〈2〉「男子向けラブコメで男しか居ないとか需要、やる気ある?」的な箸休め&おさらいの使い回しと回想だらけの作画崩回(正直スルーしてもカットしても問題無い低予算で低燃費な伏線回収&コタエ合わせを添えて)

「ちーっす。

 そこそこイケボ一丁、お届けに上がりましたー」

「間に合ってます」



 部屋に入って早々に巫山戯ふざけことを抜かす七忍ななしの

 その顔を、俺は一点の曇りもく、ドアで挟んだ。



「こっちは、真剣に悩んでるんだ。

 本当ホントは、もっと真面まともな人選をしようとしたが、のっぴきならない事情により、消去法で、仕方しかたく、背に腹は変えられず、嫌々、渋々、億劫、愚行に思いながらも、てんで当てにしていない、期待していないながらも、苦渋の決断で、お前を選んだんだ。

 だってのに最初から、そんな調子で来るようなら、もうよう済みだ」

「お前のその、俺に対してのみ発揮される際限無い無遠慮さは一体、なんなの!?」 

「喜べ。

 最近、もう一人増えた。

 フォルゴ◯もどきがな」 

「知るかっ!

 つか、巫山戯ふざけたくもなるわっ!

 今、何時だと思ってるんだよ!

 十時だぞ!? 夜中の十時っ!

 そんな時間に、唯一の休日、日曜日を前にして突然、特に約束も予定も前兆もく、『わけは聞かずに大至急、駆け付けろ』って強要されたら、誰だって、こうまでしてでも怒りを誤魔化ごまかしたくなるわ!

『俺、怒ってんだぞ?』アピールを遠回しにしたくなるわっ!

 おまけに、そんな無茶振りされて、加えてまぁまぁ離れた場所に住んでる割には、早かったし!

 緒にて恥ずかしくない程度には、身支度も整えて来た方だろ!?」

「それもそうか」



 正論でしかない七忍ななしのの意見を聞き、俺はドアから手を離す。

 結果、力尽ちからずくで部屋に入ろうとした七忍ななしのは、勢い余って、そのまま倒れた。

 その姿は、実に情けなく、頼りなく、呆気無く……。



「……ごめん。

 やっぱ、お前じゃ駄目ダメだわ。

 帰ってくれ」

「お前は一体、俺の何が、そこまで不満なのっ!?」

「そんなこといさ。

 お前は、実にく働いてくれた。

 来てくれただけで、充分だ。

 世話をかけたな。

 さぁ、帰ってくれ」

「帰れっか!

 言っとくけど、お前から詳しい諸々聞くまでは、帰らないかんな!?

 憐れむような目ぇすんなしっ!

 大体、なんだよ、今回のサブタイ!

 今時のラノベばりに無駄に長いし、ただただだだ滑ってる上に意味不明だし、やる気無いのはタイトルの方だし、そもそもケータイ小説じゃ作画とか分からんし、作画崩ってのがドヤってるっぽくていけ好かないし、久しぶりの出番が手抜き回とか、巫山戯ふざけんなし!」

なん文字でタイトルに制限入るか試したかっただけらしいぞ」

「だろうな!

 てか調べろよ、ものぐさめ!

 まぁ、それはさておきだな!」



 そう言って七忍ななしのは、部屋の中央に移動し、目を閉じ腕を組みつつドカッと胡座を組んだ。



 ……こいつ、なんだかんだで、やつなんだよな。

 俺にとって唯一の同性の親友を、やれてるだけはる。



「てか、新甲斐あらがいさんよぉ。

 リアルな話、なんったんだべ?

 でもってぇ。

 察するに、女性陣や両親には、とてもじゃないが聞かせられないってか?

 だったら現状、お前が相談出来できそうな手札は、もう俺しか残されてないんじゃないの?」



 俺の心を見透かすように片目だけ開け。

 面倒そうに頭を掻いてから、七忍ななしのは語る。



「だったらさぁ……さっさと腹ぁ割ってくれ。

 こちとら、それなりに覚悟も予測もした上で、ここに来てるわけよ。

 だから、お前の心を掌握してる、悩みの種ってぇのを、とっとと取り除かせてくれ」

「お前エンディング間近だからってここぞとばかりにポイントと尺稼ぎに勤しむなよドヤ顔痛々しいぞ七忍ななしのの分際でどうせお金は稼げないくせみじめだぞどうせお金は稼げないくせに」

「誰がノーギャラ声優気取りボイスだよっ!?

 てか、溜めどころか余白すら与えられないなら、せめて区切ろっか!?」


 

 七忍ななしのごときが高望みするんじゃないよ。

 冴えカ◯かみさ◯デア◯とのま◯よりは出番るだけ増しマシだろ、調子乗んなよ?





「じゃあ、言われた通り、全てを明かすとするが」

「お、おう。

 ところで、新甲斐あらがい?」

なんだよ。

 お前が言ったんだろ? 口を挟むなよ」

「いや、まぁ、それは悪いんだが。

 なして、寿司が?

 え、出前?

 取ったの? 今?」

「気にすんな。

 1章いつかのお詫びだ。

 さぁ。じゃんじゃん、つっついてくれ」

「お前の対応の寒暖差、糖分の濃度差で俺、風邪引きそう……」

「見舞いには行かんぞ?」

「せめて今だけは塩対応ストップキャンペーン、継続徹底しろよぉ!」

「センスいなぁ。

 いから、さっさと食べろって」



 と、こんな感じで軽く喧嘩しながら、俺は七忍ななしのに経緯を説明し始める。



「これは、俺の話なんだが」

「ちょっと待て。

 こういう時って、『これは友達の話なんだが』。

 とかなんとか、見え透いた嘘から始めるのが、通例じゃん?」

「知るか。

 いから、黙って聞け。

 で、話を戻すぞ?

 突飛なのは百も承知だが、七忍ななしの

 お前の身近にる三人の女子が、同日に連続で告白して来たとする」

「はい、ダウトー。

 そーんな、交際経験は皆無なくせして片思い経験だけは豊富で、それでいて彼これ十二年くらい恋愛ニートでラブコメにどっぷり漬かってる中年男が考えたような、ひたすら都合のみがい展開、あるわけいだろ?

 お前、おちょくるのも大概にせぇよ」

「『仮に』の話だ。

 いから、聞けって」

「へーへー。

 ほんで、続きは?」

「そのヒロイン達の求める理想像が、揃いも揃ってアレってか、どうにも恋愛とは結び付かなさそうだったら。

 どうする?」

「具体的に言われないと、分からないだろ。

 てか大方おおかた庵野田あんのだ先輩と母神家もがみや多矢汐たやしおちゃんだろ?

 一体、どんな要求されたってんだよ。

 察するに、『御主人様』、『偽彼氏兼奴隷』、『お兄ちゃん』って感じか?」

「『同士』と『ヒモ』と『最推さいおし』だ」

「……あんだって?」

「『同士』と『ヒモ』と『最推さいおし』だ」

「あー……それは、そのぉ……」



 一旦、箸を止め、思考する七忍ななしの

 当然のリアクションぎてなにも言えんし、想像通りなので、特に触れずにおいた。

 やや経過してから、七忍ななしのは再び寿司に手を動かす。



「……なに

 その、出落ち、一発屋もい所な、中途半端な設定……。

 てか、同士せんぱい最推たやしおちゃんに反して、ヒモもがみや……。

 分かりやすさとインパクト、おかしぎるだろ……。

 理解は出来できんが……。」

「そこは、俺も全面的に同意する。

 だが、現にそうなんだから、どうしようもない。

 あと、安心しろ。

 同士はさておき、最推さいおしに関しては、未だにく分からん。

 てか正直、あの子、そこまで深く考えとらん」

「ふーん。

 まぁ、何となくは分かったわ。

 どうせ、大人な先輩に、気遣い屋の母神家もがみや、お前にだけ忠実な多矢汐たやしおちゃんに、真面目まじめなお前のことだ。

 軽くお試しデートでもして、合ってた子と前向きに検討してみるー、なーんてことになったんだろ?

 で、先輩と多矢汐たやしおちゃんはどうにか凌いだが、譲ってばっかだった母神家もがみやで縺れて、その状態で『答え出せ』って言われたってんだな?」

「ま、まぁ……そんな感じだ。

 にしても、大した観察力だな、七忍ななしの

「お前が分かりやすぎるだけだってーの。

 っても、まぁ……母神家もがみやは、そうでもないか。

 ディスってるってんじゃないが、よぉ分からんからなぁ、やっこさん。   

 多矢汐たやしおちゃんとは違う意味で。

 なんてーか、こー……。

 フレンドリーな割りに、どっか一線引いてるってーか、一歩引いてるってーか。

 ぶっちゃけ闇深そうってーか……」

「それは、まぁ、確かに……」



 そこまで七忍ななしのに諭され、はたと気付きづいた。

 何かが、おかしいことに。



「どうした? 新甲斐あらがい

 なんか、作画も気持ち、直ってるよーな……」

「なぁ……七忍ななしの

「ん?」

「お前が、俺達の中からリーダーを選出するなら、誰にする?」

「そりゃ先輩一択だろ。

 普段の先輩は、冷静だし、最年長だからな。

 同士云々や揶揄からかい癖や受験生ってのは置いといて」

「じゃあ、もし仮に、告られた翌日に、俺が皆に告られたのを三人が知らなさそうな状況で、俺達四人のグループSIGNサイン出来できてたら?」

「は?

 おかしいだろ。作為的過ぎるわ。

 ネットとか噂好きってのを判断材料に入れても、溜飲が下がらん。

 それに、俺が思うに、三人とも、秘密裏にお前を物にしようとするんじゃないのか?

 その方が、阻まれずに済むからな」

「極めつけに、そもそもの話なんだが……。

 そんな感じで、俺が半ばハーレムみたいになってるのを知らずに。

 同日に、ねんごろな異性が三連続で告白して来るなんて。

 そんな誤算が、有り得るか?」

「……いな。

 いくなんでも、話が上手うますぎる。

 それこそ、誰かの策略」



 そこまで言って、七忍ななしのなにかを察したらしく、口をつぐんだ。



 どうやら、七忍ななしの気付きづいたらしい。

 今回の一件に隠された真実、陰謀。

 そして……黒幕に。



「おい……。

 まさか……」

「ああ……。

 どうやら、どうにも、そうらしい……」

「だよな……。

 もう、それしか考えられない……。

 でも、なんで……?」

「さぁな。

 本人に聞いてみないことにはな」

「っても……素直に話すと思うか?

 さっきも言った通り、他の二人も大概だが。

 向こうは特に難航、難攻不落だぞ?」

「挙げ句の果てに、現状が現状だ。

 余計に難儀だろうな。

 だが……かと言って、無視するわけにも行かん」



 立ち上がり移動し、鞄を開け、ピンチを打破するための秘密道具を取り出す。

 それを見た瞬間、七忍ななしのは、これまでで一番いちばん、引き攣った顔を見せ、腰を抜かし、両腕で上体を支えた。



新甲斐あらがい……お前もお前で結構、アレだったのな」

「ああ。

 出来できれば俺も、これだけは、是が非でも秘匿し通したかったんだかな。

 だが、向こうが手の内を隠している以上。

 ずこちらから攻めなくては、始まらんのでな」



 ひょんなことから始まった、この素っ頓狂な二週間。

 その終わり……答え合わせの時がいよいよ、刻一刻と近付いていた。

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