〈4〉願い、狙い、未来

 俺と結織ゆおりが、身も心も結ばれ、一つに混ざり合ってから、およそ2週間。

 

 

 春休みの初日に、結織ゆおりから誘いが来た。

 なんでも、「新しく別荘が出来できたから、遊びにおいで」とのことだった。

 そんなわけで、早速やって来た。



 ……のは、いいものの。

 眼前に聳え立つドデカ豪邸に、速攻で絶句した。



 え、7階建て?



「あ、未希永みきとぉ。

 いらっしゃーい。

 待ってたよぉ」


 

 一足お先に着いていた結織ゆおり

 玄関を開け、一目散にダッシュし、飛び込んで来た。

 負けじと、彼女をキャッチする。

 まるで、いつぞやと逆の構図みたいだ。

 


結織ゆおり

 危ないだろ」

「平気、平気。

 だって、未希永みきとだもん」

なんだ、そりゃ……」


  

 てんで説得力、語彙力に欠ける、ありがたぎる根拠に、顔が綻ぶ。



 あの日から随分ずいぶん、積極的というか、スキン・シップが増えたというか。

 それくらい、俺を信じ、認めてくれてるってことだろうけど。

 俺としては、役満レベルの役得だけど。



 ところで今、なにもせずに開門してなかった?

 もしかして、『センサーが反応して、オートで開く』、的な?

 ブルジョア、怖っ……。

 


未希永みきとが、ちゃんと受け止めてくれるもん。

 私の体も、心も、将来も」

「まぁ……ご期待に添えられるようには、するよ。

 この家に見合うかは、分からんけど」

「えー?

 私の、未希永みきとへの愛に比べたら、まだまだ小さい方なんだけどなぁ」

「ねぇそれ、どっちで言ってる?

 ネタ? 本気?」

「ふーん。

 そんなに、信用ならないんだぁ?

 まだまだ調教が足りないかなぁ?」

「ごめんなさい結織ゆおりさん、頬っぺはめて差し上げて、マジめて」

「じゃあ、こっちで我慢する」

「そこは、もっと駄目ダメ!!

 人前だから!!

 後生だから!!」



 じゃれ合うと見せかけ、ちゃっかり下腹部を攻めようとした結織ゆおりを、慌てて止める。

 とにかく明るくなっちゃったじゃん、俺!



「……ん?」


  

 ふと、表札に目をやり。

 そこに書かれた文字に、再び絶句した。



母神家もがみや 結織ゆおり

 母神家もがみや 未希永みきと



「……結織ゆおりさん?

 これは、どーゆー……」

「あー、それぇ?

 ごめんねぇ、勝手に決めちゃって。

 でも、未希永みきとの肩身を狭めない方法が、これしか思い付かなくってさぁ。

 ほら?

 私名義じゃないと、分かり易くヒモっぽくって、アレでしょ?

 内で用意した家に、一緒に暮らしてる都合上。

 私は別に、それでもいんだけど。

 未希永みきとは、気にするかなぁって」

「違う、そうじゃない。

 そこは別に、気にしても気になってもいない。

 なんで、『もう俺の名前が彫られてるんだ』、って話だ」

「何言ってるの?

 当たり前でしょ?

 結婚するんだから」

「いや、まぁ、そうだけど……」

「じゃあ、いじゃん」

「まぁ……。

 ……かなぁ……?」




 えず、納得だけしておこう。

 結織ゆおり、めっちゃ笑ってるし。

 それを台無しにさせるのは、気が引ける。



「ここね?

 お母さんとお父さんが、建ててくれたの。

 未希永みきとこと、2人に話したら、それはもう大喜びでさぁ。

 で、あれやこれやという間に、ドーンッと。

 あ。ちなみに、『費用のこととかは一切、気にしなくてい、むしろ払うな』ってさ」

「さいですか……」


 

 ……俺そんな、好感度爆釣すること、したかなぁ?

 ただ痛々しく叫んだだけの気がするんだが……。



「まぁ、いじゃん。

 気楽に、気長に、暮らしてこうよ。

 この子達のためにも、さ」



 頬を赤く染め、目線を外し、お腹を擦る結織ゆおり



 いや、久々に見たなぁ、それ!

 てか、今となっては、てんで笑えないけどなぁ!!



 言っとくけど!

 あの日からは未遂だし、キス止まりだし、スキンだってしてたし!

 なんなら結織ゆおりも(自発的に)チェックまでしてくれたけどなぁ!!

 あくまでも、その可能性がるっただけの話だけどさぁ!!



 ついでに言えば、結織ゆおりは満更でもなかったうえに!

 むしろ、落胆してたけどさぁ!!



「名前もねぇ。

 もう、決めてるんだぁ。

 男の子だったら、『未結希みゆき』。

 女の子だったら、『織永おりえ』。

 二人の愛の結晶って感じで、気に入ってるんだぁ」

「へ、へぇ……」

なんで引いてるの?」

「突然ぎて……」

「そっかぁ。

 じゃあ、早く、慣れてね。

 内容にじゃなかった分、お咎め無しにはするけどさぁ」

「善処します……」



 なんてーか、うん。

 やっぱり、結織ゆおり結織ゆおりだな。



 まだ、ちょっと怖いけど……ちゃんと、順応してかないとな……。

 これから、一緒に暮らしてくんだし……。



「え?

 てことは、なに

 今日から俺、ここに住むの?」

いやなの?」

「そうじゃなくってさ。

 棚ぼたでしかないけどさ。

 俺、なにも聞いてないし、持って来てないんだけど」

「それなら平気。

 荷物なら、すでに頼んであるから」

「誰に?」



 結織ゆおりが答えるより早く、1台のトラックが到着する。

 引っ越し屋さんと一緒に降りて来たのは、見慣れた小柄のシルエット。


 

依咲いさき?」

「ちーっす、カイ先輩。

 数分りでやんすね」



 いつもの通り、無表情かつアンニュイに敬礼する依咲いさき

 そのまま、結織ゆおりに振り向き、会釈する。



結織ゆおりも。

 終業式以来っすね」

「昨日だけどね。

 届けてくれてありがとう、依咲いさき

 助かった」

「どーってこといでさぁ。

 これで、カイせんポイント貯まるんなら、安いもんでごわす」

だなぁ、依咲いさき

 ポイント制なんて、導入してないよぉ。

 未希永みきとはさぁ」

「あ、あはは……」



 バチバチした空気に及び腰になっていると。

 依咲いさきは、ツインテール、片目にし。

 なにやら大きいリュックを背負い、俺達に告げた。



「改めまして。

 今日から同居人にランク・アップした、新甲斐あらがい 為桜たおで候。

 なるべく迷惑掛けまくれるように頑張るんで、マジカルよろしく」

「……はい?」



 え、なに

 俺や結織ゆおりのみならず、依咲いさき(為桜たお?)も住むの?



 ……有りなの?

 そういうの。



「待ってくれ、依咲いさき

 俺は、君をフったんだぞ?」

「コイサキがフ《や》られたようだな……。

 フフフ……やつは、サキ四天王の中でもマジカル最強……。

 ガヤしおもアイサキも、未だ健在……。

 よって、為桜たおとはマジカル無関係……」

「初手から主戦力討たれてんじゃねぇか。

 てか、いつにも増してわけ分からんぞ?」

「それは、過去の話。

 今は、にいと同居中の為桜たおがマジカル最強。

 あとにい、マジカルうるさい」

「まだ1ヶ月も経っていないわよ」



 3人だけの場に、再び声。



 振り返った先にたのは、恵夢めぐむ

 和風の顔立ちにもかかわらずさまになってるサングラスを胸元。

 にセットしようとして、出来できなかったので、ポケットに入れ。

 彼女は、俺達に告げる。



「同じく、大学1年、文芸部の元部長。

 庵野田あんのだ 恵夢めぐむよ。

 今日から、ご厄介になるわ。

 丁度、キャンパスからも近いし」

「せ、先輩まで!?」

「ん?」

「ん〜?」

「め、恵夢めぐむ、まで……」

「うむ。

 上出来よ、アラタくん。

 願わくば次回以降は、初手から詰みかけないよう、精進なさい」



 呼び方を間違えられた結果、二人に睨まれる俺。

 横では、「駄目ダメだ、こりゃ」と言わんばかりにお手上げしつつ、嘆息する依咲いさき

 


 な、なんで、結織ゆおりまで……。

 依咲いさきはまぁ、なんとなく分かるけど……。

 一体、どういう心境、実状なんだ……?



「ずっと考えてたの。

 未希永みきとと、『ニアカノ同盟』。

 私は、どちらを選ぶべきか、って。

 天秤にかけた結果、私は両方を手に入れることにした」

「……つまり?」

恵夢めぐむの、『同士』。

 依咲いさきの、『最推さいおし』。

 私の、『彼氏』と『ヒモノン』と『ペット』。

 それから、私達3人の『同居人』、『仲間』、『親友』。

 未希永みきとには、そのすべてになってもらう。

 全員のリクエストを、体現してもらう。

 みんなを、大切にしてもらう。

 そうすれば、根こそぎ解決だって」

「いや、まぁ……。

 確かに、そうかもだけど……」



 少なからず後ろめたさを覚えていると。

 不意に恵夢めぐむが、俺に頭ポンポンをした。



「心配には及ばないわ。

 確かに、まだ引き摺ってはいるけれど……全力で戦って、負けたんだもの。

 それで叶わなかったのなら、もう仕方しかたいわ」

「そうです。

 サキも、そこまで後悔していません。

 カイ先と結織ゆおりは、ベスト・マッチ。

 最好さいこうのコンビだった。

 銀河無敵のサキでさえ、かなわないほどに」

恵夢めぐむ……。

 依咲いさき……」



 ありがたみしかない言葉に、泣きそうになる。

 二人は、互いを見合い、微笑ほほえむ。



「1年前から、決まっていた、決めていたことだもの。

 あたし達は、そういう条件で、同盟に加入したのよ」

「そうでし。

 だからこそ、あの日、誓い合ったんです。

 それぞれにデートを終えた4人で、部室で」



 恵夢めぐむ依咲いさきが、スマホを取り出し、アピールする。

 そういう流れだと察し、俺と結織ゆおりも倣う。



「ニアカノ 新・5つの誓い」



「一つ。

 皆、対等、均等、平等に扱うべし。

 年齢、職業、ポジションなどを理由にはしないこと

 本命が定まっても、露骨に優先しないこと

 他の仲間のことも、適度に気に掛けること

 多矢汐たやしお 依咲いさき



「一つ。

 意図的なヘイト・スピーチなど、目に余る反則行為は禁止。

 失言をしても、かならず、可及的かきゅうてきすみやかに謝り、折り合いを付け、和解すること

 仲良く楽しく安全、健全に、正々堂々、笑顔で、生涯を駆け抜ける事。

 母神家もがみや 結織ゆおり



「一つ。

 ハニトラは死、負けと同義。

 勝負に負けた以上、潔く引くべし。

 想いは言葉、行動で示すべし。

 誠実であるよう、常に心掛け、なるべく秘密を持たないこと

 異性であっても、友として敬慕し、助け合うこと

 庵野田あんのだ 恵夢めぐむ



「一つ。

 黒一点を大切に扱う事。

 具体的には、必要以上に、揶揄からかったり、困らせたり、怖がらせたり、驚かせたり、隠したり、騙したり、撃ったりしないこと

 新甲斐あらがい 未希永みきと



「一つ。

 誰が選ばれても、選ばれなくても。

 形は変わっても、思いを違えても。

 場所も、気持ちも、離れていても。

 4人は一緒に、つながり続けること

『ニアカノ同盟』一同」



 最後だけペースと足並みを揃え、読み上げる俺達。

 まさか、ここまで有言実行し、あまつさえ最適化しようだなんて。

 1年近く前までは、想像すらしてなかったに違いない。



 正直、馬鹿げてると部分もったと思う。

 恋敵で、異性で、派手に喧嘩して、すでに付き合ってて、異なるベクトルで俺を求めているのに。

 それでも、こんなふうに、関係を維持しようだなんて。

 そんな、ドロドロした綺麗事を、リップ・サービス染みた単なる口約を、継続しようだなんて。

 そんなの所詮、子供っぽい幻想にぎないって。



 でも。

 それでも俺達は今、こうして揃った。



 探り合いも、殴り合いも、泥仕合も、騙し合いも、罵り合いも、慰め合いも乗り越えて。

 1年前みたいに、『ニアカノ同盟』を再結成した。

 1年前よりも鮮明に、堅実に、将来を見据えて。



 各々おのおのの願いを、狙いを、未来に託して。



「……結織ゆおり

「はーい」

「……恵夢めぐむ

「ええ」

「……依咲いさき

「ウィー、ムッシュ」



 順繰りに同居人を見詰め、懇願する。

 3人は、ほとんど曇りのい晴れやかな顔と声で、応える。



「これからも、よろしく」

勿論もちろん

 全員、お世話、溺愛し尽くすよ。

 取り分け未希永みきとには、サービスしまくるから、覚悟してね」

「これで、契約更新完了ね。

 では、二人共。

 その『サービス』について、詳細をお聞かせ願おうか」

恵夢めぐむ

 急いてはことを志尊◯ですますよ?」

むしろ、散々さんざんお預け食らった方だ。

 3ヶ月だぞ?

 さぁさぁ、早く白状してもらおうぞ」

「さて、と。

 えずみんな、ご飯にしよ。

 終わったら、中を案内するね。

 1階が共有フロア兼ゲスト・ルームで、2階が未希永みきと、3階が私、5階が恵夢めぐむ、6階が依咲いさきのスペース。

 自室や趣味部屋、倉庫の他、カラオケやシアターもり。

 それから、それぞれの部屋にはトイレとお風呂、キッチン、防音完備。

 あと、食費は割り勘で、それ以外の生活費は、フロア毎に自動でカウントする仕組みになってるから、それぞれに支払って。

 それと玄関には、手数料の掛からない特別仕様のATMも置いてるから。

 エレベーターとエスカレーターも、好きに使ってね。

 地下室もるけど、そこは私と未希永みきとの個室ね」

「つまり『監禁』、『致し部屋』だな?

 言わば、『セッセしないと出られない』的なアレであるな?

 むしろ、そういう振りだな?

 アラタがヘタレて逃げぬよう、我が頑丈に閉じ込めろという。

 あい、分かった、喜んで承ろう」

「ブレーキ踏め、恵夢めぐむです」

「待って!?

 なんか、すごい設備じゃなかった!?

 サラッと流されたけど!

 あと恵夢めぐむは、ここで察しの良さ発揮しないで!

 結織ゆおりに吸い尽くされる、枯れ果てる、狩られちまう!!」

「カイせんが耐えればいざんす定期。

 なんなら、サキが恵夢めぐむの誘導を」

依咲いさきぃ。

 飴ちゃん、食べるぅ?」

「早く寄越しなさいませ。

 あ、カイ先。

 今回は、結織ゆおりの作戦勝ちでさぁ。

 大人おとなしく、結織ゆおりに狩られるがいですます」

「いや、やっすいなぁ、おいっ!!

 大丈夫だよな!?

 俺、本当に大丈夫だよな!?

 なぁ!?」

だなぁ。

 そこまでしないよぉ。

 ちょっと未希永みきとのダメ才を開花させるだけだってぇ」

「それはそれで、お預けにもほどるってか、色々とむごくないか!?」



 こんな会話をしつつ、中に入り、手を洗い。

 そのまま朝食、洗い物、案内も済ませ。

 となれば、次の選択肢は。



「さて、と。

 みんな、お疲れさま

 ガイダンスがスムーズに完了して、何よりです。

 じゃあ、後は各自、自由行動ってことで。

 行くよ、未希永みきと

「でぇすよねぇ!!」



 修学旅行の引率の先生みたいな台詞セリフと共に、早くも地下室に連行されかける俺。

 透かさず、それを依咲いさきが止める。



「待つでやんす。

 入居早々におイタしようたぁ。

 ちょっと話が美味うますぎるんじゃあ、ありゃせんですか?

 人生、空虚じゃあぎじゃあ、ありゃせんですか?」

いぞ、依咲いさき

 そうだ、結織ゆおり

 高校生らしく、未成年らしく、もう少し節度を持ってだなぁ!」

「師匠は今から、自分と推し事するでありますっス!!

 飾って、カラって、半端はんぱいパーリナイっス!!

 私物運んだんだから、それくらいの施しは受けるべきっス!!」

「……あれぇ?」


  

 おーっとー。

 ここで、久々のガヤしおモードだー。



「まぁ、一理るよね。

 それに関しては、私も感謝してるし。

 でもさぁ、依咲いさき

 そんなこと、言っていのかなぁ?

 こうして一緒に住んで、色々と工面して、ある程度の接触は我慢して、なんなら時々の未希永みきとレンタルさえ渋々、容認して。

 そこまで寛容な、この家主である私に。

 依咲いさきさぁ……少しは、ん……気を遣い、なよ……。

 私、もう……限界、だよっ……。

 私……私ぃっ!!

 一刻も早く、未希永みきととDVごっこがしたいのぉ!!

 酔っ払って散財して借金作って勘違いして決め付けて、私をダサ格好かっこく、ワイルドに召し上がってしいのぉ!!」

「あるぇ?」



 売り言葉に買い言葉を地で行き、すでに残念な方向にスイッチ済みの結織ゆおりー。

 自身が提示した、「『ニアカノ』の誓い」は、どこに行ったんだー。 



「ふむ。

 しからば、間を取って。

 これよりアラタは我と、サキオリとオリサキについて語り合うというのは、どうだ?」

「あれるぇー?」



 消火と見せ掛けて、さらに油を注ぐ恵夢めぐむー。

 どこをどう間を取ったら、そうなるんだー。



「おーい。

 探検は終わったかー?

 ケーキ作ったから、食べに来い、ぐはぁっ!?」



 背中越しですら覚えられるオーラにすら気付かず、迂闊に近付き、3人に同時に蹴られる七忍ななしの

 そのままエレベーターに打ち込まれ、結織ゆおりがスマホを操作し、自分のテリトリーである6階に運ばせた。



 お前は、それでい。

 最終話だというのに、同居人で仲間だというのに、大して触れられないまま、この仕打ちなくらいで、丁度い。



 睨み合う三者。

 6つの瞳は、やがて俺に向けられ。



「こうなったら」

「そうね」

「1つしかいでごわすね」



 胸騒ぎを覚え、後ろに下がる俺。

 すると、結織ゆおりが再び、リモコン代わりにスマホを操作。

 瞬間、床が勝手に移動し、俺は壁際までたちまち追い詰められる。

 なにこれ、忍者屋敷!?



 ……えーっ、とぉ。

 この光景、物凄ぉぉぉいデジャブるぞぉ?

 具体的には、プロローグ辺りで見たよーな……。

 てか、まんまなぞらえてるってか、天丼ってーか……。



 この先の展開を予測し、言葉を失う俺。

 かと思えば。



『トモ・ヒモ・エモに、なってください、そして

 ドシ・ヌシ・オシに、さぁなりなさい、そんで

 恵む夢、結い織り、依頼、咲かせて、そのまま

 幸せになりなさいませ

 未来で希望、永遠とわにするまで!!!

 (っしゃっす!!!)』



なんか、オープニング始まったんですけどぉ!?」



 リモコンさえ使わぬまま、勝手に室内スピーカーから流れ始めたんですけどぉ!?

 そして、大サビだけ無限ループしてるの、バリ怖いんですけどぉ!?

 


なに!?

 どっからアドリブで、どこまでが仕込みなのっ!?

 つーか、やっぱ仲良しぎだろ、あんたっ!!

 普通、恋敵で色々って、決着までついてから、トリオも同居も有り得ねーだろ!!」

「だよねぇ。

 まぁ、それが結織ゆおりだからさ。

 あきらめてよ、未希永みきと



 何故なぜか上から聞こえた声に、振り向く。

 

 

 そこにプカプカ浮いていたのは、結織ゆおりのドッペル、友花里ゆかり

 まさか、それも記憶を宿して復活しているとは思わず、絶句する。


 

「バック・アップで復旧出来できたんだよ。

 しかも最新型、正規品にバージョン・アップ。

 痛み付けにくく、頑丈になったよ。

 タイパもコスパも、過去最強。

 これからも、みんなをサポートしてくから。

 てなわけで、4階の主、母神家もがみや 友花里ゆかりだよ。

 改めてよろしくねぇ」

「マジかよ……」

「元気になったのね。

 良かった……」

「ゆ……!!

 ……友花里ゆかりぃっ!!

 友花里ゆかり友花里ゆかり友花里ゆかり友花里ゆかりぃっ!!」

「イサキント……」



 驚く俺と、涙ぐむ恵夢めぐむを横切り。

 友花里ゆかりと手をつなぎ、踊る依咲いさき

 再会出来できて、一入ひとしおなのだろう。

 なんせ、墓まで作っていた程だからな。



 それはそうと。

 泣きながらも、サラッと上手うまいネーミングしてる恵夢めぐむよ。

 いや、まぁ、確かに、スマブ◯のトサキン◯の鳴き声みたいだったけどさ。



「ちょっと、友花里ゆかりっ!!

 なんで私より余程よほど依咲いさきと仲良くなってるのっ!?」

「日頃の行い」

「ねー」

「ねー」

「ちょっ……!!

 この、パチモン!!

 調子乗んなっ!!」



 掴みかかろうとするも、すり抜ける友花里ゆかり

 おかげで地面とキスをし、結織ゆおりさらに憤怒する。


 

「もう、い!!

 未希永みきとで、発散するっ!!」

「そんな、八つ当たり気味に誘わなくても、くねぇかなぁ!?」

「それもそうね」

「同感ですます」

いぞぉ!!

 やれやれぇ!!」

「あーもう、駄目ダメなのばっか!!」



 いよいよを以て、色々と察し、あきらめた俺。



 次の瞬間。

 3人から放たれた言葉は、勿論もちろん

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