〈Ⅶ〉謳歌嵐満で日日是好充日
〈1〉ハキダメ人間、アワバレ咲き
まるで、あれだな。
そう思いながら、俺は告げる。
「思った通り。
やっぱり、ここだったか。
気遣い屋で、遠慮しがちで、平和、博愛主義者。
そんな君なら、ほぼ間違い
どうせ、『今日が終わるまで別の町に行って、ホテルででもやり過ごして
察するに、そういう所だろう?
キャリー・バッグも
正直、
残念だったのは、勘定に入れ忘れた
俺との波長と、俺の執念深さを」
それは、「エリアから離れ、逃げ
蓋を開けてみれば、どこも不思議じゃない。
俺達は
だから、「公共機関を使って移動」するのは、決してズルではない。
といっても、違反スレスレだし、やられて面白い気分ではないが。
惜しむらくは、それすらも俺は先読みしていた
その時点で、あれでも最年長でエリートな
影でコソコソと画策し、俺を出し抜こうとした
きっと今回も、俺を欺き通す
だが、残念ながら。
今度ばかりは、そうはさせない。
俺は今、ここに1人で立っているんじゃない。
そして、
俺にフラれても、ぞんざいに無茶振りされても、協力してくれた、優しい、大切な仲間。
やっと正しく仲良くなれ始めたのに、あっという間に、その命を散らした、大切な戦友。
彼女
「……
苦し紛れなのを自覚した上で、腕を抑え、声を震わせ、
「今日、
先輩の、卒業式だよ?
中学時代から5年間も、君が絶えず憧れて止まない、
恋ではないけど、『君を好き』だと真正面から言ってくれた。
君を求めてくれた、
最後の、晴れの、舞台なんだよ?
私達『ニアカノ同盟』にとっても、最終日なんだよ?
なのに……そんな大事なセレモニーそっちのけで、
君は、こんな大切な時にサボる
主賓ほっぽって、他の女の所にホイホイ行く
そんな不義理、軽薄な人じゃないでしょ?」
「
もしもの時に備え、卒業式なら、もう済ませてある。
君の代理で
その
てか、それを言ったら、君もだろ。
君は
俺達『ニアカノ同盟』の、最後の日だと。
君だって、俺達の、
なのに、こんな所で、
「ふーん。
もう、呼び捨てにしてるんだ。
その分だと、もう心配、私の出番は
にしても、先輩だったかぁ。
私は、てっきり
「そういう話をしてんじゃねんだよ、
得意の作り笑いで、脱線させんとする
「悪いがな、
こっちも、終わらせに来てんだ。
今度こそは、年貢の納め時だ。
逃げ延びようったって、そうはいかねぇ。
互いに無傷でなんて、帰してなるものか。
今日まで俺達は、幾度と
無自覚にも、意図的にも。
それに、お前の分身を……
そんな俺達が、のほほんと、間抜け面ぁ晒して、幸せだけ享受したまま、ゴールして
俺達だって……それ相応に、背負わなきゃなんねんだよ。
罪も、痛みも、悲しみも」
「違うじゃん……。
そんなのって、
腕を振り払い、俺の体を軽く押し距離を取り。
ここに来て、やっと顔を上げ、涙ながらに、
「そうだよ!!
私は、2人を引き込んだ、巻き込んだ、抱き込んだ!!
2人は、ずっとニアカノ希望だった!!
恋にならなくても、片想いのままでも構わないと!!
ただ、これからも君の
一緒に本読んだりゲームしたりアニメ観たり、振り回したり家事やったり
それで満足、充分だって!!
なのに、私が
2人を焚き付けて、君と引っ付けて!!
自分を当て馬にする
そうする
君と、ずっと、『友達でだけいる』
その
私自身さえ、
本性が、本命がバレて、君に拒絶されるかもしれないリスクを、覚悟させてまで!!
私は、そういう人間なんだよ!!
君にあれだけの苦痛を与え、大切な仲間を、目の前で死なせた!!
君みたいな、綺麗な人間と、釣り合う
俺をベンチに倒し馬乗りになり、胸倉を
俺の顔に涙を零しながら、
「そもそも、私には
君との、印象的な出会いも!!
君との、エモい今も!!
君に好いて、愛して
私から君に捧げられる物なんて、1つたりとも
君を養うビジョンは
未来なんて曖昧な要素だけで、君を繋ぎ止めて、引き止めてなんておけない!!
その
大切な相棒を犠牲にしてまで、君に私を溶け込ませよう、刷り込ませようとした悪女!!
あまつさえ、『2人にフラれたら、
私は、そんな最低な、忌むべき魔女なの!!
私みたいな
1日でも、1秒でも早く、忘れられる、消し去られなきゃいけないんだよ!!
この世界からも、君の記憶からも!!」
「ざっ……けんなぁぁぁぁぁっ!!」
そのまま肩を掴み、俺は否定する。
「……
マジで
いっつも、いっつも、周りに合わせてばっかで!!
笑ってばっかで、
極めつけに、結構な頻度で、最悪なタイミングでばっかヘラヘラとヘラって爆弾投下しやがる気分屋!!
自分のメンタル切り取って、彼氏候補と一体化させて、自分色に染めようとするエゴイスト!!
こっちだって、そんな厄介者に、好きで焦がれてんじゃねんだよっ!!
「じゃあ、とっとと
そこまで分かってるなら、
とっとと、先輩か
私以外の誰かと、サクッとくっ付いてよっ!!
……私に、君を!!
さっさと、
私は、
そうまでしないと、君に本気になれなかったから!!
その
私は、そんな最低女なんだっ!!
君だって、そう言ってたじゃん!!
私は、君になんか、
君にフラれて、幻滅されて、叱られて、
「お前がっ!!
俺にフラれる、拒絶されるだけの理由を、他でも俺ですらない!!
お前自身が作ってんじゃねぇよぉ!!」
「俺の
お前に、好かれなくても
それだけの言動、振る舞いをしてる自覚は
けどなぁ、
ふいに、袖にする理由が、『
お前は、俺を惚れさせる、その気にさせるだけの上玉なんだよっ!!
人気
そんなお前が、自分から率先して敷居下げてんじゃねぇよ!!
高嶺なら高嶺らしく、いつもみてぇに、何考えてるのか分かんねぇ顔して、微妙に期待させて匂わせて落胆させて楽しんで、俺を
俺に『
俺に、
だったら、それを信じてくれよっ!!
ちょっとネガるだけならまだしも、そこまで落ちぶれてんじゃねぇよっ!!
そんなお前は、見たくねぇ!!
それだけは、どうしても許容、納得
そうじゃなきゃ、
お前の分身は、
「それは、君が勝手に抱いた偽物!!
単なる幻想、二次創作に過ぎないよ!!」
「させたのは誰だよ!?
それ
そもそも、俺を3人に向き合わせたのも!
俺に、
全部、お前の仕業、仕込みだろうが!!」
「君の想像力、読解力が至らないだけだよ!!
今からだって、遅くない!!
2人なら、
君と、やり直してくれるっ!!
私なんかと結ばれない方が、
お願いだから、もっと考えてよ、
「考えたさ!!
この3ヶ月!!
冬休み返上で、ノートも食事も睡眠も
その上で導かれた、最適解!!
それが、お前なんだよ、
前と同じ主張をする
中を開け、再び
レジュメだ。
3人とのアレコレをフィクションに見立て、シミュレーションした証。
給料3ヶ月分の代わりに用意した。
俺の、俺達の、3ヶ月の成果。
言ってしまえば、
再確認したよ。
やっぱり俺は、相当だ。
書いてるのは、まぁ
それを他者、しかも本人に見せようだなんて。
控え目に言って、あたおかだ。
こんなの、
自分で自分に、怖気を震う。
こんなに気持ち悪いだなんて、想定外だ。
でも、こうなるのが自然なのかもしれない。
善意も悪意も仕分けずに、ごちゃ混ぜのまま、
その線引きさえ曖昧になる
それだけ
「『やっぱり俺には、
冬休みの直前で、そう決めてた!!
だから、見詰め直そうと思った!!
お前への想いを、より強固、頑固に凝固させようと!!
その
いつぞやのトリプル・ラブレターすらも上回る、クレイジーで激痛なアイデア!!
俺は、『ニアカノ同盟』で妄想した!!
もしかしたら
阻まれる、脱線させられる危険が少しでも
個人の趣味の範囲内とはいえ、未成年の分際で、18禁にまでしたさ!!
そんな
小説、ゲーム、漫画、ドラマ、アニメ!!
色んな手法で、角度で、VR駆使して死に戻りして、何度もチェックしたさ!!
性自認、タイプの再確認さえした!!
恥ずかし
そして調査、実験結果を、そこに纏めた!!
その果てに、
そもそも、『
2人とのイチャイチャを、未来を、そんな
俺にとっては、
俺は
だって、そうだろ!?
俺は一度たりとも、お前の
最初にイメージしたのも、最長、最後に書き上げたのも、何度もリライト、リテイクしたのも、お前のシナリオだった!!
よく、『CLANNA◯は人生』って、言うけどさぁ!!
俺にとっては、お前が人生だった!!
お前だけが、俺の公式、正式だったんだよぉ!!」
「嘘……。
こんなのって……」
ただ、ただ、呆気に取られる
俺が、ここまで自分に占領されていたとは、予想外だったのだろう。
俺はずっと、自分を
恋に現を抜かし、恋に恋し、ちょっと優しくされるだけでコロッと行く、彼女募集厨。
けど、違った。
この3ヶ月で、俺は更に、
吐息なり血反吐なりを何度も吐いて、
そんな、『ハキダメ』人間になった。
我ながら、本当に……とんでもない所まで来てしまったもんだ。
これじゃあ、『
「なぁ、
これで分かっただろ?
俺は、君が思ってくれてる
こんな、『ハキダメ』人間だ。
哀れに暴れる、『アワバレ』咲き人間だ。
君の相棒が、自分を賭してまでくれたデータを、こんな形でしか参考に
逆に言えば……だからこそ、君に
冷静を装い、俺は笑ってみせた。
「どーだ、参ったか。
俺は、恥を忍んで、ここまでやってみせたぞ。
夢の中で、
君と付き合いたい。
君に、君を認めて、好きになって
その一心で、ここまでのマジキチに
これでもう、『俺に好かれるだけの理由が
俺は完全に、完膚
ここまで、君だけで一杯になってるストーカー
腰に手を当て、胸を張り、見下ろす。
「万策尽きたか?
それとも、まだ奥の手でも
もしくは、このまま逃げて、学も
勝手にしろよ。
だが、俺は負けんぞ。
地獄の果てまでだろうと、君を追いかけ続ける。
君のトラップにも、運命や神様にだって屈さん。
最後の最後の最後まで、抗い続けてやる。
それが、俺だ。
君が悪魔だろうと、引けを取りはせん」
隣に腰掛け、空を仰ぎ、俺は本心を明かす。
「正直言うとな。
俺だって、楽して、幸せになりたいよ。
家事も勉強も仕事も面倒だし、必要性と面白味も感じない。
けど、美味しい、好きな物はたらふく食べたいし、
趣味だけに明け暮れて、悠々自適に暮らしたいし、リッチにだってなりたいし、それでいて長生きはしたい。
世間からすりゃ、異端児だわな。
でも、常識外れってだけで。
だからこそ、ATMおねえさんだとか、家事万能で天使な幼馴染だとか、対価も求めずに尽くしてくれるスパダリ社長だとか。
そういう作品が主流になって、席巻してたりする。
結局の所さ……人間なんて、そんなもんなんだよ。
誰だって本能、欲望に忠実に、ヌルゲー的に謳歌したいんだよ。
でも、そんな相手が現れる奇跡は起こり得ない。
本来なら一生、縁遠いどころか、縁が
でもさ……俺には、
そんな、理想的な相手が。
目の前に、
だったら、その恩恵に、思し召しに
悪い
バッグを見ながら、開き直る。
「俺は、これだけ恥ずかしい
そんな
人前どころか、この場でさえ言えない
もう恥ずべき
喜んで、君に飼われよう。
勝負は、俺の完敗だよ、
君に家事を、俺の命を、一世一代の恋路を委ねる。
どうぞ俺を、君のヒモノンにしてくれ。
っても最低限、働かせては
その辺りは、また折を見て話し合おう。
で、その合間に、
アメリカンっぽい感じで演技をする。
さては、まだ疑ってるな?
猜疑心強いなぁ。
そういう所も、好きだけど。
「誤解すんなよ?
俺は確かに、君に負けた。
だが、人生というゲームにおいては完勝、圧勝、優勝だ。
君みたいな、声も見た目も
それも、
こんなシンデレラ・ストーリー、他に
どう考えても、男として、人間として、俺は勝ち組だ。
お陰様でな」
「こんなの……こんなのって、
私みたいな物好きは、まだ、どっかに
身バレしてないだけで、潜伏してるかもじゃん……。
でも、君みたいな奇人は……そうは
「だろうな。
そもそも常人なら、他者とのゼンシンクロは耐えられないらしいしな。
それを凌いだ俺は、やはり君と共通項が多い。
従って俺も、君に負けず劣らずの変人という
でも、
これが、俺の本心だ。
もしかしたら、まだ全部ではないかもしれんけどな」
「本気にするよ……?
容赦せずに、養うよ……?
今までよりも、
「是非とも、そうしてくれ。
その方が、俺も
そこまでしてくれるのは、信頼の証左だからな」
「知らないよ……?
私みたいな
こんな負けヒロインを、
その
これが、どれだけ罪深いか、勿体無いか……。
どれだけ
「前も言ったろう。
俺は、負けヒロインが大好きなんだ。
それに、人聞きの悪い言い方は止してくれ。
これでも俺は、少なくとも今冬からは、
「やっぱさぁ……反則だよ、こんなの……。
こんなに、私にばっか都合
あんなに、
織り込み済みではなかったとはいえ、
こんなに幸せで、愛されて……。
私……
……生きてて、
「ったり前だろ。
じゃなきゃ、俺が困る。
だって、大変に決まってるだろう。
君みたいな厄介者を、また1から探して、あまつさえ攻略し直すなんて」
「あははっ。
ひどーい」
やっとこさ、笑ってくれた
そのままレジュメを戻し、ジッパーを締め。
ギュッと抱きしめ、目を閉じる。
頃合いだと、思った。
「あのさぁ、
前に言ってた、『折衷案でも、ましてや妥協案でも代替案なんかでもない、俺達だけのハッピー・エンド』っての。
あれ、覚えてるか?」
「
「君、
不平等ってか、矛盾してね?」
「細かいなぁ。
老けるよ?
で、それが
「いや、小早川◯子かよ。
立ち返ってみるとさ。
やっぱ、無理じゃね? それ」
「どういう
俺達って、
ここで泣いたり、パニクったり、ジト
……
「『恋』なんてさ。
とどのつまり、『妥協』、『折衷』でしかないと思うんだよ。
ものっそい、個人的な感想だし、我ながら達観してるけど。
性格も、声も、趣味も、見た目も、年齢も、収入も、背景も、言語も。
それら
そんなん、土台無理な話だろ?
オーダー・メイドとは、
「うん」
「アプリとか相談所とか。
確かに今なら、そういう馴れ初めも
手間でしかないし、怪しいし、それなり以上の金額も飛ぶ」
「うん」
「紆余曲折を経て、晴れてタイプと付き合えたとしても。
実際にデートしてみたら、コレジャナイ感が凄かったり、理想と現実の違いに面食らって、失望したりする。
もしくは、
「うん」
「要はさぁ……そんな
人間の寿命、時間、テリトリーには際限が
それに反比例して、欲望やリビドー、フェチズムには無制限。
人間が、自分の
もしかしたら、誰かと触れ合う
「うん」
「そういう
その実、『恋愛』なんて、『妥協』、『折衷』でしか
青天井のオーダーから、一部抜粋して。
その条件を
他にも、少しずつ擦り合わせ、折り合いを付けて行く。
それが『営み』、『人並み』ってもんなんだよ。
てな
なぁ、
君、
今回もまた、君の言う所の『テスト』なんだろ?
君達、俺でテストするの、大好きだもんな。
3人揃って、出会い頭から、俺を試してたもんな。
でもさ。
自慢じゃないけどさ。
俺、めっちゃ頑張ったよ?
お
それでも
結果は、どうだったかな?
俺は、今度こそ、満点を叩き出せたかな?
全年齢版、及第点止まりだったかな?
君の、
少しでも、近付けたのかな?
その答えは今度、機会が
「もしかしたら、またフラフラするかもしれない。
けど、これからの
少なくとも、今の俺は、君に
だから……こんな俺で、
どうか、俺と
君のガチ勢、仲間、友達ってだけで終わらせずに。
俺の
君の自信に、してください」
自分でも、最低だと思う。
こんな上から言われて、喜ぶ相手なんて、
でも、こうするしか
ここまでしないと、
それ
だからって、無理に上げさせるのも心苦しいし。
かといって、話術やコミュ力でレベリングするのも難しい。
だったら……俺が見下げ果てられるしか、
「
自分に、自信を持てずにいるんだろ?
だから、意地でも俺を、君仕様にしたかった。
多分、普通ならさ。
男として、友達として、仲間として、彼氏候補として。
そんな君を激励したり、
俺は、ちょっと違う。
だったら、もう信じなくたって、
そう、思ってるから」
俯いていた
気を良くしつつ、けど感情的になり
「無理に変わろうとする
その
自信なんか、付けなくて構わない。
代わりに、俺を信じろ。
ひたすらに
俺は絶対、
どんだけ出し抜かれても、追い抜かれても、度肝抜かれても。
これから
俺は半永久的に、
俺の執念を、
どうか、信じてくれ」
お辞儀し、目を瞑り、祈る俺。
対する
人が一人、座れそうなサイズの、「拾ってください」とメッセージが書かれた、ダンボールを。
「……
嫌な予感を覚える俺の目の前に、箱を置く
そのまま、俺の胸に紙を貼っ付けて来たので、目線を下げて確認する。
『名前:ミキト
犬種:ヨーキー
性格:恥知らず
年齢:17歳
主食:恋愛
特技:ハーレム』
いや、性格よ。
色々とツッコミたいけど、特に性格よ。
パープル・◯イズかよ。
「
もしかして、用意してたのかなー?
やっぱり、期待してたのかなー?」
え?
だって今、ベンチの下から引っ張り出して来たよね?
この場で書いたり、してなかったよね?
ずっと下見てたのって、そういう?
しかも妙に色々置いてて、リッチだし。
マリマリマリ◯……。
「ん」
俺の質問には答えず、箱を指差す
あ、うん。
やっぱ、そう来る?
捨て犬の
「……ここ、駅ですけど?
朝5時とはいえ。
駅員さんとかは
「ん」
俺の黒歴史で満たされた、バッグを指差す
いや、まぁ、確かに言ったけども。
てか、『恥の上塗り』とも言うけども。
まさか、『恥ずかしさ』を上乗せされるとか、思わないっしょ……。
「はぁ……」
あからさまに
そのまま、周囲を確認し、コートを開け、隠していた衣装を披露。
次いで、これみよがしに片足を上げ、ハートを作り。
「あなたの心の、特効薬♪
白衣の堕天使ユオリちゃん、再臨♪」
「新撮だとぉぉぉぉぉ!?
うぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!」
仕掛けられた、巧妙な罠。
まさかの再会、完全再現に釣られ、ダンボールに飛び込む俺。
いや、すしラーかよ。
オフィスで叫ばせてた動画かよ。
こうして俺は、実にあっさりと、
めでたし、めでたし。
「めでたくねぇぇぇぇぇ!!」
「なぁに?
やっぱり、私じゃ物足りない?」
「
言動がっ!!
控え目な性格と、大胆な言動が、合ってない!!」
「わー♪
何この子、
ミキトくんっていうんだ〜♪
名前まで、
「この期に及んで、白ばっくれたぁぁぁ!?」
「もぉ。
めっ、でしょ」
「
「そうだよ。
だって、
この子の、雇い主……『
この世に、私しか
「ーーえ?」
今……カタカナじゃ、なかった?
俺の
「そうだよ。
私も、捨てたよ。
恥も外聞も、大義名分も。
その代わり……
君を……私の
私と、
今度こそ、互いに、両方の
もう、遠慮も、抵抗もしない。
そんな焦れったい
うんざりしそうな程に焦らされて、もう焦げ焦げだから。
これからは私も、ちゃんと主張する。
だから……」
玄関のドアみたいに、俺の目線の高さで穴を開け。
満面朱を注ぎながら、
「あなたの、ご主人様になる代わりに!!
私の、主人に!!
旦那様に、なってください!!」
答えを聞かず、脇目も振らず。
正確には、俺を梱包しているダンボールに。
えと……これって、もしかして……。
今度こそ、
「こ、こらぁ!!
そこで、
「げっ!?」
視界が狭くなってても、読み取れる。
どうやら、駅員さんの目に止まったらしい。
そらそーだよなぁ。
そもそも、こんな朝早くに、男女の学生が逢瀬してる時点で、グレーだったろうしなぁ。
「やれやれ。
やっぱり息苦しいなぁ、現世は。
よいしょっと」
俺が入ったダンボールを小脇に抱え。
アメフト選手顔負けの速力で、綺麗なフォームで、全力ダッシュを開始する
いや、フィジカルおかしない!?
そういえば、2階から落ちた俺をキャッチしてたっけ!!
「ねぇ、
今後の私達について、もっと話したい」
「そ、その前に、逃げてくれぇ!!
あと、少しは寝かせてくれぇ!!」
「……エッチ」
「違ぁう!!」
「……お
「詰んだ!!」
こんな会話をしつつ、
この子、人力車とか向いてるんじゃない?
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