〈4〉想い人(ファイナリスト)は敵前逃亡(くものうえ)
思い返してみれば。
それらしい空気は、薄々と感じていた。
例えば数日、欠席していたり。
それについて先生に尋ねても、一向に口を割って
けど、見て見ぬ振りに徹していた。
今の俺は、『冬休みをどう利用するか』、それしか頭に
「ねぇ、聞いた?
あの話」
「聞いた、聞いた。
やっぱ、
まだ2年生なのに、選ばれるなんて」
「でも2ヶ月半、約3ヶ月でしょ?
それってさ……」
「うん。
だよね……」
終業式の当日。
その時点で、
彼女は、
「俺が、どうかしたか?」
「いや……。
「
そうだが。
それが、
「『何か?』、って。
……もしかして、話してなかったの?」
「誰が、
やや苛々しつつ、答えを求める。
彼女は、
その先に
「お、おい、
やべーぞ!!」
血相を変え、駆け寄る
ただならぬ物々しい空気に、俺の思考と精神に、暗雲が立ち込める。
次に
「
……海外、留学……?」
優しくて、美人で、
そんな彼女を、ずっと、雲の上の人だと認識していた。
だからといって、思わなかった。
まさか本当に、飛行機に乗って、精神的のみならず、物理的にまで雲の上に行くだなんて。
それも、決戦を前に、2ヶ月半も先に。
この日、それを台無しにしたのは、他でもない。
俺が射止めんと欲していたファイナリスト、
これから本格化しようとしていた矢先の、ヒロイン不在、敵前逃亡、自己防衛、日本脱出、裏切り行為。
果たして俺は、この最大のピンチを乗り越え、彼女の恋人になれるのか。
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