勝手に妬まれてる
俺は今コートを真上からも見えている。視点切り替えを常にしてる感じでしんどいのだが、今の菊池先輩の動きが反則的で予想外すぎて、ただただ驚いていた。
だって、見たことがないようなとてつもない斜め跳びだったんだ!あれがラグビーの脚力か。見直したぞ、菊池先輩。
「ふぬおおお!!!」
なんか、気合い十分なのは伝わってくるんだけど、ゴール下にいたのに、外にドリブルで逃げてしまった菊池先輩。まぁ、ボール失わないだけ良しとしますかね。
やばい。菊池先輩のことをバスケ初心者を見るような目で見てしまう。高校入ってからバスケ始めたのかな?
竜ヶ崎が菊池先輩からボールを受けて、そのまま中央にドライブ、からの外にいる志多にパス!
スリーポイントシュートが綺麗にゴールに吸い込まれていった。
なんだ、俺無しでもやれるじゃん、こいつら。
「つまんねーよなぁ。後ろで眺めてるだけっていうのはよぉ」
俺と須藤はハーフコートラインも越えずに談笑してしまう。ここで、あえて須藤にボールを持たせるのも悪くはない。わざとマーク外したってボールは来ないだろうけどな。
「おまえを仲間から離してあげることが1番なんだよ。嫌なら混ざってくれば?」
「徹底マークを辞めたいくらいだが、てめぇが困ってる顔をするのが面白いからなぁ。もうちっと粘ってみるかあ?」
いや、知らねーよ。お好きにどうぞ、って感じだ。須藤個人としての方針と、そっちのチームの方針が違うのか?
「須藤、いいぞ。好きにやれ」
「おぉ?」
向こうの厳つい男監督から何やら指示が飛ぶ。
「許しが出たぜぇ。早速リベンジさせてもらってもいいかぁ?」
なんかこいつ、バスケに関しては良いやつなんじゃないかと思ってしまう。目をギラギラさせて、対戦するのが待ち遠しそうにしている。
「頼むから、頼むから周りに危害を加えるなよ」
「もうおせーわ。お互い能力限界まで引き上げてんだろ?俺を止めなければ、周りのやつらが地べたを這いずり回るだけだぁ!」
「そんなに煽ったって、逃げねえっつーの」
ガードのポジションに、須藤が佇んで人が追い越していく。
俺は一度深く腰を落として床に手をついた。
久しぶりに須藤にボールが渡った気がする。何度でも止めてやる!!
だが、1人だけセーフティーをして、攻めに参加しないやつがいた。
んーと、相手のガードの不破っていうやつだっけ?こちらを見てニヤニヤ笑ってやがる。
「不破ぁ!!何サボってやがるんだ!交代したいのかぁ!!」
相手監督からも怒号が飛ぶ。だが、不破は何やらぶつぶつ言っていて気味が悪い。
「あいつが・・・あいつさえ、壊れれば・・・」
俺をじっと見つめて微動だにしない不破。なんか、狙われてる?別に今なら怪我させようとしたって避けることぐらいできるんだけどな。
「余所見は一度だけだぜぇ?」
不破を見ていた俺の視界から、須藤が消える。
なんつー深い踏み込みだ。ドライブの一歩目だけで完全に俺を抜き去っている。
油断した!でも、違う。それどころじゃない。
不破が、何故だかベンチにいる亜香里に近づいている?
なぜ?
おい、上田。
じゃなくて俺、なんとか、
なんとか!しろよっ!!!
ーーーバチィ!!
「ひいぃあっ!」
「亜香里に何しようとした?」
俺は次の瞬間には不破の肩に手をやっていた。
「何も、何もしてないっ!!」
「本当か?」
亜香里の顔を見てみる。ぽかーんとして目をぱちぱちとさせている。
「お兄、自意識過剰。亜香里は何もされてない」
「いや、杞憂ならいいんだが・・・」
「この人に視姦されてただけ」
「てっ、適当なこと言うなようっ!!」
「隣にいた上田的にはどうなんだよ」
「先輩に敵わないから、弱そうな亜香里を狙ってきた感じですかね」
「言いがかりはやめろよっ!」
「ピピーッ!君たち、何しているんだ!」
須藤がゴールを決めたのに、こっちのベンチで揉めたように見えたのか、試合が止まってしまった。
「いや、この人に肩を殴られて抗議してただけです」
俺を指してとんでもないことを言う不破。
「そうなのか?もし本当ならアンスポーツマンファウル・・・」
「先輩はそんなことしねーよ!」
「はやとはそんな卑怯なことしないっ!」
「強豪校の部員として今の発言、恥ずかしくないのかな?」
相澤先生まで巻き込んでの言った言わないの口喧嘩。いや、もう最初から勝負はついているか。こいつ、マジで何したかったんだろう?
「バスケで相手して欲しいならしてやるけど?」
「どこまで上から目線なんだ。おまえは可愛い彼女もいて、ずるいじゃないか」
で、出たよ。モテたくてバスケしてるやつ。
強豪校にも一定数はいるのか。別に彼女が欲しいから頑張る分には問題ないと思うぞ?うん。だけど、亜香里の彼氏は俺だから。彼氏いない人を狙えよ。
「・・・壊してやる。お前から、バスケを奪ってやる」
普通なら、この発言が聞こえた時点で先生や審判に相談するべきだ。
だが、この時の俺は調子に乗っていたんだろう。湧き上がる万能感から、こいつの弱虫の一撃の企みを軽く捉えていたんだ。
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