〈4〉サキガケル思い
『
『gate』『get』『Target』『forget』から名付けられた、若者を中心に大ブレイク中のアプリ。
リアルタイムに話すだけで、顔出しせずに、誰でも気軽に配信可能。
バックグラウンド再生は勿論、スマホの画面をそのまま配信する
それぞれの会社から承諾を得ているので一部、ゲームやアニメのツッコミないしは実況、カラオケなども
ライブだけでなく、お題に沿ったボイス・メッセージを送ったり、
他にも、今をときめく超人気声優が毎週、冠番組を行ってたりもする(アーカイブも無期限で残る)。
そんな感じの『
「『
サキの、ラクラジー。
という
……うん、まぁ。
そういう
「おっと。
高速高価スパチャ、あざっす、ナイスパ、ナイバズ、ナイショーでーす。
『その課金、先々まで大事にするですぜ』。
でも、先に自己紹介させて欲しいでごんす。
『
ナビゲーターは、皆さんご存知。
楽に気楽にバリ楽しくがモットー、『
そして」
「ま、マネージャーの、ミキです……」
わー。
我ながら、変な声ー。
まだ慣れなーい。
「という
この番組は、『レトゲーを神ゲーに』でお馴染み、『
もう何度目かも分かりませんが、いい加減、ここら辺、録音で流して欲しいです。
そんな、本音はさておき。
今日も、リスナーの皆さんのパートナーたるパーソナリティ、パーソナーを心がけつつ、緩くやって参ります。
ご新規様、ハー落ち、初潜、ステルス、流れ星、階段投げ、ヘラ投げ、枠周り、寝落ち、無言入室、無言退出、宣伝、コラボ、
但しアンチ、荒らしなど、周りの迷惑になる行為は固く禁じます。
不審、不愉快な言動を取った方は、見付けた時点で直ちにキック、及びブロックさせて頂きます。
という
いつもの、行きますか」
「「『あなたをターゲット、数多をフォーゲット。
レディオで、レディー、オー』」」
うん。
今日もタイミング、ばっちりだ。
「どうぞ本日も、平和に、自由に、気楽にお寛ぎ、お付き合いください魔閃こんにち殺法ー」
「よろしくお願いしまーす」
さて。
そろそろ、現状を説明しよう。
俺は、
……ボイス・チェンジャーによってバビってる状態で。
誤解をしているだろうから、言わせて
別に俺とて、好きで脳トロさせられてる
「高校生になるし、
そこそこイケボだった
本来の趣旨も忘れる
「お前の古風な口調で萌え声で喋り出したらバズるんじゃね?
リアクションが可愛いサラリーマンの父親が、そんな感じで娘とゲーム実況者やる漫画、見た
と。
そんな
と初めは相手にしていなかった。
が、試しにやってみると、意外や意外。
今までの変動の無さが嘘みたいに伸び始めた。
これに味を占めた俺ことミキ。
こうしてアニ声を武器に、未だに
まぁ……だからって、この声で、他の実況者のマネージャーまでやらされるとは、思いもよらなかったのだが。
しかも相手が、今や超絶人気ゲーター、サキだなんて。
安全を確認したら、引退する予定だったんだがなぁ。
「さてさて。
本日も仕方なく始めます。
いやね? 毎度毎度の
内の姉が、またしても飽きもせず、あの有名ゲームを無課金仕様でリメイクしよーってんじゃありませんですか。
て
もう何度目かも分かりゃしませんが。
この枠で、その紹介、及びフライング実況しろってぇ
どう思う? ミキせ」
俺に話を振ろうとした
かと思えば、明らかにムスッとした顔色を見せた。
あーあ。
俺、知ーらなーい。
「パパ上、ママ上。
ちーっす、お疲れ様ー。
晩ご飯、ちゃんと食べたぁ?
ところで、
大分お覚悟して首洗って
補足、及び改めて解説しておこう。
ここで言う『パパ上』『ママ上』とは、
彼女が扮する我が家の偽妹、
あー……。
これは、確実に、あれだな。
この前、
てか、揃いも揃って何やってるんだ、内の親は……。
まぁ確かに、
てか、実の息子の方は無視ですか。
いや、女装っぽい
「おっと。
ご機嫌取りをするかの
ナイスパです。
『あなたはもう、サキズキ超えて嫁通り越して、お気サキ様です』。
決して、ヤンデレでモンペなサバ読みコスプレJKになんか負けないので」
「違うから!?
ちゃんと現役だから!
度を越して大人っぽいだけだからぁ!
あーもう、コメ欄が質問、追求、
お願いだから、どっちも止まってくれぇぇぇぇぇ!!」
「なお、ヤンデレでモンペなのは
「だ〜か〜ら〜っ!!」
その辺にしとけって!
君のファンの中には、俺のクラスメイト達だって
『くれぐれも内密に』とは頼んであるけど!
そこから仮に、
教えてないのに、俺の自宅に平気で来て、両親を勝手に懐柔する
「新妻気取り
もうこれ、締めて良いんじゃないでしょかね? ミキ先。
今からやっても、消化試合ってか、惰性感が夥しいと思うんでございますですよ?
ね? 先輩」
「あ、あの、サキさん……。
いい加減、先輩扱いは、ちょっと……」
「
ミキさん、サキより早くゲーターしてましたし、100仲間じゃありませんですか」
「俺の場合は、100人ちょっとなの!
でも、サキさんは違うでしょ!?
同じ100でも、そっちは後ろに『K』が付くでしょ!?
3桁違いだよ!?」
「おっとぉ。
またしてもバビってるのが露呈したぁ。
そんなだから先輩、サキのマネやってても、未だにファン数が伸びませんですよ。
その手のキャラって、
「誰の
ねぇ、誰の
「付け焼き刃で浅はかにも愚行、曲芸に驀進した、カイ
「プライバシー!!」
「はい、愚行については認めましたー。
マジ、プギャー」
もう少しだったのに……。
ルール違反スレスレとはいえ、もう少しで
サキとの初コラボで身バレして以降、
「さてさて。
ばくれつカブトムシ、ベロリンガ寿司、ファミスタの雪合戦、ピカチュウげんきでちゅう、スーパーモンキーボールのモンキーファイト、ファイナルファイト、じゃんけんシューティング、奇々怪界 月夜草子、邪暗拳、モグラ〜ニャ、ミッキーのマジカルアドベンチャー、グーフィーとマックス海賊島の大冒険、モンスタ〜タクティクス、ザ・ファイヤーメン、ゼノギアスのバトリング、クラッシュ・バンディクーカーニバルのタマやホッピンやタンクやレーサー、ゆけゆけ!! トラブルメーカーズ、武蔵伝、ロックマン バトル&チェイス、チャリンコヒーロー、ボンバーマン ファンタジーレース、ESPNストリートゲームス、エアライド、ザ・グレイトバトルシリーズ、ゴエモンインパクト、チョコボレーシング、キンハーⅡのグミシップ、ビューティフルジョー、パワーストーン、サターンボンバーマンファイト、二人対戦版ロックマンの格ゲーやエグゼ、大工の源さん、ドロンボー、ロックマンDASH、トロンにコブン、サルバト〜レ、モバファクのギャルゲー、なみいろ、ヒメこい、初恋の歌、恋愛リプレイ、キミと母校で恋をする、Aqours vs エイリアン、ぷちぐるラブライブ、クロス×ロゴス、コンシューマーゲーム多数。
これまで数々の名作レトロゲー、ミニゲーム、アプリゲームの当時版、
今回のゲストは……おっとぉ。
これはこれは。ラブクロスさんじゃあないか。
リリース発表して一年待たされた挙げ句、後付でもう一年上乗せされ、サ開して速攻でメンテ祭りが始まり、一ヶ月近く休んでラッツ&スターのメンバーを落ち込ませ、復活して八ヶ月で敢え無くサ
あの、ラブクロスさんじゃあないか」
「それ
怒られるから」
「カシコマリンチョー。
はい、ここまで、ノー原稿で噛まずに言えましたー。
サキ最強、略してサキ強、サキってばマジカワ、はい☆お布施ー。
リアルに支障を来さない程度に、じゃんじゃん、じゃぶじゃぶ寄越しんしゃーい」
「キャバじゃないんだけどぉ!?」
「なお、サキにご投資頂いた分は、金額そのままに、
っても、ゴルゲー製のアプリって、回数制限などの縛りも無く、
「脚本の意味っ!!」
なんてーかさ……こんなやり取りしてれば、そりゃあれ
ロボット染みてる性格や口調と正反対な、軽快かつ痛快なトーク力、そして物凄い記憶力だ。
嫌いな
その代わり、好きな
そんな彼女が、この大役を高校生の身空で任されたのも、社長の妹だからってだけじゃないし。
こうして100Kのファンを魅了したのも、
全力で楽しみ、遊ぶのを信条としている彼女が、ひた向きに突き進んで来た結果に他ならないのだ。
それらは、サキという筋金入りのゲーマーの人気を爆発させる為の、単なる起爆剤、
「とりま、早速やってみますかね?
いつも通り詳細は知らないですが。
お。シームレス。ストレスフリーですね。
リメイク版かな?
あ。縦横どっちも行ける。ちゃんと切り替わる。
DSみたいで良き。
おっと。
ちゃんと喋ってる。
はい、この時点で100点中200点差し上げ、おんやぁ?
パズルだまのみならず、リズムゲームが追加されてる。
え? しかも、ライブラリアンズの仲間もプレイアブル?
他の子達も?
これ最早、ライブ・ライブラリアンズじゃないですか、マジGJ。
サラッと加わってるママン達の違和感無職っ
あー、可愛い、可愛いよー。
サキの方が可愛い? ナメんな2次元。
スパチャ、サンキュー、サキンキュー」
とまぁ、こんな調子で、棒読み加減とはミスマッチな
終わる頃には見事、俺の分も含めて、いつも通り、本日のバイト代を勝ち取ってくれそうだ。
……よくよく考えると、開始早々に万単位で稼いでたね、この子。
俺の両親から。
※
「なぁ。
こんなデートで」
ライブを終え小休止していたタイミングで尋ねる。
ジュースを一気飲みした
「何言ってるでやんすか。
夜はこれからっしょ焼き肉っしょ」
「だ、だよな……安心したわ」
「それより、カイ
カイ
妙に真顔で、俺を見詰める
当てられ俺も、気を引き締める。
「な、
急展開に気後れしながらも構えると、
「誠に遺憾ながら。
サキが独占しようと目論んでいた、『カイ
不覚にも他の女狐、狸女にも強奪されてしまいました」
「言い方……」
「しからば、次にサキが欲するは、『カイ
さぁ、先駆けて、どうぞ」
「『どうぞ』て……」
案の
でも、まぁ……こうなった以上、この子は頑として引かない。
となれば。
次に俺がすべきアクションは一つ。
「
「
「それって、ちょっと乱暴な気がしないか?
ともすれば、君にとって失礼に値するんじゃないかと」
「要求しているのは、他ならぬサキ自身です。
それに、カイ
「何度かは
「ええ。
今みたいに、ウジウジしてる場面とか」
「そいつは悪いございやしたね。
でもさ……そういう
こういう態度でいたら十中八九、ヘタレとか甲斐性無しとか優柔不断とか言われそうだけどさぁ。
もっと、こう……段階を踏むべきだと思うんだよね」
「一年以上も一緒にバイトして、寝食共にしてて、あまつさえ『早く恋人になりたーい』と終始訴えてる
「ごめん誤解されるしか
煮え切らない態度に痺れを切らしたのか。
「あーあ……。
……もー
そっちがその気なら、
もう、こっちから行きます」
などと怠そうに
ガバッ、と。勢い任せに、抱き着いて来た。
「おわぁっ!?」
不意打ちに慌てふためきながらも、即座に踏ん張り、彼女の庇うべく、その背中に手を回す。
「助かっ……たぁ!?」
いや。
こ、これは、
理性崩壊の予感を覚えた俺は、条件反射的に、彼女を引き離さんとする。
が、それよりも先に、両手を捕縛され、動けなくなる。
え?
「……なーんだ。
やれば
上気した頬。
滴る汗。
着崩れたシャツ。
二人っきりの、異性の部屋。
押し当てられた魅惑の双丘。
……ねぇこれ、ギルティ
どう見ても足掻いても事後ですよね? これ。
既成事実→児ポ→逮捕、炎上待った無し→ロリコンという、濡れ衣でしかない反社会的烙印。
それ
対する
幼気な外見とは裏腹な、大人びた、得意気な、魔性の笑みを見せる。
「ギリ合格です。
ちゃーんと、咄嗟にサキを守ってくれたので。
追試を受けざるを得なかったのは、ちと残念でしたけど。
良かったですね、カイ
落第、脱落は免れて」
「あ……あはは……」
人生からは絶賛、脱落しそうなんですが……。
ともすれば君に手を出し兼ねない状態なんですが……。
あ。
そういや俺、今、手は封じられてるんだった。
それならセーフだよね(←錯乱中)。
「カイ
改めて、注文……いや。
忠告です」
ズイっと顔を近付け、吐息がかかる距離で、
「とっとと、サキを、
さもなくば、この明らかに意味深でしか
ネットで火を吹き、猛威を振るいますぜ?」
「ひぃっ!?」
なんてこった。
そこに
あ、あれ?
これもう、詰んでない?
言い逃れ
「カイ
サキのオーダー、命令は、実にシンプル。
たった一言。たった一言、『お前』と。
そうお呼びなさいませ。
そうすれば、先輩は潔白。
晴れて社会的安全は保証されたままです。
未来永劫、サキのスマホとPC、USBと記憶、脳内と心にしか、存在しません。
カイ
さぁ、カイ
ここまでお膳立てされて、それでもまだ素直にならない、ましてや解さないカイ
これは最早、単なる脅しだ。
ここまで追い詰められた以上、常人であれば、取れる行動は一つに絞られる。
そうーー常人であれば。
「……ははっ」
ベッドの上で両手を縛られ。
年下の異性に組敷かれ。
雑に扱え、さもなくば社会的に滅すると命じられて。
そんな状況下で、気付けば自然と笑っている自分は。
明らかに、どこかズレていると思う。
「な、
「ああ。
そうだよ」
上体を起こし、彼女を少し離れさせ、俺は穏やかに胸の内を明かす。
「分かったんだ。
だから、それが
安堵、脱力し切った声で、俺は続ける。
「俺、ずっと思ってたんだ。
君は俺の、俺との
考えてもみてくれよ。
君はいつだって俺と、俺で遊んでばっかで、色めきだった雰囲気なんて、他の二人と比べても
こんな調子で、あんな要求、告白されても、単なるジョーク、気まぐれ、お遊びにしか取れなかったんだ」
「ま、まぁ……。
サキが平時こんな調子なので、分からなくはないですが……」
「否定はしないよ」
「しなさいませ」
二つの意味で擽ったさを覚えながら、俺は言葉を結ぶ。
「だからさ……俺も、本腰入れる。
もっと、真剣に考え、向き合う。
『お前』との
目を見張り、あんぐりと口を開け。
やがて
「……花丸星丸宇宙丸ですよ。
カイ
そっと。
手の甲に、口付けをした。
「……え……?」
驚きの
って、おいぃ!!
ここは、もうちょっとゆっくり余韻に浸りながら味わう
「ふふっ。ドギマギしちゃって。
大層お可愛いですね、カイ
そんなに、サキの初めてを奪えて本望ですますか?」
「チューだから手の甲だから敬愛の印だから!?
誤解しか招かない物騒な発言、慎んで!?」
「キスの意味、知ってますですね。
サキに推されるだけはアルデンテ」
「今の、ドン引きる所じゃない!?
ポイント高くないよね!? ねぇ!?
ちょっとは揺らいで!?
色々、疑問持って!?」
「それはそうと、カイ
これからは、ガンガン呼んでくださいね?
それによって、サキの機嫌の安定、及び他のモブヒロイン達への牽制にもなるです
「せめて、サブ・ヒロインにして!?
あと俺、
前の二の舞になるからな!?
同じ轍は踏まんぞ!?」
俺の包み隠さない言葉を受け、
俺の背中に両手を運び、極限までに密着して来た。
ここまで来たら接着じゃない!?
てか、これ、完全に実セ
「
ファンのリクエスト、ファンサには全力で応える。
それが
この、すっとこ・すけこま・すかたんたん」
「リズム
そして、ずっと思ってたけど!
君達の、俺に求める理想像の乖離性、汎用性ったらないよね!?
特に君のは、不透明だよね!?
正直、大して考えてないでしょ!?」
「ゼロワ◯のシンギュラリティばりですね。
ところで、おい、こら、
はー、つっかえ、
やってられない、止まらない。
こうなれば、仕込み仕立ての禁じ手、
「軽
てか、
テーブルに向けて足を伸ばし、スマホをクルクルと宙に浮かせ、特に動かす
依然として俺に悪魔の果実を押し当てたまま、例のスキャンダル写真をネットに挙げよう忙しくスマホを動かす
負けじと俺も止めようとする……も、
そうだ!
両手、封じられてるんだった!
「うへへへへへへへへへへへへへへへへへ!
勝っつぁ!
確実に、勝っつぁぁぁ!
これでもう、誰にも邪魔されない、止められない!
先輩は自分の中の滅亡迅雷ドライバ○を起動してしまったんスよ、もう
さぁ、先輩! こうなった以上、どんな言い訳も乏しいっス!!
この期に及んで自分に素直に従わない、意気地無しの先輩が悪いんスからね!!
将来を! 忠誠を!
単推し、神推し、劇推しをぉ!!」
あー、これ、マジで
掲げられたスマホが、
これ、本気で終わったんじゃ……?
あー、そっか。
ここで終わりかぁ。
これで俺は、
で、
ここまで来ると、引き下がるしかないな。
さよなら、俺の青春。
さよなら、花の高校生活。
さよなら……俺の初恋。
涙を堪え、現実を直視したくない
が……
「……は?」
やがて、普段の平坦な口調に戻る
何事かと怪しんでいると、彼女は
「……上等じゃないですか。
乗ってやりますです」
空間を歪ませそうなまでの、彼女の敵意剥き出しのオーラに圧され、
やがて彼女はベッドから降り、スマホをテーブルに置き、イヤホンとマイクをセットした。
え?
「配信にお越しの皆様、こんばんわ。
ゲッターの、サキです。
こちらは、『ゴルゲー』とも『
さて。初回、そして願わくば最終回にしたい、本日のゲストは」
「あはは。
モンペなサバ読み新妻気取りコスプレJKでーす」
「文芸の長よ」
「はぁぁぁぁぁ!?」
え、ちょ、はぁっ!?
どう考えても、あの二人だよね!?
ラジオ配信が趣味だなんて初耳な、あの二人だよね!?
どゆ
あと、
確実に根に持ってる意趣返してる、んでやっぱ諸々教えてないのに聴いてたんじゃん、
「いやー、見上げた根性ですねー。
まさか初手で敵地に凸るとはー。
ルールもマナーも様式美も段階も無視したパワープレイ。
とても正気の沙汰とは思えないでストリウ◯」
「あははー。
よく言うよねー。
ああまで露骨に喧嘩売って油注いでた
「
この
舐めてくれるわね、
「
おめおめとサキの主戦場に来た以上、身バレもリア凸もブロックも、身包みもメッキも剥がされるのも。
「ここって、そういう
ツッコむ俺を目掛けて、テーブル下の鞄から何かを取り出す
あれは……銃!?
「ちょっ……!?」
未だに両手を塞がれている俺に避ける
射的とかで使われてる、ただのコルク銃である。
「
今は、女子会の真っ最中。
男子禁制の、女の決戦場真っ只中でありんすですますよ?
カイ
「ごめんなさい、アラタくん。
少し待ってて?
「先輩、
私も、頑張ろぉ。
ところで、キヌちゃん。
今、ママの、ママだけの可愛い可愛いエーちゃんに、何かオイタしたぁ?
事と次第によっては、実力行使も厭わないよぉ?」
「勝手にほざきなさいませ。
ここは、サキの趣味場であり、仕事場であり、独壇場。
サキは希望の伝道師です。
サキの希望が溢れる世界で、サキが負ける
「どこのハルトマン?」
「ピンポンパンポーン。
『
ここでは、不届き者を強制退去する
「何が言いたいのかしら?」
「いひっ、いひひっ!
いーっひっひっひっひっひっひひっ!!
ここに軽弾みで足を踏み入れたが最後ぉ!
要するに、あんた等を積極的徹底的圧倒的根本的合法的壊滅的に蹴散らしてやらぁってんスよぉ!!
さぁ、始めるスよぉ!!
欲望と偏見とフェチズムとエゴでドロッドロに彩り象った、自分達の、血塗られたパジェンドォ、あひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょ!!」
あーあ……。
これは、あれだ……。
ひたすら、
こうして、薄れ行く意識の中、女同士の熾烈なトークの火蓋が切って落とされたのだった。
※
「そもそもさぁ。
ニアカノ同盟で隠し
なーんで二人して今まで黙ってたのかなぁ?
ゴンちゃん問い詰め……んんっ。
とっちめてなきゃ私、ずーっと知らないままだったんだよぉ?
「そんなルール知らなんだですし、別に母親だとは思ってませんです。
これからも要らんリークして間接的に邪魔しようってんなら、ちょっと懲らしめてやるです。
具体的には、サキのリスナーに適当なデマ広めて凸らせて、ファン数減らしてやるです。
大体、あんなチャラい人がカイ
「
アラタくんが女装してるなんて美味しい情報、どうして提供してくれなかったのかしら?
「あはは。
私達、同盟なんていうのは単なる大義名分で。
その実、互いに心理戦で探り合ってる、好みを押し付け合ってる、謂わば敵同士ですよぉ?
そう容易く、安直に塩を送る
エイくんが本気で
じゃないと、こっちも戦い
「カイ
「あはは。
キヌちゃんは、
あと、エイくんを失神させかけた人が、
「……今の、確実に当てずっぽうよ?」
「可愛い可愛い連呼して、お可愛いこと。
まだまだ現役アピールでもしてる
将来性という唯一無二の切り札を奪われかけた
現世に生きる魔女め。
まぁ、サキの相手としては申し分ないですね」
「あははぁ。
キヌちゃん、
そんなの、ただのハンデだよぉ?
私なら
「……
サキがもっと嫌うのは、
サキより小さい
そのサイズで、どうやって胸を張ろうってんですか?」
「そ、その辺りの話は、しないで
「スイッチ入ってる時に口開けば、ハミングでもするかの
てか、女が意中の相手を落とし、ライバルを蹴落とし貶め陥れるダーティプレイをしている以上。
ルックス、特段そこを論点にされる覚悟は最低限、するべきでは?
タイプ外、対象外、選考外の上司が、とかなら話は別ですが」
「
お疲れ様でしたー」
「あ、あなた達持ってる側には、持たざる者の気持ちなんて押し測れないのよっ!」
「胸囲対象外だけに、測れないと?」
「
けれど、そうね。
確かに、
それは認める。ごめんなさい。
でもね……スレンダーにはスレンダーの、サレンダーしない矜持って物があるのよ!」
「スレンダー故に、ネタにサレンダー」
「
あなたのアドリブ煽り力の高さはっ!
この
覚悟なさいっ!」
「だったら、ん……。
証明、はんっ……。
してください、うんっ……」
「ちょ待てよです。
言うまでもなく、どう考えても枠違い、略してワクチです」
「
そのダブチみたいなの。
それで、
「えぇ?
ただの耳掃除ですよぉ。
あんまり変な
吹き込まれても困るのでぇ」
「断トツ、ダンチで不健全な人が
「エイくんを私より先に縛り付けてる人に言われたくないですぅだ」
「は……はぁ!?
ちょっと、
あなたもあなたで一体、何やってるのよ!?」
「この女、
……ねぇ。
俺、そろそろ帰って
辛い……。
ただ、ただ、辛い……。
肩身が狭い……。
※
「すまない、
まさか、この歳で迎えに来て
あまつさえクラスメートの異性におぶられるとは」
「あはは。
まぁ、普段から思ってたらドン引きだよねぇ。
ていうか、気にしないでよ。
キヌちゃんがオイタした
「いや、まぁ……それはそうなんだが……」
「それともぉ?
エイくんが申し訳無く思ってるなら、私の要望を叶えるとかぁ?
例えば……お姫様抱っことかぁ♪」
「ごめんなさい申し訳無くなんかないです、このままで何卒お願いします、もう
「分かれば宜しい♪
あーあ。でも、ちょっと残念だなぁ」
お布施により延長に次ぐ延長を繰り返した、犬も食わない同盟争いの後。
未だに腰が抜けて動けずにいた俺を、
なお、離れた場所から参加していた
その場に
先輩とセットで、やはり
ショックだったろうなぁ。
過去最高のスパチャ額だったし、アーカイブにも残してたしなぁ。
挙げ句の果てに、『賞品はスパチャ』とか言ってたから。
その分、
なんてーか、うん。
目も当てられない。
「安心しなよぉ。
今日の臨時収入の半分は、私達の活動費用に補填するからぁ」
「の、残りは……?」
「うんぅ?
ちょ・き・んぅ♪
私達二人の未来。
そして何より、これから産まれる、この子達の
「何もしてないから!?
俺は断じて、
「あははっ。
冗談に決まってるじゃん、お
貯金には充てるけどね♪」
「勘弁してくれ……。
その手のは、マジで
お腹を擦りながら笑う
怖い……。
「ところでさぁ、エイくん。
来週は
私達の、番だね」
星空を見上げながら、トーンからして嬉しそうな声で、
「……ああ。
そうだな」
「楽しみだなぁ。
エイくんは一体、私を、どんな素的な所に連れて行ってくれるのかなぁ?」
「え?
……俺が、考えるの?」
「ん〜?」
「ごめんなさい
声が……背中が怖いです、
「
この、お
頬を膨らまし、少し拗ねて、
「エイくん。
今まで二人と、
「ま、まぁ……」
してないな。
向こうの趣味に付き合ってただけだったし。
色気なんて、ほぼ無かったからなぁ。
あれじゃあお世辞にも、デートとは言い難い。
趣味が似通ってて、互いに恋人として気心が知れてるんなら、いざ知らず。
「
なので、是が非でも、有効活用して
「あ、ああ」
多分これ、今決める流れだよなぁ。
っても、そうだなぁ。
他の二人はともかく、
だとすれば。
俺がしたいデートは、一つだ。
「……
「うんぅ?
「俺……
普通に買い物したり、普通に映画観たり、普通に漫画読んだり、ご飯作ったりしたい。
そういう……普通のカップルみたいな、デートしたい」
「それが……エイくんが今、
「ああ」
考えるまでもなく、答えていた。
「素朴だねぇ。
でも、不思議だね……私もエイくんと、そういうのがしたいって、思ってた。
私達って、思ってた以上に、息も気も合うのかもねぇ」
「ひ、ヒモとかじゃなく……?」
「あははっ。
いきなりそこまで極端なのは、オーダーしないよぉ。
私だって、それ
「したいのかよ!」
「でも、我慢するよぉ。
「こんな魅力たっぷりなヒロインを切り捨てる
俺が即刻、叩っ切って進ぜよう」
「あははっ。
それなら、安心、安泰だねぇ。
……楽しみだね。今度の土曜日」
「ああ。そうだな」
「
「俺もだよ、
こうして、
来週は遂に、
「あ。
でも、エーちゃんが料理するのは、禁止ね?
「……俺が原因とはいえ、
てか、
このラブコメ。
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