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「日本って言う国や宇宙人にキャトルミューティレーションとか、何言っているかわからない事が多いけど、大体の事情は理解したわ」

 俺はエクレシアに、自身の経緯を話した。

 彼女は最初、頭がいかれたような人物を見るような目で俺を見ていたが、右中指のドライバーを見て嘘ではないと理解したらしい。

「にしても本当に変わった形状をした金属ね。一体何に使うのこんなの?」

 「な、何って……、そりゃぁ……、ネジを閉めて固定とかそんな……」

 エクレシアの奴、俺の右手のドライバーに興味津々で、撫でるように俺の右手を両手でいじってる。

 そんな中俺は、体がカチコチになってまともに動くことも喋ることもできない。

 だってこんなの、童貞で女の人とまともに話して来なかった俺にとって半殺しに近い行為だよ。

 それにエクレシアはスタイル抜群で、顔もなかなかの美少女。

 そんな彼女に右手をいじられまくられている時点で、俺のチキンハートの鼓動の速さがどんどん加速しているよ現に。

 そんな俺の状態に気付いていないエクレシアは、何かを見つけたように表情が変わった。

「ど、どうしたのですか?」

「……ねえ、このボタンは何に使う物なの?」


 ……ん?ボタン?そんなのがあるの?


 俺も自分の中指をまじまじと見つめてみたら、付け根箇所に小さなスイッチ的な突起物がピョコっと出ている。

 「なんだこれ?」

 そう言ってボタンを押してみたら、右中指のドライバーが、


 …………ポロリと手から外れて落ちました。


「…………」

「………………ああああああああ!!! 俺の中指がぁぁぁぁあああああああ!!! 俺のアナログスティックがぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」


 顔を青ざめ絶叫する俺に対し、気まずそうに顔を逸らすエクレシア。


「ちょっとどうなっての!? 元に戻る!? これ元に戻るんだよねちょっと!!」


 大慌てで俺は、すぐさま外れ落ちたドライバーという名の右中指を拾い上げる。

 でも拾った後どうすりゃいいんだ!? ボタン押した瞬間ポロリだったからくっつければ元に戻るの!?

 いや、断面部位をよく見ても、包丁で切った野菜の如くスッパリ分断してるんですけど!?

 磁石!? とりあえずくっつけたら磁石みたいくっつくかしら?いやそうでなくては困る!!


「なんか……ごめん……」

 ボソっと謝罪するエクレシア。


 いやごめん……、って言ってる場合じゃないよ!? なんで勝手に押したの!? 俺の貴重なアナログスティックどうしてくれるの!?

 ……って自分のせいなのに我を忘れて突っかかるのが普通だが、今の俺はそんな風に怒るどころか、謝罪の言葉さえも聞き取れないほど取り乱しています。

 だって改造されたとは言え指一本取れたんだよ!? 取り乱さない人がいるならぜひ見せてもらいたいもんだ!!

 もう頭が混乱して思考がまとまらない時、ドライバーの先端から壁に向け光の一線が。


 「え!? 何!?」

 「光が……」


 この出来事に驚き正気に戻る俺と、不思議な光景を見る眼差しで見つめるエクレシア。

 そして光の一線は宙に止まり、そのままパソコンのデスクトップに似たモニター画面へと姿を変えた。


 「こ……これはぁ!!」


 この珍現象に言葉が出てこないエクレシアを差し置き、俺は画面に映されているファイルツールを、興味本位で触れてしまう。

 すると凄まじい速さで、モニター画面に

様々なデータが表示される。

 書かれている文字は全て日本語だったから俺は全て読む事ができた。


「ねえ……、これって一体?」

「こいつは……、設計図だ、電子機器や家電製品……兵器までもありやがる!!」


 俺は自分の現状を忘れる替わりに、今まで堪能する事ができなかったメカいじりの楽しさを思い出すかのように夢中で読みあさった。

 ああ……、なんて素晴らしい……。

 まさかこのドライバーはUSBメモリー的な物だったんだな。

 どんな場所でも見れるように作られてるっぽいし、しかも中のデータはあらゆる機器の製作方が……、ん?

 興奮染みていた俺は、とあるデータファイルに目をつけ開いてみた。

 そこに書かれている内容を見た途端、俺の瞳は希望の光で輝きだしたと思う。

 俺はすぐさま扉に向かい、そこで俺たちを監視しているゴブリンに声をかける。


「すんません!! 要求したい物資があるんすけどいいっすか!?」

「んあ? 一体何がいるんだ?」

「ひとまずはありったけの鉄鉱石!! そんでゴムで出来た管っぽいやつ……とにかくゴム製品お願いっす!!」

「よ……よくわからんが、大量の鉄鉱石とゴムがいるのか?」


 頭逝かれた人物を見る目で俺を見つめるゴブリンの確認に、俺は何度も頷いた。


「わかった……とりあえず用意しよう」


 そう言ってゴブリンは、関わるのをなるべく避けるかのように早足で後にする。


「ねぇ……、あなた一体何を……」


 心配そうに俺を見つめてくれるエクレシア。

 俺はそんな彼女に気づくことはなく、ただとある物を……。

 ここから脱出するための物を製作することにしか頭にない。


 対魔王駆逐機動パワードスーツ、『ロード・スレイヤー』を。

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