第22話 燃費が悪い俺

ボールを運ばない竜ヶ崎先輩を、俺は下がって待ち構える。


竜ヶ崎先輩にボールを渡したく無いわけではない。引っ付いて追いかけ回したら、俺の体力はすぐ無くなってしまう。


そうなると、攻撃にも影響が出てしまう。用はメリハリが大事なのだ。


まずはチームの勝利を第一目標に。そして、ボールを持たせたら、ドリブルで抜かれないようにしなければならない。


竜ヶ崎先輩は中には入ってこない。あくまでSGとしてプレーするようだ。


竜ヶ崎先輩にパスが入る。


と、俺の隣に誰か寄ってきた。


っ!スクリーンかよ!


志多が壁になって、俺が動けなくなり、竜ヶ崎先輩はフリーのままドリブル。


神崎がヘルプに行くが、そのせいでセンターの菊池先輩がゴール下でフリーになり、パスが渡る。


菊池先輩に難なくシュートをを決められてしまった。


ちくしょう、俺が早くスクリーンに気づいていれば・・・!


てっきり竜ヶ崎先輩の独力突破を想像していただけに、俺は認識を改めた。


チーム竜ヶ崎は確実に勝ちに来ている。


「お、おう!?」


竜ヶ崎先輩が俺についてる!?


「僕も本気を出すよ。君に抜けるかい?」


簡単に上田からボールをもらおうとしたが、竜ヶ崎先輩が執拗にディフェンスしてきて、ボールがもらえない。


仕方なく金森先輩が下がってきて、ボールを中継してくれた。


「現役バスケ部が大人げ無いぞー」


そう言って、金森先輩が竜ヶ崎先輩をジト目で見ている。


「僕は本気を出すと決めた。このチームは水谷を疲れさせれば僕の勝ちだ」


こんにゃろー。ボール触りたいぞ。上田、運んでくれー。


望美が月城を引き剥がして上田からボールをもらう。


シュートフェイント、からの左ドライブ。


くおおお。月城が全然抜けさせてくれねー!


外に開いていた神崎に望美がパス!


神崎、シュート入らなくてもいいから打ってくれ!


って、バッカ!俺に返すんじゃねぇ!


神崎の俺へのパスは竜ヶ崎先輩にカットされる。


竜ヶ崎先輩は迷いなくドリブル!くっそ。速い!絶対止めてやる。


「こんなもんか、残念だよ」


先輩の走りながら喋る余裕がムカつくわー!


やばい、このままだとレイアップされる!


ーーパシィ!!


なんと俺の後ろから上田が出てきて、竜ヶ崎先輩の左手にあったボールをカットした。


ポールは外に出る。


「はぁ、はぁ。上田!?おまえいつの間に戻ってたんだよ!」


「セーフティーで攻めないで残ってました。先輩、さっきの借りは返しましたからね」


「はぁ、はぁ、黙ってシュート打ってろ!」


「はい!絶対決めます!」


うへぇ。バスケってやっぱやべーな。二往復しただけで息切れ気味かよ。


「はや!もっとボール頂戴?今度はさやかっちに勝ってみせるから!」


お、望美のバスケしてる時限定の呼び方、いただきました。


こいつがこの呼び方してる時は大抵ガチだ。


「おう、無理にでもパス通すぞ」


「うん。無理はしないでね?竜ヶ崎先輩に勝たなくていいからね?」


は?どういう意味だ?


「勝つにきまってんだろうがあああ!見てろよちくしょー!!」


望美にまで期待されなかったら、俺がここにいる意味が無いだろうが!


「はや!っもうっ!心配してるだけなのに。冷静になってほしかったのに・・・」


「今のは五橋先輩が悪いっすよ。主将に煽られてるから、水谷先輩、なかなかキツそうですよね」


「はやはそんな弱く無いもん!」


おう。みんな運動量不足の俺を心配してるんだな?


なんとか騙し騙しやらないとなー。


と、ボールを出そうとする竜ヶ崎先輩の後ろから、亜香里がひょこっと顔を出す。手には給水ボトルが!


つーか、亜香里の顔がめちゃくちゃ怖い。明らかに怒ってらっしゃる。


「主将。10分間、タイム無しで流してたら、普段バスケしてない二人は倒れる。プレーが止まった時だけ、給水が必要」


「う、うん。そうだね。ボールが出た時だけ時計を止めようか」


ナイスだ亜香里!給水できれば俺はもっと動ける!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る