第2話
建物を見上げながら、心も金銭も真に貧しい彼はふと奇妙な観念に陥った。この建物は交通量が多い道路に面しており、他の建物に比べてその存在感には目を見張るものがあった。このお店がどんなものを販売しているかは耳にしたことがあった。しかし、それらの商品は18歳になるまでは入ることが許されていなかったので、彼はこの店に入ることを一種の憧れを持っていた。彼はつい最近、この建物に入る許可証である「18歳」を受け取ったばかりであるが、彼はこの建物の中に入ってやろうと思いついた。無意識からとめどなく湧き出る好奇心を、彼は抑えることはできずにいた。一方で、「伴侶を失った私にはこれ以上に怖れることがあろうか、いやない。」ともいうような単なる投げやりの精神を包含していたことも否定できずにいて、「檸檬の爆弾を置いてやろう」といういたずらな行動に潜む何とも言えない感性を持った観念とはかなり距離があった。
ドアの前に立つ。ドアには「18歳未満立入禁止!」と貼られていたので、彼はぎょっとした。突如として後ろめたい何かを隠しているような心地になったので帰ろうという考えが頭をよぎった。しかし、彼は深呼吸をし、自分が改めて何歳であるかを心の中で反芻することにした。「そうだ、僕は18歳だ。この店に入店する許可はすでに得ている。何を臆するものがあろうか。堂々と入ってやる。」
落ち着きを取り戻した彼はようやくドアの向こう側に歩み出た。通過儀礼を終えた若者のような勇ましい気持ちが少しずつわいてきた。
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