきた。


「あ!! お前!!」

「ツクルさぁぁぁん! 今までどこにいたんですかぁ〜」

「え? この子、ツクルの知り合い?」


 ちょっと困惑気味で尋ねてくるエクレシア。

 知り合いって言えば、知り合いの部類に入るのかなー? ……でもなぁ、なるべく関わらない方が身のためのような気がするし、やっぱり他人の振りが正解……、いや、俺がこんな状況になったのも全てはこいつが原因だし……。

 っと、色々考えたら。


「酷いですよツクルさん!! ここにくる前までアタイ達は一緒にあんな悪事やこんな悪事、数え切れないほどの悪事を一緒にやってきたじゃありませんかー!?」

「勝手に俺のような善人を犯罪者みたいに言うな!! 誤解招くだろうが!!」


 思わずツッコミ入れた瞬間、再び同じ方角から金属類の叩く大きな音が鳴り響く。

 再び驚いた俺たちは音の方角を振り向くと。


 __巨大な金属棍棒を装備した例のオークが笑み浮かべ近づいてくる。


「なんだ? このガキお前の知り合いっぽそうだな?」

「トカッツン!!」


 オークの顔を見た途端俺に対する表情を一変し怖い顔になるエクレシアさん……。


「そんな怖い顔すんなよ勇者様よ、奴隷という人質がいる限りテメエには何も出来まいんだからっよっと」

「イタタタタタタ!!! すみません!! ごめんなさい!! もう食料庫から勝手に盗み食いしませんし、盗んだ高級酒も返しますから許してください!!」

「お前そんな事してたの!?」


 そう言って不敵に笑った後、オークはロリ宇宙人の頭を鷲掴みして持ち上げながら、ツッコミ入れた俺の顔を再び見る。

 ……やばい、どうしよう。

 さっきの音ってあの豚野郎の一撃で発したもんだよね?

 ビビって腰抜かしちゃって、まともに立ち上がれず震えて……。


「このチンチクリンのガキ追ってる最中、組み立てとか言ってたの聞こえたぞ? なのに鎧の形状は維持したまんまなんだがどういうことだ?」

「失礼な!! アタイのどこがチンチクリンで……痛い痛い痛い!! 返します、黙ります、だからやめてくださぁーい!!」

 「えええええっとぉぉぉぉぉ……、こここここの部品らが勇者の聖なる力を打ち消す的な効果がありまままましてぇ……、組みみみみ立てはまずなんていうか……」


 ダメェェェェ!!! 怖すぎて呂律回らないどころか、まともに喋ることもできねェェェェ!!

 そんな俺に対してオークは、蛆虫を見るような目で俺を見た後、俺めがけて鷲掴みしているロリ宇宙人を投げ捨て、ぶつかった俺はロリ宇宙人の下敷きになるように倒れる。


「とにかくだ、俺は寛大だから後1ヶ月待ってやる。それまでにはちゃんと完成させるんだぞ」


 そう吐き捨てるように言うと、高笑いしながら大きな足音を立て部屋から出て行った。


「ツクル大丈夫!?」

「あれ? アタイの事は心配ナッシング?」


 下敷き状態で倒れている俺に、心配そうに声をかけてくれるエクレシア。


 エクレシアが俺を起こしてくれた後、俺はただまっすぐ眺めてしまう。

 オークの一撃によって出来た、出入り口の側面にある巨大な穴を……。

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