〈4〉そして冒頭へ
「皆。
朝早くに来て
目の前に
覚悟を決め直し姿勢を戻した俺は、キリッとした表情をイメージしつつ、同じく単刀直入に、
「いきなりで悪いし、恥を承知で頼む。
改めて、聞かせてくれないか?
昨日、
情けないのは重々承知だ。
この短期間で、女性に二度も告らせようなんて、言語道断。
男としてあるまじき、最低な、「
そうーー本来なら。
さて。
どこの誰とも分からない、俺を糾弾せしめんとする見ず知らずの方々よ。
その前に、お願いだ。
どうか、これから繰り広げられる一部始終を見て、
さすれば全員、
美女三人に同時に言い寄られるというハーレム染みた現状。
このイベントが
「アラタ。
我が同士となって欲しい。
我同様に、ボタンやシャツを破壊する
さすれば我は、今よりもっと、主を好きになれる。
我と共にバスター道を歩んでくれ。生涯、バーストについて熱く、厚く語り合おうではないか」
「え、えええエーちゃん……。
よかったら、はぁ……はぁ……♪ 私のヒ、ヒモになってくれたら……とととととっても嬉し、ん……い、なぁ……。
ね、ねねね年がら年中、んっ……♪ 引き篭もって、食っちゃ寝、ゲーム三昧、あっ……♪
あ、あああ、挙げ句の果てに、お酒とFXと課金に明け暮れて……。終いには、わっ……私の、口座からっ……勝手に使って、大量の借金作って、んぅっ……♪
私にバレても、『それでも俺には、お前が必要だ』って、はんっ……♪
そんな
「師匠っ!!
どうか、自分の
師匠のソロ曲、衣装、振り付け、決め台詞、ファンサ、C&R、キャッチコピー、イメージPV、CM、アニデザ、デフォルメ、TS、二次創作。その他諸々の創作権を、自分に、自分にこそ担わせてくださいっス!!
「……」
……どうしよう。
視界も思考も定まらない。
意味が分からない、という
というか、意味すら分かりたくない。
「あはは。
いきなり、あんな
ごめんね? エイくん」
「急いては
確かにサキ
「『仕損じる』『急がば回れ』よ。
誤用を訂正した所で、アラタくん。
あなたに今一度、お願いするわ。
どうか、
そして、願わくば、受け入れて」
「ちょっ……!?」
ここでマドンナ状態になって手を握って来るのは、反則じゃあ……!?
完全に一歩、リードして……!?
「あー。
エイくん。
エイくんに
だ、だだだっだから、エーちゃん……ママと、はんっ……付き合っ、て……?
たぁっぷり、んっ……♪
溺愛してみせる、からっ……♪」
「がっ……!?」
腕組み、だと……!?
てか、
この中で二番目に大きな、その、アレが!
「隙
「ぐえっ!?」
かと思えば、
お
「……
表情も性格も機械的な割に」
「あはは。
やんちゃだなぁ。
ところで、
お
特にエーちゃん。
ママに……診察されたく、なぁい……?」
「問題無い。
カイ
見事なり」
……ねぇ。
この人達、
ちょっと、普通とはニュアンスが異なっていたとはいえ。
扱い、
俺、
※
「
じゃあ、俺にリクエストして来た順で、
「うむ。
撒かせろ」
「あはは。
字が違ーう」
「〜!!」
あーあ……主導権、優位性をフラゲしようとしたら、ツッコまれちゃった。
にしても、
恐るべし。
「
今は、先輩のターンだ。
悪いけど」
「はーい。
なるべく、静かにしてまーす。
あと、『
「しつこいなぁ、君も!」
「にやり」
「
静かにしてる
「がくり」
やや不満そうな
いや、
効果音を口で言ってたら。
「……前述の通り、我はバーストを愛している。
この場合のバーストとは、同じく上述の通り、服やボタンを破壊せん
かと言って、そこに芸術性を見出しているというだけで、女子と懇意になりたい
「そもそも、
「そ、そこは、まぁ……聞くな。
強いて言えば、願望を持っていたら、いつの間にかだ」
「把握」
デリケートな部分
申し訳ないが、助かる。
俺は、男な上にシャイだから。
「じゃあ先輩は、俺とどうなりたいんですか?
どんな俺を、お望みで?」
「端的に言えば、
我は、ラブがコメるシーンも大層、好きなのでな。
その素晴らしさを、尊さを、主とリアタイで分かち合いたいのだ」
「ま、まぁ……それ
「そして願わくば、揺れるバーストやポロッたシーンも」
「そっちが本命でしょ!?
だから、未成年だっての!
前者はともかく、後者は無理!」
いきなり早口になったし、呼吸も荒くなったぞ!?
分かり易っ!
ここは、頑として拒否っとかないと!
などと思って抗うと、先輩は分かり易く渋面となった。
「この、S◯NYっ子め」
「怒られろ!!
てか、他でもない、あんただろっ!!
そうなる
仕方無いだろ!
コンシューマ版は、P◯4やvit◯が主流なんだから!
Swit◯hには、まだそんなに来てないんだから!
「そもそも
免疫は付いている
これまで、主にお薦めしてきたゲームは総じて、シナリオだけでなく胸部も整っていただろう」
「……」
……
ごめん。
どうやら、お前の予想は、思いっ切り当たっていたらしい。
こんな調子で、これ以上、憧れの先輩のイメージを損ねたくなかったので。
「じゃあ、次。
気を取り直して、もが」
「ん〜?」
「……
「はーい。
よく
でも
くっ……
逆らえない。
彼女の命令にも、撫で撫での誘惑にも……。
「違反行為。
サキにも、呼び捨てであるべきでざんす」
「
不公平だわ」
まぁ……こうなるわな。
二人も、俺に好意を寄せてくれてる
一般的なそれとは、かけ離れてるけど。
「……分かりました。
それも、追々。
それで、
話を聞かせてくれ」
「言った通り、だよ……。
ママは、エーちゃんにヒモになって欲しいなぁって……」
「……そもそも、前提からして間違っている。
俺は、自他共に認める
そんな真人間が、ヒモになると思うか?」
「カイ
それは偏見、早計です。
バトル漫画や特撮と同じです。
敵対していたライバルが、光落ちした途端に弱体化するのと似た現象です」
「そ、その通り……。
エーちゃんみたいな、真人間こそ……一度、落としてしまえば、存外……ズブズブになったり、するんだよぉ……?
フォローありがとぉ、キヌちゃん」
感謝の意を表明すべく、
相変わらず、
小柄とはいえ、こうもあっさり持ち上げられるとは。
「じゃあ、最後に
自力で
彼女は、頬を膨らませ露骨に不服そうな
「以下同文っス!!
師匠に揺るぎない、惜しみ無い愛を注ぎ、捧ぎたい所存っス!!」
「俺は、芸能界を志した
「問題
自分のプロデュース、加工力を
師匠は、ただありのままでいてくれさえすれば、それで
師匠の人の良さだけで、数多の信者を粗製乱造してみせますっス!
師匠は、大人しく自分に未来を委ねなさいましっス!!」
「ねぇそれ、詐欺じゃない?」
今時アイド◯だって、そこまでせんわ。
……え?
しないよね? してないよね?
ね?
「つまり、その……
「担当と付き合うなんて、ご
そもそも、相手とか
メジャー・デビューした途端に攻めた姿勢じゃなくなって興醒めるインディーズと同じス。
そもそも自分、
「……さいですか」
「
前述の通り、見る専門なのでな」
「ママもー。
興奮するのは、ヒモ相手だけだしー」
相変わらず、
それでいてサラッとトンデモ発言を噛まされ。
挙げ句の果てに上乗せされた気がするが。
まぁ、置いといて。
何はともあれ。
これで全員の意思は掴めた
揃いも揃って、恋愛っぽい要素を備えている割に不向き、正反対、ニアミスってるのだと。
「というか、カイ
そもそもサキは、現状の時点で楽しくありません」
「てーと?」
言葉の通り、見るからに不機嫌な
「……カイ
確かにサキは、昨日に関してだけは、
これは、認めます。
サキの不徳の致す所です。
でも、だからといって、カイ
それも、割れ厨、割り込み厨なんぞに」
「ちょっ……!?」
失念してた。
そう言えば
「へー」
「聞き捨てならないわねぇ。
中々、噛ましてくれるじゃない。
ちゃんと正規品を購入してるピシゲーマーに」
案の
そして、
「キヌちゃんさぁ。
まだ一年生でしょぉ?
それで、私達を割り込み扱い?
自分の方が、後から出会ってるのに?
言っときますけど。
最初にエイくんと話したのは、クラスメイトである私ですよーだ。
エイくんは中学時代、文芸部に所属してなかったんですから」
「それも違うわ。
最初にアラタくんと出会ったのは、他でもない
アラタくんは入学式より前、春休みの時点で、文芸部に所属していたんだもの」
「え?
ホントに?」
目で尋ねて来た
仲間に裏切られたのも相まって意気消沈している
二人には悪いが、事実は少し異なっていたりする。
「ふっ……所詮、その程度の力ですか。
いや……この程度、力とさえ呼べませんね。
両腹痛いです」
独特の造語と得意気な顔を披露つつ、
「サキが先輩と出会ったのは、三月の時点での話です。
カイ
「なっ!?」
「えー……」
先輩と
実は、この中で最速で、最初に話したのは、
この先制攻撃で気を良くした
「それだけじゃないです。
サキには、取って置きがあるです。
二人がカイ
「た、
言って
ともすれば、あらぬ誤解を招くぞ?」
ていうか、そう容易くバラさないで
印象がダブる
「……良いんです、カイ
志半ばで砕けても、サキは後悔しません。
ここで全力を出さなかった
まぁ……そこまで言うなら、
そうでなくても
……この場に
俺の表情を確認した
「ねぇ。
「嘘や秘密は私、感心しないなぁ」
当然ながら、蚊帳の外に置かれた
返答に困っていると、ロッカーの中から出て来たのは。
「
マジカルに、見参」
とまぁ、こんな具合に、黒い衣装に身を包み謎ポーズを取っている
この天然
「……エイくん、これ……」
「どういう、
混乱しながらも、俺に真実を求める二人。
名字が同じだったが
彼女こそが、
「……以前、俺がバイト中に、倒れた
で、看病して
以降、毎日、三食作ってくれる
それ以外にも、形から入るタイプだったが
「毎日、って……今もっ!?」
「
まさか身近に、こんな伏兵が
眩しい……!!
眩し
「全くだ……何と都合だけの
我の元にも是非とも来て欲しい……!!
女体盛りしたい……!!」
まぁ……当然のリアクションか。
事実とはいえ、こんなフィクション染みた話、そう簡単には飲み込めまい。
ところで、
君たった今、本編で初めて『!』と『!?』使ったんだけど、大丈夫か?
そして、先輩。
あんた、男心に対する理解が深過ぎだろ。
全面的に同意せざるを得ないじゃないか。
あと、
そのドン引き顔、
別に、嘘は
騙してるってか、紛らわしい言い方してるが。
「そう。
起床や睡眠、就寝、入浴や食事の時間。
好き嫌いや苦手、ご機嫌だと無意識によく
寝癖の位置や寝相、寝言に
お宝の在り
それらのパーソナル・データを、余さず網羅、独り占めしているのです」
「おい、最後っ!!」
「あなた方が、今のポジションに甘んじ、学校生活だけに胡座をかいている
平たく言えば、負ける気がしないのです」
「ポジティブな意味じゃないから!
ドヤ顔する所じゃないから!」
「それだけに飽き足らず、カイ
あまつさえ負荷も調整し、サキを子供扱いした悪いカイ
そう。
サキは
「
あと君、家事担当してくれてるが
この、
と、俺が決意を新たにしていると、
そして、
「つまり。
お二人が今まで見て来たカイ
使い古され、使い回された偶像であり、虚像なのです。
サキの、サキだけの知ってるカイ
そんな
サキとカイ
サキに無断でカイ
そんな不届き者に、本家本元のサキが負ける
あなた方は謂わば、翼竜とは名ばかりに実際には恐竜としてカテゴライズされてない、プテラノドンの
トッブゲイラ◯でプテラゴード◯でプテラード◯。
やーい、やーい、ピーたんやーい。
今こうして、サキと対等なライバルとして同席しているのが
しかも異性、ポジだけなら
「
お前……
あ。でも、ある意味、良かったな。
これで、まだ一時だけ、覚えて
「とどの
サキは、同担拒否を初志貫徹したまま、カイ
あー……
こんな時ですら、
これは、温和な二人も、流石に怒る……。
「なるほど……面白いわね」
「せ、先輩?」
え? 乗るの?
乗っちゃうの? この流れに、誘いに?
目に見えた
「
あなたは、確かに
未来を度外視し、ひたすら今を全力で生き抜く
敵ながら天晴よ」
「言ったのです。
あなた方はOG、アウト・オブ・ガンチューだと。
敵だなんて、思い上がりは直ちに止めなさいませ」
「そう悪態をつかないで
こちらとて、
言い分
予想外だったのか、意表を突かれた顔をした後、
「……勝手にしなさいませ。
どうせ今更、何をしようと、サキの圧勝、カイ
「その内、内部崩壊しそうだけどな。
不認可だから」
「では、そんな勝者様に一つ、手合わせ願おうか」
「わー、スルー」
そして
また髪、無造作に動かしたー。
「主が『過去』『今』に殉ずるというのであれば。
我もまた、『過去』『今』を、
「あれ?
その優位性は
いや、君もか
この意味不明かつバチバチしたドロドロ空間に、平然と身を投じるのか。
てか、今更だけど。
一番に出会ったっての、そんなに重要?
別に良くない? いつでも。
「アラタくん」
「へ!?
あ……はい」
不敵な笑みを見せた先輩と、急に話を振られた
「君が中学時代、文芸部に入らなかったのは?」
あーあ……。
そこ、明かしちゃいますか……。
こっ
ま、別に
先輩が気にしないなら……。
「一年の時、先輩が、他の入部希望者を突っ返す、突っ
『外見という理由だけで、意中に入った異性と近付きたがる
「え?」
「……?」
「うむ。
その通りだ 」
先輩は俺に対して微笑むと、唐突にフィンガースナップを決めた。
かと思えば、セットされていたプロジェクターが起動し、映像が壁に投射される。
……忘れてた。
この人こういう、無駄に凝った、用意周到な
『我とアラタの出会いは、遡る事四年前。
我が中ニ、アラタが中一の頃である』
そして同様に、いきなり始まり、スクリーンから届いて来る語り。
この人、朗読のバイトとかボランティアもしてるから、読み聞かせが上手いんだ、これが。
にしても、
ノベゲー好きの先輩らしく、紙芝居形式になってる。
この人、シナリオやスクリプトまで
てか、先輩や俺に瓜二つ、それでいてフィクションとして落とし込み、必要に合わせてデフォルメされてるのを見る限り、キャラデザも自作か……。
そんでもって、ピシゲへの果てしない情熱を鑑みるに、この、世界観を邪魔しない、
……
この人だもんな。
好きな
恐れ入るの一言に尽きる……。
『アラタは当時から、文芸部志望だった。
しかし、先の件で己が未熟さを悟り、ひたすら特訓に明け暮れる日々を送る決意を固めた。
具体的には、言葉を交わさずに、我と勝負を繰り広げる覚悟を決めたのである。
どちらがより早く、より多く、図書室の恋愛小説を全てを読み切るかという、RTAを』
「
「いじらしい……」
すっかり先輩に影響される
思ってたより、落ち着いてるなー。
もっと、現状にメスを入れるかと思ったー。
『……先輩。
待っていてください。
もっと読書力を、語彙力を高め、会いに行きます。
俺はもう、逃げません。
いつかきっと、あなたを迎えに行きます。
あなたと肩を並べて歩く日まで、どうか待っていてください』
「ちょぉっ!?」
何このイケボ!?
何この、イケボ!?
え、
先輩が吹き込んだの!?
この人、
てか俺、ここまで言ってない!
これもう、完全に先輩ルート
『そう。
ここから始まるは、二人だけの危ないGAME、秘密の遊戯。
アラタと我が貸し出しカードに名前を記し、埋めて行き、互いに確認し合う。
その慎ましく甘やかな
そうして我々は、一言も語らず。
三年間も連綿と紡いで来た報酬に、今が
互いの読書記録だけで内に秘めた想いを、リスペクトを、確かな愛を』
「な、
「てぇてぇ……これは、てぇてぇですぞぉ……」
ハンカチで涙を拭う
あー……帰りたい。
やっぱ、恥ずかしい……。
俺が膝を降り悶絶していると、映像が途切れ、部屋の照明と日差しが戻った。
最高に満足そうなドヤ顔をしている先輩に向け、
何この、万雷の拍手感……。
「ありがとう。
次回作にも存分に期待してくれ。
さて、
これでも、不服か?
まだ我が、
「……いいえ。
あなたは、実に立派な戦士、恋敵でした。
そんな
撤回します。
どうか、お許しなさいまし。
確かに出会ったタイミングこそ
そのインパクトに勝るとも劣らない、素晴らしいイベントでした」
「構わん。
改めて、これから正々堂々、戦おう。
互いの全てを懸け、アラタの所有権を賭け、鎬を削ろうぞ」
これで、一件落着……。
「という
早速、目の前の部外者を追い出そうぞ」
「やったるですっス!
やいやい、そこの年齢詐称者!
師匠と自分とメグ先輩だけの愛の巣から、とっとと出てお行きなさいませっス!!」
「そこは、先輩を立てんか。
だが、アラタを
……とは、いかないよね。
やっぱり。
「あはは。
リーダーが、
まだ特に有利さを持っていない(と二人が勝手に決め付けてる)当の
「キヌちゃんは、『過去』。
ユウ先輩は、『今』。
それが、二人の示した切り札であり、エイくんを求め、固執する理由。
さしずめ、そんな感じかなぁ。
だったら、私は『未来』を差し出すよ。
エイくんとこれから先、ずっと生きる、未来への指針を」
「ふっ。
未来だと?」
「そんな不確定、不明瞭な物、
オカン属性だからって、ママファイ◯ごっこ決めようったって、そうは自分が卸さないです」
悪女っぽい笑みを自信満々に浮かべる二人に対し、広げた用紙を
ーー俺の名前以外の欄が全て埋まっている、俺と
「あはは。
ちょっと、恥ずかしいなぁ。
でも……うん。
私達……やっと、一つになれたんだもんね。
だから……勇気出して、ちゃんと、言うね」
大部分が茫然自失としている中、
それでも勇気を振り絞り、胸に手を置き深呼吸した後、満点の笑顔で宣言した。
「改めまして。
そして今日から新しく、
不束かな妻ですが精一杯、努め、務めます。
夜とかも、その……頑張ってくれると
えへへ。
これからも、よろしくね?
あ・な・た♡」
はい、始まりました、
先頭を走るは、エプロン!
エプロン
服が巧妙に隠されており、着ていない可能性も
しかも、作っているのはケーキ!
これは、もしや女体盛りコースか!? 召し上がっちゃうのか!?
おぉっと!
ピロートーク! ピロートーク
同じく
蒸気した頬と気怠そうな表情が、実に艶めかしく生々しく艶々しい!
おい、主人公、そこ代われ!
続いて来たのは、お風呂!
お風呂
今度は旦那の体に守られている!
これはひょっとして、前日のリベンジか!?
前を見ちゃうのか!?
どうか、タオルを纏っているか
的なイメージと声が、頭の一面に広がった。
「ぐぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!」
そのまま呼吸困難となっていたら、近くで先輩と
こんなの、確実に裏が
事実、フィクションでもリアルでも、この手の類いは
しかし、
確かに隠されていた一面こそ
つまり……彼女は本気で、俺と添い遂げようとしているのだ。
この身空で。
一般的な夫婦とは、まるで異なる形で。
「な、
こんな猛者が、年下だと……?
お風呂
「恐ろしい……とんでもないヤンデレ地雷……。
強化外◯格でも纏えそうな
絶対に、敵に回したくない……」
「あはは。
そんなに怯えないでよ。
こう見えて私、
ただ、エーちゃんの
倒れている
で、先輩。
あんた今、俺と似た
マジで気が合うな。
てか、
「あと、それだと私、早死にしちゃいそう。
勘弁して
私には、何物にも替け
エーちゃんを一生、甘やかし、飼い慣らし、幸せにするっていう、天命がね」
終いには、
拒否反応を起こしているのだ。
あれは一度嵌ったら二度と抜けられない、水中で呼吸が
脳内をアラートが駆け巡り、理性を総動員させる。
そんな、一人として他に動ける者が不在な状況下で、
「これは昨日、
エーちゃんのパパ、ママには、包み隠さず説明した上で、証人になって
『どうか
素的なご両親だね。
ママ、すんなり暖かく受け入れて
つまり、ママとエーちゃんの蜜月を阻む障害は、全て排除し、乗り越えたって
サプライズ、大成功。
……なんてね。えへへ」
サプライズ。
そう言って照れている
彼氏に内緒での、プロポーズ。
なるほど……確かに、とんでもないサプライズ。
驚くべき
惜しむらくは、俺がまだ、彼氏の域に達していない
そして恐れるは、それを踏まえた上で、ここまで行動を起こした
これは、我がクラスの、決して違えてはならない、誰もが遵守すべき不文律だった。
それも一重に、にこやかさの裏に隠された、天変地異を予感させる何かを恐れていたからだ。
よもや、こんな恐ろしい一面まで、持っていようとは。
「まだだ……まだ、終わってない……」
地に伏していた先輩が、握り拳を作り、倒れそうになりながら立ち上がる。
まるで、バトル漫画やアニメの最終話。
ラスボスとの決戦を思わせる、物々しく暑苦しい雰囲気で。
「
主は、申した。『未来を、差し出す』と。
確かに、主の武器は、とてつもなかった。
正直、恐れ入ったよ。
だが……こちらとて、まだ退けぬ。
みすみす手放してなるものか。
将来の、生涯のバースト、男趣味の同士、恋愛ROM専士なのだ」
「え?
何この流れ?
あと俺、リアル恋愛に興味津々なんですけど?」
「そうです……先輩」
「え、乗るぅ?
この流れにぃ?」
俺のツッコミを物ともせず、
ところで
「確かに、あなたが見せた未来は完璧。
カイ
あなたの未来は、不完全で不健全。
まだ肝心要のカイ
「そうだ。
君がアラタを一生、養って行ける、幸せに
未来こそ、不安定で不明瞭。
そんな
「すみませーん。
スタンスだけ」
俺の要求など、どこ吹く風。
すっかりすっきり意気投合した先輩と
「心配には及ばないよ。
瞬間、二人は絶句し倒れ、目を開けたまま固まったた。
悟ったのだ。
彼女の言う未来とは、実に安定、安泰した物だと。
この三人の中でも
「あー……ごめん。
ちょっと、やり
まぁ、
まだ意識が残ってるだろうし、教えちゃうね。
今日、二人を招いたのは、事実確認だけじゃなく、見せしめる
この中で一番、エーちゃんに
だってママこそが、ママだけが、うん十年先の未来まで見据えているんだもの。
過去や今にばかり
だから、肝に命じてて
放任主義の姿勢は貫くけど、目に余る
今日みたいに」
この
3人もの美少女から告白された翌日。こうして、現時点でのチャンピオンが誰なのか、立証された。
ウィナー。
ユーオーリー。
ユー、オンリー。
※
「はい。
じゃあ、今日から私達は、晴れて『ニアカノ同盟』って
改めて、宜しくね?
ユウ先輩、キヌちゃん」
「「イエス、マム!!」」
長いものには巻かれろって、こういう
「あー……
一つ
「ん?
なーに? 旦那様」
「まだなってない」
「ふーん。
『まだ』、ねぇ」
「そこについては触れてくれるな。
思春期男子特有のあれだ。
で、
ニアカノ同盟って、
どういう意味だ?
確か、
メッセージアプリ、
「読んで字の
私達と、エイくんとの距離の近さを表す『ニア』。
そして、恋が『
我ながら素的なネーミングだと思うんだけど、どうかな?」
「あ、ああ。
まぁ……確かに恋には似合わないな。
それぞれが俺に求めてるのが、男らしい趣味を分かち合う同士と、男らしさとはかけ離れたヒモと、偽りの男らしさをアピールした
「クワトロ・ミーニングとは、恐れ入った」
「親しみ
それでいて、ギャルゲーっぽさまで両立している。
ケチの付け所が無いです。
上の上ですね」
「ありがと。
二人には聞いてなかったけど。
「「サー、イエスマムッ!!」」
ねぇこれ、部活顧問とかの役回りじゃない?
あなた、幽霊部員ですよね?
「とまぁ、冗談はさておき」
冗談じゃない。
話を進めたいがだけに、
「エイくん?」
「
続けて、どうぞっ!」
二人に倣って俺も少し距離を取り、
「さて、と。
差し当たっては、デートをしようと思います」
「デート?」
「そう。テストを兼ねた、デート。
エイくんと半日、一緒に
その中で、エイくんが誰の理想にならなれそうか、
私達は、どうにも血気盛んみたいだからね。
一緒に行動してたら
「
俺も、その意見に賛成だ」
「
「以下略」
「同文しなさい」
やはり少し緩くはあるものの、こうして当面の方針は定まったのだった。
「やったぁ♪
じゃあ、決行日は土日として。
「君達、大好きだな!
順番!」
ゆったりした口調の
余談だが、先輩にはタメ口、呼び捨ても義務付けられそうになったが、それは
「待った。
その前に、俺からも一つ、提案が
「なぁに?」
「残念ながら俺は、今の自分に、君の言うヒモ属性たらしめる部分を見出せなかった。
そこで後釜となり得る代理、逸材を用意した」
言い
代役こと
「君が求めていたのは、男性ではなく、自分が全力で甘やかせる存在。
つまり、相手が異性でなくてはならない、などという条件は
「……なるほど。
盲点だったけど、確かにそうだね。
言われてみれば、性別は求めていない。
頬キス以上にならなければ、何ら
それに、キヌちゃんの天賦の
見ていて
打って付けではあるかも」
「この世で最も不名誉で不必要で不便利な、
うっかり零してしまった本音を
「それは、置いといてだ。
口癖は?」
「お前の休みは、サキの
「うっ……」
胸を打たれ、右手を当てる
よし。計算通り。
「座右の銘は?」
「他力本願」
「くっ……」
「生まれ変わったら?」
「ナマケモノになりたい」
「ぐっ……」
「好きな物は?」
「ポテットポテトとピザとコーラと炬燵と蜜柑とアイスとゲームと料理とカイ
「あっ……!」
「将来の夢は?」
「楽に楽しく稼げる仕事」
「あぁっ……!!」
「こ、これは、ドチャい……!!
ドチャいシチュだ……!!」
すみません、
これ、全年齢版なんですよ。
対象年齢上げないでくれません?
そして、おい、そこの
写真も音声も撮んな。
何に使う気だ?
だが、行ける!
今なら、狙える!
「刮目されたし!
この、他に類を見ない、美徳なまでに愚直な、徹頭徹尾の
ヒモを愛し、敬う者として惹かれないか、ゾクゾク来ないか!?
その程度の脆さとでも言うのか!?」
「だ、だめぇ……!!
もう、無理……!!
こんなの……我慢、出来ない、よぉ……!!
ハァ……ハァ……!!」
いや、
頼むから、お願いだから、喘がないでくれません?
良がらないでくれません?
もうこれ、完全にZ指定だよ!?
放送事故だよ!?
CER◯とピーTAが黙ってないよ!?
息絶え絶えのまま、たどたどしい足取りで、体をグラグラ揺らしながら。
それでも着実に、こちらに近付いて来る、歩く18禁こと
あとは、ここで
「い、いいい、イーちゃーん……!!
今度の土曜も、その先も、ずーっと……!!
ママと……ママとだけ、一緒にいましょーねー……!!」
「ママー。
バブバブー。
有り金寄越しんしゃーい」
はい。
通販仕立て攻撃からの利害一致により懐柔、完了。
抱き合う即席母娘の
「て
次の休み、俺とデート、テストしましょう。
予定さえ取り付ければ、こっちの物なので」
「い、いや……こちらとしては願ったり叶ったりなんだけれどね、アラタくん。
あなた達、ちょっと仲良し
それとも、今のはアドリブ?
示し合わせた作戦?」
「まさか。
ぶっつけですよ。
これ位の掛け合いなら、いつもバイトでやってるんで慣れっこなんで。
ああ見えて、
「……ごめんなさい。
よく分からないわ」
「その内、嫌でも身に染みるかと」
こうして最初の相手は、先輩に決定したのであった。
余談だが、このパーティ、俺は存外、上手く回せる、立ち回れるかもしれない。
「と……
大事に、んんっ……使って、ね……」
「わーい。
こわーい」
「あ……。
足り、ない……?
んっ……。
色……付け、ちゃう……?」
「違わーい」
「待てぇぇぇぇぇい!!」
「オリサキ、ありがてぇてぇぇぇぇぇ!!
公式からのレア素材、ごちゃす、あざっす!!
キースッ……♪ キースッ……♪
おセッセッセーの、よいよいよい……♪」
「黙れ先輩、貴様ぁぁぁぁぁ!!」
……うん。
やっぱ、そこそこ行けるわ。
しかも、後半は小声で言ってる辺り、きちんと混ざりはしないタイプらしい。
……この人、どこまで男っぽいの?
こんな人とデートとか、
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