第50話 母親に呆れられた
「何で増やして帰ってくるのよ!」
亜香里と一緒に自宅に着いて、玄関での母親の第一声がそれだった。
ん?まだ紗希さんあたりからの連絡、無いのかな?
「あれ?まだ連絡来てない?」
「何も来てないわよ?あんた、何もせずに亜香里ちゃんだけ連れて帰ってきたんじゃないでしょうね?」
そんなことするか!
と、居間から母親の携帯の着信の音がする。
母親がいなくなった。
「お兄、不束者ですが、宜しくお願いします」
「おまえさぁ、実は別にそんなに怒って無いんだろ?」
「怒ってる。お父さんなんて、知らない。今ははやとといるから、楽しい」
さいですか。
「お姉は、寝てる?」
「ああ、起こしに行くか?」
「流石に着替えないと。制服がしわになる」
俺はボストンバッグ二つを持って、二階に上がる。
部屋の前に荷物を下ろすと、亜香里がドアをふさぐ。
「お姉と一緒に着替えるから、下で待っててくれる?」
「おう。風呂は入るか?」
「シャワーを使いたい。はやぱぱはいるの?」
「いや、今日は出張で帰ってこない」
「そう。だったら先にお風呂入って?わたしたち二人は、後からでいい」
「おう」
俺は下に降りて、今度こそ飲み物を飲もうと冷蔵庫に近づく。
電話を終えた母親が、俺に話しかけてきた。
完全に呆れている顔だった。
「あっちのお母さんから、連絡あったわよ。あんた、何してきたのよ。姉妹を暫く宜しくお願いしますって言われたわよ?」
「え?今回は俺は何もしてないからな。勝手に亜香里が親子喧嘩し始めて、話が拗れたんだぞ?」
「そこは何かしてきなさいよ。はぁ、もう。泊まりの確認取れただけで状況はむしろ悪化してる気がするわ・・・。来客用の布団、出してきなさい。寝る場所が足りないでしょう?」
「母さん、俺さ、ちゃんと決めるからさ。今すぐってわけにもいかないけど・・・」
「くれぐれも姉妹に変なことしちゃダメよ?」
「わかってるわ!」
俺は冷蔵庫の牛乳を一気飲みした。
時計はもう11時だ。
早く風呂に入らないと。亜香里たちが寝れなくなってしまうので、とりあえず俺は風呂に入ろう。
ーーーーーー
俺は風呂を上がって、脱衣所にあらかじめ置いといた寝巻きに着替えて、部屋に向かう。
俺の部屋の手前にある、物置部屋から布団一式を抱える。
そうして自分の部屋のドアを開けたら、望美と亜香里はパジャマ姿だった。
「望美、起きたか。気分はどうだ?」
望美にいつものような元気な様子はなく、困ったような顔をしている。
「うーん。わたしが寝てる間に亜香里がとんでもないことしてて、複雑な気分、かな?」
「おまえは、まず自分のこと片付けてからじゃないとな。亜香里とおまえの家族のことは、まぁ、しゃーない。気にすんな」
「明日からのお弁当、どうしようかな」
あー、それか。母親は俺が風呂入ってる間に寝たみたいだし、明日じゃないと話できないな。
「まぁ、明日は、久しぶりに購買だな」
「お姉、気にしないで。購買のパンも楽しみのひとつ」
「お父さん、大丈夫かな?お母さんに何されてるんだろう?」
いや、望美、ごめん。あの紗希さんの顔じゃあ、真也さんの無事は保証できない。
「お兄、ひとつだけ、この部屋に欲しいものがある」
「なんだ?何か足りないものあるか?何でも言ってくれ」
「姿見。女子には欠かせない。あと、姿見があれば、毎日自分の姿が見える。はやとが自分を見つめ直すのにも必要」
「わかった。明日買いに行くか。明日の朝は洗面所の鏡で我慢してくれ。つーか、姿見ひとつで俺が変わるか?」
「変える気あるなら、置いて?」
おう、わかった。ここは亜香里の話に乗るか。
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