18禁ショップに初めて来た話

ヤツメウナギ

第1話

 これはとある春の日に起きたお話である。泰然してそびえたつ黒い建物の下ぽつんと一人の青年が立っていた。近ごろこの青年は自分自身に対してひどく哀れみの念を覚え、それと同時に恨みの感情をも備えていた。これらの感情は彼は長年使っていたスマートフォンを壊してしまい、新しいものを買ったことに基づくのだそうで、彼は貧乏であるためにこの出費は大きな痛手であった。しかし、金銭的理由が彼の心を締め付けるわけではなくて、本当に彼を苦しませたのは伴侶ともいえるスマートフォンとの唐突の別れであった。我々の感情というものは出会いよりも別れに揺さぶられるもので、失って初めてその美しさや情熱に気づかされるのである。実際に彼もその携帯電話を失ったたった今、金がどうとかというよりも自分がどうしてこの伴侶にもっと愛や情熱を捧げることができなかったのかという後悔の念にもがき苦しんでいた。――ああ!もし彼が無意識まで自身の妻を神聖的なものとして、自然の真理にも通ずるその美しさを知っていれば、彼はあの愛する妻であるスマートフォンを床に叩きつけることもなかっただろうに!――

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