〈4〉コード『レイン・カーネーション』

 俺は、走った。

 ただ我武者羅に、ひた走った。

 

 

 ずは校内で、教室や部室、体育館に屋上。

 次に町に出て、一緒にデートしたスーパー、カラオケを探索。

 続いて、4人で出掛けたプールやプラネタリウム、レストランや水族館。

 その間、彼女の家に電話し、不在なのも確認。

 果ては、俺の自宅まで。


  

 けれど、見付からない。

 彼女のた痕跡さえ、見当たらない。

 どれだけ駆け巡っても、協力を仰いでも、通りすがりの人に尋ねても。

 彼女に、辿り着けない。

  

 

 それでも、俺はあきらめない。

 補導されないようけながら、なおも捜索を続ける。

 駆けずり回って、どこもでも追い掛け、追い詰めんとする。



 そうこうしてる間に、今日が終わる。

 4人で決めた、誓約の日が。

 友花里ゆかりと、確約した日が。

 彼女に思いを伝える、ラスト・チャンスが。



新甲斐あらがいぃっ!!」



 やにわに届く、七忍ななしのの絶叫。

 次いで鳴り響く、時計塔の音。

 24時を示す、ベルの音。



 彼女への恋心を、否定する音。



 俺は、泣き叫ぶことも出来ず立ち尽くし。

 やがて、崩れ落ち。

 合流した2人と共に。

 無力感と絶望感に、押し潰される。 

 

  

 それから、しばらくして。

 時の移ろいと共に、失恋の傷が薄れ。

 いつしか俺は、片方と付き合う。

 初めは、どこか惰性、消去法めいていたけども。

 後に本気になり、結婚し、子供も出来できて、そこそこ幸せになる。


 

 ーー大方おおかた、そんな所なのだろう。

 彼女の思い描いていた、これからの、俺達の結末は。


  

「……え……?」



 プラット・ホームに現れた結織ゆおり

 2ヶ月半りに現れた彼女は、さぞかし驚いたことだろう。

 息も切らさぬまま、始発さいしょから俺が、そこで待ち伏せしていたことに。



「迎えに来たよ、結織ゆおり

 かれこれ2ヶ月半……2年も待ち続けたんだ。

 もう、君を待たせない。

 ここらで、終わりにしよう」


 

 1年前から本格始動した、俺の恋愛ごっこ。

 その終着点に今、俺は足を付けた。



 アンカーは、アンサーをたずさえ、結末へと。

 女神は、最終章の今、標的となり。

 逃げ延びていたものの、好敵手に逆戻りし。

 1年越しに、ついに始まる。



 俺と結織ゆおりの、《ほんとう》のラスト・バトル。

 あの日、持ち越しとなった、リベンジ・マッチが。

 俺達『ニアカノ同盟』の、運命の時が。

 世界を変えて、終わらせて、遙か未来へと旅立つ日が。

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