第51話 水曜日、早朝。相手の尻尾。

翌朝、薄暗い、朝五時前に起きた俺は、五時半には学校の校門前に一人でいた。


客用布団で一人で寝た俺は、いつもと寝所が違うからか、なんとなくいつもより早く起きてしまい、これ幸いと学校に早く行ったのだ。手紙の犯人を見つけるために。


校門は、こんな早朝にも関わらず、なぜだか開いていた。こんな早くにも誰か来るのか?俺はとりあえず、開いてるなら怒られないだろうと通った。


校門を入ってすぐ脇に、エンジンをかけた車が白い排気を出しながら、停まっているを発見した。


「え?横山先生?」


あくびを噛み殺した顔をした横山先生が、運転席から降りてきた。


「よう、水谷。おまえも見張りに来たのか?」


「先生、おはようございます。何時からいるんですか?」


「さっき着いた。六時からバレー部の朝練で学校が開くからな。まだ、五橋の下駄箱に脅迫文は入ってないぞ?」


「そうなんですか。じゃあ、これから犯人が入れる可能性、ありますかね?」


「あるかもな。ちなみに、だ。わたしは水谷も疑ってるからな」


「俺、ですか?そんなことするわけないじゃないですか」


「疑いたくはないのだがな。お詫びとして、ひとつ、あの手紙を書いたやつのヒントをやろう」


「何かわかったんですか?」


「あの筆跡は男性だ。昨日、その筋に確認した」


「なるほど。女性ではないってだけわかっただけでも大きな前進ですね」


「聞くが、おまえは五橋よりも遅く登校してるのか?」


「そうですね。だいたいあいつのほうが早く学校にいますよ」


「そうか。わかった」


「あの、俺にできること、なんか無いですか?」


「自分で考えろ、と言いたいところだが・・・そうだな。体育館側の校舎につながる場所の鍵がもうすぐ開く。あそこは更衣室の使用のために、開くんだ。おまえはバスケのボールの空気入れでもして、変な奴がいないか、その付近を見てほしい。わたしは、もう少ししたら昇降口近くに移動する。犯人は自分の目で見たいんだ」


「わかりました」


「わたしは今日、学校のすべての教師に五橋の件を通達しなければならない。教師は生徒たちに今日中には言うだろう。そうすれば、犯行は今日以降、行われない可能性が高い。今日、それも今からが取り押さえるラストチャンスかもしれない。そのつもりでいろ」


「はい。先生は朝から大変ですね」


「水谷も、大変そうだな」


何も大変じゃないですよ。望美の恐怖に比べたら、これくらい。


俺は、頭を下げて体育館に向かった。



ーーーーーー


六時になった。知らない先生が体育館そばの校舎の鍵を開け、体育館の鍵を開けた。


挨拶はしたし、平然とした顔をして鍵が開くのを見ていたが、別に疑われるようなことはなかった。


むしろ、後から来たバレー部らしき人から、めっちゃ疑いの目で見られる。


「君、こんな朝早くにどうしたの?」


三年生かな。めっちゃ身長高い人が近づいてきた。


「おはようございます。ちょっとバスケボールの空気入れに来ました」


「バスケ部?見たことない・・・ああ、先週制服でバスケコートにいたのは君か」


おお。良かった。先週、亜香里と行った時、制服のまま体育館に行ったから目立って、見てくれてたのか。


「はい。じゃあ、ちょっと失礼しますね」


俺はそそくさと中に入ろうとする。だが、ちょっと気になる話がその人から出る。


「今週、そういえば、朝に竜ヶ崎も来てたなぁ。バスケ部もバレー部の強さに習って、朝にミーティングでもするようになったのか?」


あれ?なんで竜ヶ崎先輩が来てたの?

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