〈2〉衝撃ハブライカン!!

 前回までの『ニアカノ』。



 俺は高校生ダンディ、新甲斐あらがい 未希永みきと

 妹と同級生と先輩と学校に行って、3人の怪しなドン引き現場を目撃した。

 駆け引きを夢見るのに夢中になっていた俺は、玄関から忍び寄る、もう一人の結織ゆおり気付きづかなかった。

 俺は、その結織ゆおりに紅茶とクッキーと煮え湯を飲まされ、目が覚めたら。

 部活の寿命が縮んでしまっていた。



 見抜いた真実は、たった1つ。

 俺が所属する文芸部は、廃部通告を受けたからだ。

 (参照:『恋探偵ジョナン』)



 いや、マジでなにしてんだよ、本当ホントに。

 なんで、こんなことになってんだよ。

 なにも、そこまで元ネタ変す◯に寄せなくてもいだろ。



「この仕打ちは、不当よ。

 あたしたちなにもしてないわ」

「そうですね。

 むしろ、だからこそ今、追い詰められてるんですけどね。

 部活として、なんの功績も残してないからこそ」

「いっ……今の、こんにゃ◯っぽい!!

 つぐ◯寮が解体されたルートの、三田◯茜とのやりとりっぽい!!」

DAMARE



 なにはさておき。

 こうして俺達は、ず文芸部を救うことにした。

 そのためにも、それぞれに作品を用意してもらった。

 のだが。



「……恵夢めぐむさん。

 なんですか? これ」

「見ての通り。

 あたしの、力作よ」

「確かに、出来できてはいますね。

 実に惹かれる文章、ストーリー、ボイスですね。

 でもこれ、ピシゲですよね、18禁ですよね?

 俺達、真面まともな作品を生徒会に提出しなきゃなんですよ?

 なんでこんな、校則どころか法律すら違反してそうな代物を用意したんですか?」

「問題いわ。

 あたしの自信作だもの。

 名作は、すべての法則、偏見、垣根を凌駕するのよ」



 話になんねぇ。



「で、結織ゆおり

 これは、なんだ?」

「小説を書いてみましたぁ。

 それも、ちゃんとニーズに合わせてぇ」

「いや、うん、確かに面白いよ。

 短いながらも綺麗に纏まってて、驚いたよ。

 でもこれ、官能スレスレだよな?

 主人公、思いっ切りクズいよな?

 こんなの、出せると思うか?」

「え?

 だって、生徒会長、NTR好きでしょ?」

「ねぇ君、変す◯学園からの刺客なの転校生なの交流性なの?

 内の生徒会長、人格者だよ?

 その人や、君達とはわけが違うんだよ?

 はっ……! さては、また友花里ゆかりちゃん!?」

「キレるよ?」

「誠に申し訳サーセンしたぁっ!!」



 洒落になんねぇ。



「で、依咲いさき

 これは、なんだ?」

「飽きさせぬよう、漫画をこしらえて来たでござんす。

 ヒュール、ルールルー、ルルーン」

い配慮だ。

 向こうも、書類とかばっか見てて、活字に飽きてるだろうしな。

 で、なんでこれ、ワタモ◯か俺ガイ◯ふうにしかなってないの?」

「気にしたら負けです」

「しなくても負けるんだわ」



 当てになんねぇ。



「ていうかさ!!

 みんな本当ホントに分かってる!?

 このままだとうち、廃部だぞ!?」

「どうせあたしは、あと1年で卒業だし。

 この部にも、先輩達にも顧問にも、特に思い入れいし。

 内定もしてるから、常識の範囲内で、アラタくんたちと遊び呆けるってのも一興よね」

「これを期に、私の所属してる家庭科部に転部するのはどうかなぁ?

 それなら、出来立てのお料理を合法的に未希永みきとくんに食べてもらえるしぃ、共同作業と餌付けと牽制も出来できるしぃ。

 なにより、私の花嫁修業もはかどるっていうかさぁ」

「別に学校なんぞくても、サキは困りまセクレトル◯。

 今のサキには、為桜たおとしての身分も、ラジオもりますしラー。

 むしろ、このままカイせんとサキが退学になってくれた方が望ましいまでアルヴィス。

 推し活にも専念出来できるし、より長く堂々とカイせんられますし、打って付けでヤンガ◯」

あきらめんなよ、決め付けんなよっ!!

 まだ、『退学』とまでは言われてねぇんだよぉ!!

 てか全員、もうちょいやる気出せ、危機感持てよぉ!!」

「カイせん、『無頼漢』『悪代官』ですね。

 しかも、『廃部』寸前の時に、『ハブ』られてて。

 略して、『ハブライカン』ですね。

 部活崩壊まで、あと7日。

 カイせん、そろそろまじめにやってもらっていいですか・・・。

 さもなくば、カイせんならぬカイサンですよ?」

真面まともに動いたのが逆に阻害要因になって、いわれなき邪悪認定って、理不尽ぎやしねぇかなぁ!?

 なぁ!?」



 よし。

 作戦ろせん変更しよう。



「じゃあ、あれだ。

 他の、まだ部員なり予算なり知名度なり足りない所と合併して、どうにかするか?

 えず、難を逃れさえすればわけだし」

「それなら、『トッケン』一択です」

「『トッケン』?」

「我が『ハナコー』の誇る、『特撮・ヒーロー研究会』のことです。

 確かそちらも、深刻な人員不足により、本年度から廃部だったはず

 ただ、『トッケン』を復活させるべく、何人かの新入生が、有志で動いているとのこと

 そこと提携を結べば、ワンチャンでは?

 近年の特撮は、漫画や小説、文芸面にも力を入れてますし、工面しやすいかもです」

「ナイスだ、依咲いさき!!

 それで行こう!」

「イェーイ。

 カイせんのナデナデ権、ゲットー」

「そんなシステム、いけどな!」


 

 お手柄なので、ナデナデはしておく。

 なにやら、恵夢めぐむさんが妬いたり、結織ゆおりが不気味に笑ってるが、流しておこう。


 

「こんなことろうかと、有志の情報を拾って来ましたです。

 ターゲットは、4人。

 今から各自に接触し、あわよくば抱き込んで来るで候」



 鞄からプリントを出し、テーブすルに広げる依咲いさき

 そこには、彼女の言葉通り、『トッケン』の部員たちのプロフィールが纏められていた。



 ……もしかして、なんだかんだで一番いちばんなんとかしようとしてた?



「じゃあ俺は、灯路ひろくんに声掛けてみるわ。

 男同士のが、首尾良く運べるだろ。

 詳しく聞いとらんが、いわく付きみたいだけど」

「しからばサキは、月出里すだちさんとやらに謁見して来ますです。

 調査当初から、彼女のアイテムに興味津々、意気揚々でし」

「じゃああたしは、この院城いんじょうという子にアタックして来るわ。

 中々のバーストをお持ちだし、揺らすのが楽しみね」

「となると私は、刃舞はもうさんだね。

 見るからにギャップ激しそうで、親近感湧くなぁ、駄目ダメにしたいなぁ」

「……全員、理由、ひどくね?

 スカウトとして、心許こころもとなくね?」



 なにはさておき、行動開始。

 そして数時間後、それぞれに部室に帰還し。



「……ごめん。

 ちょっと、無理っぽい。

 灯路ひろくん、自分の意見、てんで言ってくれない。

 俺を優先してばっかだし、曖昧にしか答えてくれないし、質問に質問で返されるし、話を逸らされてばっかだった。

 なんだよ、あの、男版結織ゆおりみたいなの」

「あははぁ。

 ひどいなぁ」



 笑いつつ、影で俺の背中を抓る結織ゆおり



「私も、思わしくないかなぁ。

 治葉ちよちゃん、中々どうして曲者でさぁ」

「その割には随分ずいぶん、親しくなったみたいだけど?

 すでに名前呼びしてるし」

「だって、格好かっこいし、強いんだよ!

 スラックスも、バチッと決まってるし!

 それに、キックすごいし、まさかの世話焼きイケジョなママ属性だったし!

 今度、特訓デートして、護身用に格闘技、伝授してもらうんだぁ♪」

「ただでさえ最怖、大凶なフィジカルお化けなのに、物理スキルまで身に付けてどうすんだよ」

「ん〜?」

なんでも無いです本当ホントサーセンした足踏まないで痛いからマジで」



 はい、次ー。



恵夢めぐむさんは、どうでした?」

「噂にたがわぬマドンナっりだったわ。

 あれなら、来年の『ハナコー』も安泰ね」

「すいません、く分からないです。

 ひょっとして、『王女が可愛かわいいから国もたくましい』っていう。

 サン◯のアラバス◯理論ですか?」

「それに、その、なんていうか……。

 あの子も、委員長気質、八方美人な所為せいで、苦労人でねぇ……。

 似た立場だから、あたしあたしぃ……。

 ……強く、出られなくってぇ……。

 あの子の身の上話、聞かされたら……。

 勧誘なんて、とても、とても……」

なにったってんですか……。

 ああ、もう、泣かないでください。

 ほら、ティッシュ。

 こっちは平気なので。

 しばらく腰掛けて、落ち着くまで休んでてください。

 すみません、思い出し泣きさせちゃって」

「み、未希永みきとくぅん……。

 私も、泣けて来ちゃってぇ……」

「うぇーん。

 カイせん、うぇーん」

女の涙カマトトの叩き売り、粗製乱造、職権乱用止めろ。

 あわよくばイチャらせようとすんな。

 空気読めよ、薄情共。

 それでも仲間か、お前



 依咲いさきにチョップ、結織ゆおりに寸止めし、次ー。



「ほいで、依咲いさき

 さっきから気にはなってたが。

 頭に付けてる、それ……」

「『キブンガー』でげす。

 愛好、友好の印に、もらったでやんす。

 勿論もちろん、使い方も教わり、マスター済みです」

かったな。

 で、合併の話は、どうなった?」

「テヘペロスペロー」

「おい、発案者!!

 さては、ずっと『キブンガー』で遊んでただけだな、貴様!!」

「『遊んでた』とは失礼です。

 真由羽まゆはは、様々な要因により、コミュニケーションが不得手ふえてなんです。

 そんな彼女を支えるために、お父さんからもらったツール。

 それこそが、『キブンガー』なんです。

 いくらカイせんでも、言ってことと悪いことります。

 今ぐ謝罪、猛省してください」

「思いのほか重かった、知らなかったとはいえ失言だった、ごめんなさい!!」

「というわけなので、交渉決裂。

 そもそも、交渉してすらいません。

 ちゃんちゃん」

手前てめえぇっ!!

 お涙頂戴ちょうだい仕立てでたばかった上に折角せっかく、増やせた友達売りやがったなぁっ!?」

「ちょっと!

 なんで、依咲いさきちゃんだけ塩分濃度上がってるの!?

 私にも、しお対応してよっ!!」

うるせぇ、引っ込んでろ!!」

「それよぉっ!!

 今の、ママ的にポイント高いいわぁんっ!!

 そういうの、もっと頂戴ちょうだいよぉ!!

 ゾクゾクするぅ!!」

「……ねぇ。

 あたしも、話し合いに参加してもいかしら?

 落ち着いたのに、気が休まらない」



 接触の結果。

 戦利品=『キブンガー』、3人のRAINレインID。



 余談だけど。

 俺、灯路ひろくんにかなり嫌われてるな。

 俺だけIDすらもらえなかった辺り。

 まぁ、妙な噂は多かったけども。

 なにも、そこまで壁なり距離なり作らんでも……。



「おー。

 全員、そろってるなー。

 生徒会に出すための小説、即興だけど用意して来たぜー。

 これなら、行けるんじゃねーか?」



 と。

 ここまで来て、不意に現れた七忍ななしのが、またしても便利スキルを発揮。

 特に問題が見当たらない、それなりの出来できと内容だったので、ぐに採用となった。



 その小説を預かった結織ゆおりが、提出に行き。

 割とすんなり、帰還した。



「ただいまぁ。

 七忍ななしのくんの拙作せっさく、届けて来たよぉ」

母神家もがみや、言い方っ!!」

「気にすんな、七忍ななしの

「お前が決めんな、新甲斐あらがい!!」



 騒ぐ七忍ななしのを落ち着かせ、着席させ、俺は結織ゆおりに尋ねる。



「にしても存外、早かったな、結織ゆおり

「あー、うん。

 巡回してた、侍っぼい風紀委員さんに捕まっちゃってさぁ。

 事情を説明したら、『代わりに届けてくれる』って。

 い子だよね、彼女。

 私、助かっちゃったぁ。

 これで、もっと未希永みきとくんと一緒にられるぅ」

「……あ」



 ……しまった。

 中々に溶け込んでるから、忘れてた。

 そういえば結織ゆおりは、去年からここに来たばっか。

 それに、ここから中学までは距離がる。



 つまり……あの風雲児について、知らないんだ。



「おまっ……!!

 そいつ、士雨しぐれ 風凛かりんじゃねぇか!!

 風紀委員のりしてる偽者!

 本家に断られた、非公式だよっ!!」

「……え?」

「それだけじゃないです!

 現在、彼女もまた、『トッケン』の仮入部員!!

 そして、文芸部が復活したら、『トッケン』が危ぶまれる!!

 つまり、自分のテリトリー可愛かわいさに妨害、隠蔽工作されるかもですっ!!」

「え〜っ!?」

「こうしてはいられないわ!!

 急いで追い掛けてめに、確かめに行くわよっ!!」

「余計な手間増やすなです、コスプレ女!!」

「ごめんなさぁい!!

 それはそうと、もっとなじってぇ!!

 そして、私にすがってぇ!!」

母神家もがみや手前てめえ!!

 想像以上に残念だな!!

 この期に及んで、そのざまかよっ!!」

「あ、ごめん。

 ゴンちゃんは、パスで。

 チェンジで、お願いしまーす。

 私さぁ。君みたいな自立した人間は、一向に響かないんだよねぇ。

 なんかぁ。私を求めてくれそうにいってーかぁ」

「呼び方逆戻る程にヘイト、ロット買いしたぁ!?」



 七忍ななしの、ざまぁ。



 それはそうと。

 あわてて、全員で駆け出す俺達。

 結局、くだんの小説は、無事に生徒会に渡っていた。

 杞憂ではあったが、彼女が全員の塊だったおかげで命拾いした。



 そして、文芸部の活動も、なんとか認可された。

 ちなみに、『トッケン』の方も正式に復活したらしい。

 互いに無事に済んで、なによりだ。



 お祝いに、どこかでパーティをすることとなった。

 その開催地として、俺はカラオケを提案した。



 ここでラブソングでも歌えば、それっぽい空気になるはず

 そしたら、もしかしたら個別ルートに突入。



「それでは!

 これより、『第1回替え歌フェスタ』を開催する!!

 ルールは、簡単!!

 よりウケた方が勝ち!! 

 総員、心して掛かれっ!!」

「イエーイ♪」

「ウェーイ」

「……」



 しませんともさ、ええ。

 だって、俺達だもん。

 分かってたけどね、うん。



 べ、別に、期待なんかしてないんだからねっ!!

 全然、てんで、ミジンコ、ちっとも、少しも、これっぽっちも!!

 嘘だけどね!!

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