決戦当日 出発


よっしゃあ!俺は今から開幕スリーポイントシュートを打ってやる!上田には渡したいけど、ここで俺がぶちかます!


ってあれ?ボールが、柔らかい?













ーーーーーーはやちゃん、起きて?朝だよ?



はっ?夢オチ?


外が明るい。たが、カーテンを閉め切っているので、いまいち周りが見えない。


望美の声が、聞こえた気がする。


俺は仰向けに寝たまま、シュートを打つ前の体制になって、天井に手を伸ばしていた。


だが、そこには天井はなく、薄暗い中で一つの人影があった。


「んあ?そこにいるのは、望美か?」


「そうだよ。おはよう。やっぱりまだ、眠い?朝早いもんね。


それと、手を離してもらってもいいかな?」


は?


目が慣れてきて、俺はまじまじと人影を見た。


制服姿の望美が、そこにはあって・・・


俺の両手は、望美の胸にジャストイン。


ああ、夢でボールが柔らかくて焦ったのはこれのせいか。柔らかい・・・。


じゃなくてぇ!


「うわぁ!ごめん。マジでごめんっ!」


「いいよー、付き合ってるんだし。はやちゃんの相手してあげてもいいけど、ちょっと今は時間が無さすぎるかなぁ」


俺は携帯の時計を確認する。4時50分!?やべーじゃん!


「うっはぁ!アラームかけるの忘れてたわ」


「はやちゃんが起きれるか心配だったから、やっぱり来て良かったよ。じゃあ、早く着替えてね?亜香里を起こしに家に戻らなきゃいけないの」


「オッケー!まじで助かったわ」


「いえいえー」


やばかった。寝坊してたら、バスに間に合わないじゃん。


望美が部屋を出ると、俺は急いで着替え始めた。



ーーーーーー


亜香里を起こして、望美の大きな荷物を引っ張り、なんとか5分前に学校にたどり着いた俺たち3人は、学校前に停まっている大型パスを眺めていた。


『県立桐山北高校バスケ一同様』


うちの高校の名前がバスの正面に貼られている。


バスの中には、もう男女全員乗ってるらしい。


「はやちゃん、すごい大きなパスだね。50人乗りだって」


「修学旅行みたいだな」


「お兄、亜香里は窓際が良い」


「いや、もう窓側の良い席は取られてるだろ」


「そうでもないみたいだよ?ほらっ」


バスに乗り込むと、視線が俺たちに集まった。


「すみません。ギリギリでした」


「間に合って良かったわ。3人でデートに行くかと思ったじゃない」


相澤先生、それは無いですよ。


なぜか、1番後ろの一列が空いていた。


え?これ、座っていいの?


「おはよう!水谷くん、早く座ってよ。特等席、空けといたよ?」


金森先輩から声がかかる。


「おはようございます。え?いいんですか?」


「イチャイチャする3人は視界から遮断しなきゃねー」


そういうことかよ。なんか、すみません。


相澤先生の声が響く。


「忘れ物はないー?」


「「「「「ありませーん」」」」」


「じゃあ、出発するよー!」


こうして、俺たちは試合会場へと向かうのだった。



ーーーーーー


試合の日程が気になって、確認してみた。


女子が最初の試合らしい。9時からか。早いな。


亜香里は今日マネージャー仕事で寝られないかもしれないことを考えて、自分から俺に寄りかかってきて寝てしまった。


望美は、普通に起きている。眠くないのか?


「今日、何時起きだったんだ?」


「えっと・・・3時半?」


「はやっ!少し寝ておけよ。眠いだろ?」


「そうだね、少し眠いかも。肩、借りても良い?」


「いいぞ」


「ふふっ。わたしの寝顔、誰かに見られたくないからって、嫉妬しないでね?」


「うるさいなー。わかってるよ」


全く、望美にはお見通しだったか。嫉妬の心配してくれるのはいいけど、俺のせいで睡眠不足になってもらったら困る。


両肩から、寝息が聞こえたのを確認してから、俺も嫉妬防止のために目を閉じた。

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